ドレアム戦記
第二編 朱青風雲編 第7話
周囲は、熱帯系の植物が巨大化し、生い茂る大樹海と表現するのがぴったりだった。その中をまるでトンネルのように突き抜けている樹木の回廊がなければ、人が進むのは困難の一言では語りつくせないであろう。それに、大樹海に生息する未知の動植物が人間を捕食しないという保障はないのだから。
樹海の回廊に入ってから5日、ジロー達は比較的安寧に森を進んでいた。イェスイの持つ樹海の杖の恩恵で、大樹海の中にできた回廊はその形を維持しながら一本道が出来あがっているのである。玄武の神殿に行くときのタウラス川の遡上や白虎の神殿に行くときの氷雪の道と同じく、周囲には結界が自然と張られているらしく、樹海からの脅威についても感じることなくひたすら前に進むことができた。
樹木の回廊は木々に囲まれているために光が届きにくくはなっていたが、それでも昼と夜の違いはあった。夜はそれこそ明かりも届かない程真っ暗になってしまうのだ。だが樹海で火の精霊を使うわけにもいかないので、ジロー達は、昼は前に進み、夜は4つのテントに分かれて夜を明かしていた。
いつものとおり、テントの中には寝袋は一つ、2人が裸で互いを暖めあいながら眠りについていた。
この日の夜は、ジローはルナと抱き合っていた。豊かなブロンドの髪がジローの胸前をくすぐっている。
ジローはルナとディープキスをしながら、ルナの体内に埋まった肉棒の感触を楽しんでいる。ルナとはウンディーネで初めて会って、処女を貰ってからの付き合いだったが、もうジローと一体化するのが当たり前と思うくらい馴染んでいた。互いに膣と肉棒のどこが感じ、どこを動かせばよいかを理解し、そのように身体が自然に動く。今も、隙間がないくらいに密着した膣壁がうねるように動き、ちょうどお互いのつぼを刺激しあう形で性感を増大させていた。
「ジロー様。ありがとうございます」
唇を離したルナが不意にそんな言葉を発した。
「どうしたんだ急に?」
「いえ・・・、あん、わ、わたくしを籠の鳥から出していただきました」
「でも、それで今までの暮らしを棄ててしまうことになったんだぞ」
「い、いいえ。くぅん、わ、わたくしは政治の道具でした。はぁん、お、お父様は愛してくれてはいましたが・・・」
ルナは声が少し悲しそうに響いた。
「わたくしの『心蝕』の力が判るまでは、ですけれど」
ジローはもう何も言うなとばかりに、ルナを抱きしめた。しかし、ルナは呟きをやめなかった。
「わかっていたのです。『心蝕』を持つ女を妃に迎えようとする王家などないということを。誰も、自分の心を覗けるような妃がなど心から歓迎はしてくれないでしょう・・・」
「でも、ジロー様は、ジロー様だけは私を受け入れてくれました。それどころか、王家の呪縛から解き放ってくれました。そして、わたくしが、イリス様の生まれ変わりだということも、ジロー様と出会わなければ一生知らずにいたのだと思います・・・」
ジローは、感謝の念を込めて語るルナを愛おしく感じた。その気持ちが股間の肉棒をより滾らせることに結びつく。
「あっ、ああ・・・、ジロー様、また、大きく・・・」
ジローの圧力が増大したことでルナの膣壁を擦る力が強くなった。それは、全体が性感帯となった膣壁から更なる快感をルナに与え、更に最深部の子宮口の入口がぐぐっと押されて幸せ感と共に下腹部から前進に広がっていく。急激な快感が余裕をかなぐり捨てて翻弄していく。
「あぁぁぁぁ、ジ、ジローさ、まぁぁ・・・。あ、うぁ、ん、い、いぃで、すぅぅぅぅ・・・」
「おぉぉぉぉ・・・、ルナ、俺も、い、く、ぞぅ・・・」
「は、ひぃ、く、くださ、いぃぃぃ・・・。あ、い、いくぅんぅぅぅぅぅ・・・」
ジローのこの日最大の射精がルナの膣内を打ち、満たした。そして、2人はそのまま眠りについたのだった。
「うふっ。ジローったら相変わらずお盛んねぇ・・・」
隣のテントから漏れる嬌声を聞きながら、アイラは両手を柔肌に這わした。弾力のある皮膚の下にしなやかな筋肉を感じる。
「あっ」
アイラの喉元で声が漏れた。アイラの左手が尻、右手が胸を捉えて柔々ともみ始めたのだ。そこからくる刺激が官能の炎を簡単に再点火させた。
アイラと同じ寝袋に入っているのはシャオンだった。もちろん、2人とも下着も付けずに裸である。
シャオンはアイラより頭一つ背が低いため、寝袋に入った当初は同じ位置にあった顔がだんだんとずり落ちてアイラの胸に顔を埋めるような姿勢になっていた。
既に2人は1回戦を終えていた。森の神殿以来、アイラはシャオンのつぼを殆ど把握していたため、先程まで快楽の渦に翻弄され、自然と身体が寝袋の奥に沈んだのだった。
しかし、ジローとルナの喘ぎ声を聞くに至り、再度火が点いてしまったのだった。
「ア、アイラぁ・・・」
シャオンが情けない声をあげた。だが、その声には喘ぐ息が混じっている。
「うふっ。シャオだって、嫌じゃないくせに・・・」
アイラの指が尻から股間に回り、シャオンの秘部に触れる。そこは、新たな陰蜜でしとどに湿り、ぬるぬると滑りを良くしてアイラの指の動きを助けていた。
「ほら。もうこんなじゃない」
「は、恥ずかしいよ、もう・・・、う、うぅん・・・」
シャオンがジローの愛嬢の一人となってからまだ日は浅かったが、セックスに関しては格段に進歩していた。愛嬢同士で交わることについては、恥じらいが棄てきれないのか、まだまだ抵抗があるようだった。だが、アイラやレイリアが相手だと、その恥じらいも吹っ飛ばされてしまうほどめろめろになっていたのだが。
「シャオ。もう少しあがっておいで。キスしよ・・・」
「う・・・ん」
シャオンは身体を擦り付けるようにしながらアイラの身体を這い上がった。シャオンの堅くなった乳首がアイラの肌を心地よく刺激した。
「アイラ・・・」
寝袋から首を出したシャオンの顔は熱があるように上気していた。浅黒い肌に赤みが注している。
「うむぅ・・・」
くちゃ、くちゅ、くちゅ・・・
アイラが唇を奪うと、直ぐにシャオンが舌を入れて来た。アイラの口の中を積極的に動き回る。その舌をアイラが吸った。
同時にアイラの指がシャオンの膣内に侵入した。しかし、同時にシャオンの指もアイラの愛液で溢れた膣内に潜って行く。
「んふぅぅぅぅ・・・」
どちらからともいえない喘ぎが漏れた。だが2人はディープキスをやめない。それどころかそのまま互いに指の動きを加速させた。
「ん、んぅ、ふぅ、んくぅ・・・」
先程までの愛撫で敏感になっていた身体が過剰に反応してくる。身体を密着させた場所全部から快楽という刺激が染み渡るような感覚が2人を襲っていた。
「ん、んくぅぅぅぅぅぅぅ・・・」
先に果てたのはシャオン。だが、アイラも直ぐに達した。そしてそのまま、今度こそ2人は満足した表情で、深い眠りについたのであった。
そして6日目。
森の様相が進むにつれて一変してきた。
迷いの森の大樹海、人の身長よりも太い幹の熱帯植物が生い茂る植物達の楽園。そこは、樹海で暮らす者達以外の侵入者を拒み、それでもなおかつ侵入してくる者達を、時には害し、ある時は捕食し、樹海というテリトリーを守ってきていた。
その樹海の奥に異変が起きていた。高く生い茂っていた樹海の木々が徐々にその高さを減じ、幹も人が抱えられる程度のものとなっている。そして、最も驚嘆すべきなのが、全ての木々が人の体温よりも高い熱を持ち、その葉先に至ってはランプのように火を湛えているものまであった。
「これって、結界の影響でしょうか・・・」
ユキナが変貌した辺りの景色を見回しながらジローに尋ねた。
「ああ、多分。長年、炎の結界が張られていた影響で、周囲の木々が火性の素質を持つようになったんだろう」
「うわぁ〜。とっても綺麗ですぅ〜」
先頭を行くイェスイに並んで歩いているレイリアが、オレンジ色に染められた葉っぱを眺めながらはしゃいでいる。
「さしずめ、火炎樹というところですかね」
ミスズがさりげなく命名する。その的確さに、ジロー達も同意。
「へえ〜、でも迷いの森の奥にこんなところがあったなんてね〜」
シャオンも興味津々。だが、その後ろでジローの横を歩いていたルナは、少し悲しい顔をしていた。
「素質が変わるということがこのような結果を招くのですね。火の素質を持つだけで、木々がこのようになってしまうなんて・・・」
「ルナちゃん、大丈夫。結界が解ければ、またきっと元に戻るって。ね、イェスゲン」
ルナの髪をそっと撫でながら、アイラは先頭を行く、導く者イェスゲンに尋ねた。
「ええ。時間は掛かるでしょうが、火炎樹の原因が結界ならば、原因を除けば時が解決してくれると思います」
イェスゲンは、振り返ってそう答えると再び歩き始めた。彼女は昨晩、唐突にイェスイの元に戻って来たのであった。明け方にジローの許に挨拶に行き、自分が呼ばれた用事について少し語らった後で、ジローから現状を聞き案内役を買って出たのである。
イェスゲンの左手には樹海の杖が握られていた。杖の先端のエメラルドグリーンの宝玉が鮮やかに輝いている。樹海の杖が作り出した回廊の中は、火炎樹からもたらさせる熱や火による影響も軽減する効果も保たれているようだ。
「それにしても、蒸し暑いわね・・・」
アイラが呟いた。朱雀地方は、それでなくても玄武地方と比べると暑い亜熱帯気候である。それに加えて、火炎樹から放出される熱がジロー達に降り注いでいたのである。
「ああ、もう・・・、下着汗でべちょべちょ・・・。もう、穿いてらんない!」
アイラはそう言って、ミニスカートの下に両手を入れて下着を脱ぎ始める。アイラ達の服装は、朱雀地方の一般的な服装をアレンジしていた。上半身はセパレートの水着みたいなもので、下半身は好みでスカートや短パンである。ちなみに、短パンはシャオンとレイリア、スカートは短い順にアイラ、ミスズ、ユキナ、イェスゲン、ルナだった。
「うわっ、べちょべちょよこれ、絞れるわ・・・」
そう言ってアイラは下着を絞ると染み込んだ汗が地面に滴った。
「おいおい、もしかしてそのままか?」
ジローが尋ねると、アイラはもちろんと笑顔を作った。
「これはサービスよん♪」
そう言ってミニスカートをぴらりと捲って白いお尻をジローに見せた。ジローはちょっと嬉しい気持ちと、一般的なモラルとの間で心が揺れ動いた。
すると。
「ジロー様。わ、わたくしも、その・・・、お姉さまに倣ってもよろしいでしょうか?」
思いもかけない発言がルナからあった。大胆なことを話した自分が恥ずかしいのか顔を赤らめている。
「あっ、それだったら私も姫様と一緒に」
ミスズがそう言うなりスカートの横から手を入れてもぞもぞやっている。どうやらサイドを紐で縛るタイプの下着らしく、すぐに結び目が解けて柔肌が開放された。
「もう限界だったんです。それとお姉さまと同じく、はい」
そう言ってアイラと同様にスカートを捲って引き締まった尻を見せた。
「ジロー様」
声に振り返ると、ルナもまた恥ずかしそうにスカートを捲って柔らかそうな白い尻をジローに見せた。
「おいおい・・・」
こうなるともう自然の流れで、ジローが唖然としている横で、残ったスカート組のユキナとイェスゲンも下着を脱いだ。ユキナが小ぶりの尻を見せた後で、イェスゲンまでもが神秘的な微笑をジローに見せつつ、スカートを捲って見せたのだった。
「ふう〜、すっとしたわん♪」
アイラは満足顔。
「ちょ、ちょっとぉ・・・」
シャオンが顔を赤めながら抗議の表情を浮かべる。だが、恥ずかしいからという訳でもなさそうだった。
「あたしとレイリアはどうすればいいのよぉ・・・」
「レイリアちゃんも、べたべたで気持ち悪いですぅ〜」
「そうねぇ〜。じゃあ、全部脱いじゃえば?」
「そ、そんなぁ・・・」
「レイリアちゃんは、それでもいいですよぉ・・・」
「えっ、ええ〜!」
「こらこら、目のやり場に困るだろうが・・・」
結局、妥協案として、スカートに履き替えた2人だった。
だが、シャオンは普段スカートを穿きなれていないせいか、それだけでなんだか変な感じがつきまとっている。まあ、アイラが自分の持っている短いスカートを穿かせたということもあるのだが。
「ああ〜ん、なんだか違和感がある〜」
「ジロー様。どうやら着いたようです」
イェスゲンが立ち止まり、ジロー達を促した。
回廊の先には、今まで周囲を覆っていた火炎樹ではなく、背は高くないが再び緑の木々が広がっていた。そして、その先には金色に輝く建物の姿があった。
「あれが、朱雀の神殿なのですね」
ルナが眩しそうに見つめる。その横でシャオンが目を輝かせていた。
「う、わぁ・・・、黄金色。ごくっ、・・・お宝が、一杯ありそう」
先を眺めている面々を横目に、ジローはイェスゲンの姿を探した。ジローの予想通り、イェスゲンは結界を作り出している装置を探していたようだった。
「イェスゲン。その辺か?」
ジローが近づくのを察してイェスゲンは頷いた。
「どんなものなんだ?」
ジローの問いかけに、イェスゲンは心で画像を送って来た。八角形の石に鳥のレリーフが刻んであり、その眼の部分に赤い宝石が填っているものだった。
「わかった、俺も探してみる」
「ありがとうございます」
ジローとイェスゲンは結界の脇の草叢を掻き分けながら探し始めた。その頃になると、2人に気付いた他の愛嬢達もジロー達の傍に寄ってきて、やっていることが判ると同様に捜索を始めたのだった。
「ありました!」
探し出したのはユキナだった。白虎鎗の穂先を鎌型にして草を刈っていったのがよかったらしい。
それは道から1ヤルド程入った草叢の下、地面に埋まるようにして安置されていた。魔法の効果か形そのものは風化していなかったが、周辺に生い茂り、絡まった草叢に隠されるのを防ぐことはできなかったようだ。
ジローはユキナにご褒美のディープキスプラス今夜の添い寝の約束をした後、イェスゲン、アイラと共に装置の傍にいった。半ヤルド程の八角形の台座には、翼を広げた鳥、鳳凰の絵が刻まれていた。
「ねえ、この瞳、ただの宝石じゃないみたい」
アイラが鳳凰の瞳に填った宝玉を触っていた。宝玉は、ルビーのような輝きと燃えるような赤い色を湛えていたが、予想に反して硬くなかった。むしろ、指で押すと形が変わるくらい柔らかだった。
「で、どうすればいいの?」
アイラはイェスゲンに尋ねた。
「はい。その宝玉にアイラさんの血を数滴垂らしてください」
「そう、わかったわ」
アイラは腰から愛用のナイフを抜くと、左手の指先に軽く当てて、引く。一本の筋が指先に刻まれ、そこからつつっと血が浮いた。アイラはそのまま、指先を宝玉の上に持っていき、血を数滴垂らす。
アイラの血を受けた宝玉は、ぷるぷると表面を震わせ、やがてアイラの血を内部に取り込んだ。次の瞬間、その表面の形が崩れ、液状になった宝玉が台座に刻まれた鳳凰の絵の溝に流れ出す。それはまるで赤い絵の具で鳳凰が描かれるようだった。
他の愛嬢達も傍に集まっていた。鳳凰の絵が完成して行くのを、固唾を呑んで見つめている。溝はみるみるうちに赤い液体で満たされ、最後の一部分が埋まって絵が完成した。すると、今度はそこから浮き上がるように赤き鳳凰が実体化する。赤き鳳凰は、ジロー達を一瞬見たが、直ぐに静かな羽ばたきを始め、風船のように軽く飛び立った。そのまま最初はゆっくりと、そしてだんだんと速度を増しながら結界の周囲を飛び、螺旋状を描きながら徐々に高さを上げていく。その鳳凰の背後では結界の幕が、まるでりんごの皮を剥くように引き剥がされていき、結界の頂点まで飛んだ鳳凰はそのまま真直ぐ天に昇っていった。
ジロー達は、その姿をしばらく眺めていた。
「ジロー様、結界が消滅したみたいです」
暫くするとルナが言った。
「そうか、ありがとう、アイラ」
ジローはルナに頷き、アイラに向き直ると、アイラの左手をそっと取った。そして、傷の付いた指先を口に含む。アイラはちょっと照れくさそうだった。
黄金の神殿。近づくに連れて、朱雀の神殿は荘厳さと輝きを増していた。シャオンなどは余りの輝きに絶句したほどである。
「きれいですね・・・」
ルナがしみじみと云う。ジロー達は朱雀の神殿の前に到達していた。そこから改めて見渡すと、金色の輝きを帯びたその壁面に複雑な模様の装飾が施されていることがわかる。入口の両側の柱には、2羽の鳳凰の彫像が彼らを見下ろすように彫り込まれていた。そして、その一つ一つが黄金色に輝き、陽を受けて複雑な光を乱反射させていた。
「でも、この神殿のどこが危険なの?」
アイラがイェスゲンに問いかけた。同様の疑問を持っていたらしく、全員がイェスゲンに注目した。
「はい。朱雀の神殿を守るあの2羽の鳳凰、あの2羽が資格の無いものの侵入を拒みます。ただ、その拒み方が少し・・・。そうですね、実際に見ていただきましょう」
イェスゲンはそう云うと、樹海の杖を軽く振って『木人』の呪文を唱えた。すると、近くの草木が組み合わさって人の形を取り始めた。
「さあ、進んで」
イェスゲンの合図に従うように、木人は神殿の入口に向かって進んで行く。そのまま鳳凰の彫像の間を通ろうとした時、突然柱の中から2羽の鳳凰が飛び出し、木人を威嚇し始めた。だが、木人は威嚇を無視する。と、鳳凰が急に羽を広げ、その羽先が朱色に発光し始める。そして、次の瞬間に灼熱の羽が矢のように木人に降り掛かり、直撃を受けた木人は燃え上がった。
愛嬢達が固唾を呑んで見守る中、木人は直ぐに燃え尽き、灰も残らなかった。これは、余程高温の炎に晒されたことを意味している。
「確かに・・・、危険、ですね」
ミスズが代表してそう言った。
「はい。ただ、最初に威嚇された時に戻れば害はないのですが・・・」
「まあ、普通は何とかして入ろうとしちゃうわね」
と、シャオン。
「イェスゲン。アイラが最初に行けば大丈夫なのか?」
「はい。資格を持つ者が最初に入れば、同時に入った全員が同等とみなされます。それに、アイラさんが封印の武具を手にすれば、その後は誰でも入れるようになる筈です」
「よっし、じゃあ、行きますか」
アイラがそう云い、一行の先頭に立って歩き始める。ジロー達はその後に続いた。そして、アイラが鳳凰の柱の横に来た時、鳳凰の彫像はゆっくりと頭を下げたのである。
「アイラさん。頭を撫でてあげてください」
イェスゲンの言葉に従い、アイラは2羽の鳳凰の彫像の頭を交互に撫でた。すると、鳳凰は満足したような表情で、再び柱の中に戻っていったのであった。
「ご主人さまぁ〜、鳥さんのお腹のところに何か書いてありますぅ」
レイリアがそう言ったのでジローは立ち止まった。そこには、先程までは無かった文字が確かに浮かんでいた。
『火の精霊』
『剣闘士』
「また、謎かけだな。まあいい、とにかく中に入ろう」
ジローの掛け声に全員が頷き、8人は神殿の中に入っていった。
神殿の中は、外観とは違って、所々金は使っているものの、落ち着いた感じであった。まあ、外観に比べれば質素と言えないこともない。
入口を抜け、廊下を暫く行くと大広間があった。大広間の中央には人の背位の高さの円形の舞台があり、その中心には鳳凰の像があった。そして、舞台を囲むようにして、席が配置されていた。
<コンサートホールみたいだな・・・>
ジローは心の中で呟く。コンサートホールという単語を愛嬢達が知らないだろうという配慮である。本音は、今質問攻めに会いたくなかったのだが。
「ねえ、これって闘技場かもね」
シャオンが呟く。愛嬢達の中では、一番あちこちを見聞しているため、どこかで同じようなものを見たことがあったのだ。
「シャオンの言うとおりだとすると、『剣闘士』の謎かけが関係しているのでは」
ミスズが言った。ジローも頷く。
「そうだな。とにかくイフリータを呼び出して聞いてみよう」
ジローはそう云うとイフリータを呼び出した。
「ハーイ、マスター。呼んでくれた?」
軽快なイフリータの声が返ってきた。ナイスバディを見せ付けるようにアピールすることも忘れない。精霊によって性格もいろいろ違うようだ。
「ああ、イフリータ。この場所で君の役割があるかどうか、教えて欲しい」
「えっ?・・・あっ、ここ、朱雀の神殿じゃない。凄〜い、マスター、鳳凰の結界を解いたんだ。ということは、ソフィアの血筋がこの中にいるってことよね・・・。うん、わかった。マスター、あたしの役割を果たすけど、一つだけ注意して欲しいことがあるの」
「注意すること?」
「そう、朱雀の神殿に封じられている武具は、あたしたち火の精霊にとって武器にも脅威にもなるものなの。だから、それを扱う人は火の精霊の試練を受けて、あたしたちを滅ぼす存在じゃないことを証明してもらわなくちゃならないの」
「精霊を滅ぼすだって?」
「ええ、そのくらい強力な武具ってこと。だから持つ人を選ぶ必要があるのよ。そして、その人は、かつてあたしたちが認めた唯一の人、ソフィアの血筋のものである必要があるのよ。なぜなら、ソフィアの血筋は、あたしたちを滅ぼさないという血の誓約を継承しているからなの」
「だから、あんな結界を創ったのか」
「実はそうなの。ソフィアの血筋の者以外に武具を渡さないためよ」
イフリータの話に、イェスゲンもびっくりしていた。イェスゲン自身はソフィアから神殿が自分の血筋以外の者に害をなすから結界を張ったと聞いていたから。
「では・・・、ソフィアは私に嘘をついていたのですね・・・」
「うん・・・、結果的には、そうなるかもね。でも、ソフィアが結界の目的について、本当のことを話せないよう、誓約を加えたのも事実よ」
「そう、なのですか・・・」
イェスゲンは若干ほっとしたような表情を浮かべた。イフリータの説明に納得したらしい。
「イフリータ、いろいろ説明してくれてありがとう。アイラ」
「はいよ」
「イフリータ。ここにいるアイラがソフィアの血筋の者だ。それで、次は何をすればいい」
イフリータは、ジローとアイラに向かってにこっと笑って軽く会釈した。
「アイラさん。よろしく」
「こちらこそ」
「では、マスター。試練について説明するね。これから、アイラさんに、闘技台の上で闘ってもらいます。そして、アイラさん1人の力で勝ってください」
「わかった、手は出さないが、応援くらいはいいんだろ?」
「ええ、マスター」
ジローはアイラを見た。アイラはしっかりと頷いた。
「ジロー、あたしの出番だね。任せて・・・、あっ、でもその前にちょっと、力を補給してもらっちゃおうかな。イフリータ、試練の前に準備するのは問題ないでしょ」
「ええ。大丈夫よ」
「じゃあ、ジローとルナちゃん、お願いがあるんだけど、あたしに『神精回復』を掛けてくれない?」
そう言って、アイラはジローにお尻を突き出して、下着をつけていないスカートをめくった。小さめだが張りのある柔らかな丘の間に、成熟した大人の色香を漂わせた性器がぱっくりと花びらを開いている。そこは、既に愛液で潤い光っていた。
「はい、お姉さま。喜んでお役に立ちます。さあ、ジロー様も早く」
ルナに促されるようにしてジローもズボンと下着を脱ぐ。アイラの姿に欲情した肉棒は既に臨戦態勢だった。
「まあ、でももう少し湿らした方がよさそうですね・・・。ミスズ、ユキナ。こちらに来て、ジロー様のおちんちんをしゃぶってください。それからレイリア、お姉さまのおまんこをお願いします」
「「はい」」
「は〜い」
ミスズとユキナは、素直にルナの指示に従った。元々主従関係にあっただけに、ルナの命令は絶対という観念が染み付いているのだ。
「ジロー様、ご奉仕いたします」
ミスズはそういうと、ジローの肉棒を舌で丁寧に舐め始めた。舌先を使って、根元からゆっくりと先端に這わすように舐めあげる。肉棒が、ミスズの唾液でコーティングされていく。
「ジロー様、ご奉仕します」
ユキナは、ジローの睾丸を口に含んでいた。袋の襞に、丁寧に舌を這わせながら睾丸を吸っている。一つが終わるともう一つを口に含んで同様に奉仕していく。
「うわぁ・・・、お姉さまのお花、とっても綺麗・・・、ひくひくいってますぅ・・・」
アイラに取り付いたレイリアは、そう言いつつもテクニシャンぶりを発揮していた。闘技台の端に両手を突っ張ったアイラが、悶えているのがその証拠だ。
シャオンは、アイラの正面に廻っていた。一緒に寝るたびに自分をめろめろにするアイラが、こんなに悶える姿を見るのは初めてだったのだ。だが、アイラの顔を見た途端、その妖艶な表情にシャオンも体が熱くなるのを感じ、気がつくとアイラの唇に自分の唇を重ねていた。
「姫様、ジロー様の準備はできています・・・」
「お姉さまぁ、アイラお姉さまも準備できましたぁ・・・」
「ありがとう。では、イェスゲンさん、力を貸していただけないでしょうか」
「わかりました」
イェスゲンは、少し赤い顔をしながらルナの元に近寄った。
「では、ジロー様、お願いします」
「ああ・・・」
ジロー自身もミスズとユキナの奉仕によって、もの凄く高ぶっていた。血流が肉棒に溢れかえっているような感覚が全身に行き渡っている。そして、その肉棒は、唯一の収まる場所、アイラの膣内を求めていた。
「アイラ、行くぞ!」
ジローは肉棒を膣口に合わせると、一気に挿入した。
「はわわわわわぁぁぁぁぁぁぁ・・・んぅ・・・」
アイラの淫声が上がる。それは、歓喜の声だった。
「私はお姉さまの胸に直接いたしますので、イェスゲンさんは、ジロー様にお願いします」
「ええ、わかりました」
ルナとイェスゲンは、それぞれの場所に分かれて『神精回復』の呪文を唱え始めた。そして、呪文が完成すると、イェスゲンはジローの睾丸、ルナはアイラの双乳の間に掌をあてた。
『神精回復』を受けたジローは、そのタイミングで溢れるような感覚と共に、アイラの膣内に大量の精液を放った。だが、その精液は溢れて逆流することはなく、全てがアイラの中に吸収されてしまっていた。
アイラは、欲情と快感の奔流に心も身体もぐちゃぐちゃな渦に巻き込まれた様だった。だが、ジローが射精したとき、膣壁と子宮がまるで精子を食するようにアイラの体内に取り込まれる感じと、胸の真ん中にあてられたルナの掌から流れ込むエネルギーが身体全体を伝わるように広がり、内側と外側、両方のエネルギーが取り込まれる感覚と共に、身体中に力が漲っていくのを実感した。
「ふう〜。ご馳走様。皆、ありがとう」
アイラはそう言うと、静かに待っていたイフリータに向かった。
「お待たせ。試練を受けるわ」
アイラは闘技台の上に上がっていた。身体全体を薄い光が覆っているのは、ユキナがかけた神聖魔法『祝福』の効果である。『祝福』は、アイラの受けた攻撃を緩和する働きがある。
アイラの準備が整ったのを見たイフリータは、闘技台の中央にある鳳凰の像に近寄って行き、そのまま鳳凰の像に吸い込まれるように消えた。と、鳳凰の像が赤熱し、瞬く間に炎に包まれる。その炎はだんだんと収束し、人間の形を形成して行く。
ジロー達全員が息を呑みながら見つめている中で、人型の炎は1人の人間へと変貌していった。そこに現れたのは、鮮やかな赤毛の髪と深緑の瞳、褐色の肌をもつ美女。肌の上には薄紅色の着物を着流し、腰の帯には剣が無造作に挟まっていた。そして、着物の袖や裾から覗く腕や足は、柔軟で張りのある筋肉に包まれ、身体全体からは威圧する気を発している。その立ち振る舞いには微塵の隙もなかった。
「ソ、ソフィア!」
思わず叫んだのはイェスゲン。そのイェスゲンに女戦士は軽く眼を合わせた。
「おおっ、イェスゲン、久しぶりだな」
「ええ、でも、こんなところで逢えるなんて・・・」
「ああ、だが、俺は思念体でしかない。今はイフリータの身体を借りているだけだ」
「それでも、貴女に逢えるだけで、嬉しい・・・」
「俺もだ。だが、客を待たしている。話はこれくらいにしよう・・・」
そう言って、ソフィアはアイラの方を向いた。
「俺はソフィア。お前は?」
「アイラ」
「そうか。では、アイラ。今、ここで俺と対峙しているということは、お前は俺の血筋ということだな」
「ええ、そうよ」
「よし。ならば、封印の武具を伝承するに相応しいか確かめねばなるまい。俺を倒してみろ」
ソフィアは、右手で剣を抜いた。左手は懐に突っ込んだままだったが。
「まずは、片手で相手してやろう」
不敵なソフィアの態度に、アイラは少々かちんと来ていた。アイラとてジローと共に苦難を乗り越えて来た自負がある。
「後悔しないでよ!」
アイラは、愛用のナイフを抜くとソフィアに向かって行った。その動きは、牝豹のように俊敏でしなやかである。
キンッ!
ソフィアの剣がアイラのナイフを受ける。だが、姿勢はアイラに分があった。アイラは構わずにソフィアの足を自分の足で刈った。
「くっ」
ソフィアは何とか体勢を維持して後方へ飛ぶ。同時に剣をアイラに向かって振り下ろすが、アイラのナイフによって軽く捌かれてしまった。
「なかなかやる。ならば俺も」
ソフィアの深緑の瞳が不敵に光った。そして、右手の剣を縦横無尽に振るう。まるで右手が3本も4本もあるような錯覚を起こす攻撃が繰り出された。
「ちっ、だったら」
アイラは左手の大地の盾を発現させた。だが、さしもの盾も絶え間なく襲い掛かる剣に防戦一方となる。それどころか、打撃がじわじわとアイラの身体を蝕み始めてもいた。
ソフィアの攻撃は続く。疲労と言うものを知らないかのように。
「アイラ、頑張れ!」
「お姉さま!」
ジロー達の声がアイラに届いていた。
<まずいわね・・・、このままじゃ・・・>
アイラは、ソフィアの攻撃を受けながら、打開の思案を巡らせていた。真っ先に考えたのは攻撃に隙が出来ることだが、どうやらソフィアの疲労を待つという選択肢はないらしい。となると、別の方法が思い浮かばない・・・。
<ジロー・・・>
祈るような気持ちでアイラが思ったのは、何故かジローのことだった。出会ってから2年、今までの人生で経験したよりも多くのことが起きた。その中でジローを愛し、いつしかジローと一緒にいることがあたり前、ジローと共に歩むことがアイラに課されたことだと信じていた。それは、ジローが救世主だという事実を知った後も変わることがなかった。むしろ、だからこそジローの力になりたいと思う。だから今自分はここにいるのだ。
その時、アイラの身体の中で熱い何かが弾けた。
<えっ?>
次の瞬間、アイラは自分の右側に気配を感じ、ナイフを繰り出した。次は上、次は正面。
キン、キン、キン。
ソフィアの攻撃が3連続で弾き返された。そして、アイラの左側からの攻撃も大地の盾が絶妙な角度で受け流すようになった。
<わかる、わかるわ・・・>
アイラはソフィアの攻撃を見切っていた。いや、そうではなく、自分の近くに来る攻撃の気配を先に察知して反応しているのだ。
「受けの質が変わった」
ジローはアイラの変化を的確に捉えていた。そして、同じく理解したのがあと2人。
「あれは、ジロー様の『鬼眼』のような動きに見えます」
「ううん、間違いないわ。お姉さま『鬼眼』を体得したのよ」
ユキナとミスズは確信を持って言った。
突然化けたアイラに、ソフィアは笑みを浮かべていた。だが、攻撃が全て無効になっているのも事実である。それどころか、アイラが攻めに転じ、動きの速いナイフがソフィアに襲い掛かってきた。
カンッ!
ソフィアは、左手を懐から出してナイフを受けた。左手の扇子でナイフは止められていた。
「よし、両手を使わせたぞ!」
ジローが拳をぱんっと反対側の掌に打ち付けた。
アイラとソフィアは互角の闘いを繰り広げていた。戦闘力はソフィアが上、スピードはアイラ、防御に関しても『鬼眼』が発動しているアイラに分がある。そして、その僅かな差が、両者の勝敗を決めつつあった。
ソフィアの攻撃をことごとく捌きつつ、スピードに勝るアイラの攻撃がソフィアの扇子の防御を掻い潜り、2回、3回と当り始めたのだ。もちろん、ナイフの攻撃が当れば、ソフィアと言えどもただではすまない。
2人が再び対峙した時、アイラは荒い息をついている程度だったが、ソフィアは左肩から血を流して左腕はだらんと下がり、わき腹と右腕にも傷を負っていた。
「ふふふ・・・、俺を、ここまで追い詰めるとは・・・、できた子孫だよ」
そう言って、剣を構えた。
「俺の最後の一撃、受け止めてみな!」
ソフィアは剣先に全身全霊を込めて突きを放った。その切っ先がアイラの『鬼眼』の圏内に触れた瞬間、アイラのナイフと大地の盾が挟み込むように切っ先を止めた。ソフィアの剣はそのまま動かなかった。
「ふっ、俺の負けだ・・・」
ソフィアはさばさばした表情で剣を放した。と、ソフィアの全身が赤い炎に包まれ、その炎が消えたときには、ソフィアの傷はきれいに治っていた。
「アイラ。よくやった・・・。お前にならこれを託せる」
それだけ言うと、ソフィアは左手の扇子をアイラに差し出した。そしてアイラがそれを受け取ったのを確かめると、その姿は再び炎に包まれ、今度はイフリータが姿を現した。
「やったわね。ソフィアって強いのよ・・・。アイラさん、凄〜いわぁ〜」
そう言って褒めた後で、イフリータの表情が真剣なものになる。
「ところで、アイラさん。封印の武具を託すための最後の儀式があるの・・・」
「儀式?」
「ええ、貴女に血の誓約を受けてもらいます。火の精霊に害をなさないという」
「う〜ん。ねえ、イフリータ」
「はい」
「誓約自体は構わないんだけど、あたしからも一言付け加えさせてくれない?」
「一言によるけど、何を付け加えたいの?」
「ジローに害をなす火の精霊は別よ」
毅然と言い放つアイラ。その迫力にイフリータも一瞬怯む。
「わ、わかったわ・・・、それでいいわよ。では」
イフリータが呪文を唱え、アイラの手の傷から立ち上った血煙と炎が入り混じった。そしてその塊が、再びアイラの体内に戻って行く。
「やったわね。これで封印の武具はアイラさんのものよ」
イフリータの発言に今度はアイラがきょとんとした表情。
「手にしたって、あたし何も・・・」
その時、左手に握っていたものに気付くアイラ。それはソフィアから渡された扇子だった。
「えっ?この扇子なの?」
イフリータは楽しそうに頷いた。
朱雀扇。
ミスズが命名したアイラの新しい封印の武具は、素晴しい能力を秘めていた。まず、朱雀扇はソフィアが使ったように、どんな刃物でも傷一つ無く受け止めることが出来た。加えて、受け止めた時の衝撃を吸収してしまうらしく、アイラには衝撃が伝わってこない。これは、同じ封印の武具である玄武坤や白虎鎗での打撃でさえも同様だった。
アイラは、闘技台の上で訓練を終えたところだった。相手はミスズとユキナ。但し、さすがに2人同時に相手をしてはアイラも身が持たないので、1対1の闘いを交替で行っていた。
「お姉さま。ありがとうございました」
ミスズが言った。3人共、汗でびっしょり濡れ、ビキニの水着のような服装に隠されている筈の乳首や陰毛がうっすらと浮かんでいた。
「お姉さま。とっても凄いです。感動しました」
そう言ったのはユキナである。白虎鎗の攻撃を朱雀扇でことごとくいなしたアイラを尊敬の眼差しで見つめている。
「でも、お姉さまの『鬼眼』と朱雀扇の組み合わせは、究極ですね。なにしろ、どんな攻撃も察知できて受けられるだけじゃなくて、受けた衝撃を消散してしまうのですから」
ミスズがそう云いながらアイラの横に座った。アイラを挟む形でユキナも座る。
「ふふ、これであんた達の負担を軽く出来ると思うと、嬉しいよ」
そう言って、2人の肩を抱く。2人は自然に頭を傾け、アイラと身体を密着させた。汗にまみれて少々べたべたしていたが、3人はそんなことはお構えなしとばかり。そのうちに、アイラの手が肩から腋の下へ廻りこみ、そのまま2人の胸を触り始めた。最初は布の上から、暫くすると布の中に手を潜り込ませて。
「あぁん・・・」
「はぁぁぁ・・・」
ミスズとユキナの声に甘いものが混じる。そして、2人もやられるばかりではなく、アイラの上の布を外して胸を露出させ、そのまま巨乳を口に含む。
「んふぅ・・・」
闘技台の上で武技に続いて性技の訓練が始まった頃、ジロー達は封印の部屋に入り調査を始めていた。
封印の部屋と言っても、ここは4神の神殿。即ち、瞬間移動の魔方陣がある場所である筈。そして、その場所は簡単に見つかった。
だがそこは、ジロー達の予想とは大分違っていた。封印の部屋に入って正面の扉を開けると、その部屋の中に魔方陣があった。それも3箇所に。部屋は凸型をしており、その部屋の出っ張った部分に、それぞれ魔方陣が描かれていたのである。
ジローは、興味深々であちこち探っているシャオンはそのままに、ルナとレイリアを伴って仮に転送の間と名付けた室内を調べ始めた。
「こうなるとイェスゲンが戻ってしまったのが痛いな・・・」
ジローが小声で呟いた。導く者イェスゲンは、朱雀の神殿の封印が解かれた後、再び別の世界へと旅立ったのである。そしてイェスイは、今回導く者イェスゲンでいる時間が長かったためか、昏々と眠りについていた。
「ご主人さまぁ〜。ここに『白虎』って書いてありますよぉ〜」
レイリアの声に直ぐ反応したジローは、その場所を眺める。そこには確かに、魔方陣の書いてある奥の壁の中央に『白虎』の2文字が刻まれていた。
「ご主人様。これはもしかして、この魔方陣の行き先が書いてあるのではないでしょうか」
ルナの意見に対し、生半可に頷くジロー。しかし、その意見には一理あると思っていた。ただ、それを実証するにはどうすればいいのか考えていた。
「ルナ。この場所を明確に覚えられるか?」
「はい。記憶には自信があります」
ルナの返事を聞いて、ジローはある実験をしてみようと思った。それは、玄武の神殿に行く筈の魔方陣から実際に飛んでみようということだった。
そうすれば、この転送の間の仕組みが理解できると思ったのである。実際、魔方陣の行先が本当に神殿である保証はない。ただ、ここが朱雀の神殿だけに、それなりの霊験新たかな事象が発現するのではという期待を持っていた。
ルナは、水の指輪の持ち主であり、玄武の神殿に同行するには絶好の愛嬢と言えた。加えて、神聖魔法の『光虹』を使えるから、転送の魔方陣を使うことが出来る。この状況なら、ジローの発案をやってみる価値はあるだろう。
もう一つ加えれば、玄武の神殿ならばウンディーネを使ってシズカ姫に会うことができる。シズカ姫はクロウ大帝の愛嬢としてドレアムを転々とした内の1人ということは間違いなく、朱雀の神殿のことも知っている可能性が大なのだ。
そのことをルナに話していた時、ジローは自分のアイデアを説明するのに夢中で、あることを忘れていた。そう、転送の間にはもう1人いたのだ。
「ご主人さまぁ。レイリアちゃんも行きたいですぅ〜」
ジローはしまったと思ったが後の祭り。こうなったレイリアはてこでも引かないということは、一緒に旅をしてきて十分わかっている。そして更に・・・。
「え、なになに、どっか行くの?」
駄々をこねるレイリアの声を聞きつけてシャオンまで現れてしまった。もちろん、盗賊の魂が疼くシャオンが玄武の神殿行きを、みすみす見過ごすことはなかった。
ジローはため息をついた。
「わかったよ・・・。でもまず、俺たちが突然いなくなって心配しないように、アイラ達に出かけることを言ってこないとな」
ジローはアイラ達の元へ行って、実験のことを説明した。すると、アイラは朱雀の神殿に残ることを快諾した。というのも、イェスイがまだ眠ったままということもあり、ジローもアイラもイェスイ1人残して全員が魔方陣で跳ぶ訳には行かないという思いが一致したことと、アイラの朱雀扇を練達したいという思惑が重なったのだ。
そして、ミスズとユキナはどうするのか聞いたところ、2人共、アイラと一緒に武功を練りたいと申し出た。ちょっと顔を赤らめながら。
そういうわけで、今、転送の間に来ているのは、ジロー、ルナ、シャオン、レイリアの4人。壁に玄武と書かれた場所の魔方陣の上に全員が乗り、ルナが静かに魔法を練り上げるのを待っている。
「では、皆様、行きます」
ルナが『光虹』の魔法を天井の小魔方陣に向けて放ち、そこから放たれた光が渦となり魔方陣を満たす。ジロー達がその光に包まれたと思った瞬間、眩しさは消え、代わって青白い光に包まれた室内の景色が見えた。
「ここは?似ているけどさっきの部屋とは違うみたい・・・」
シャオンが最初に動き出していた。部屋の大きさは転送の間の突起部と同じくらい。床には魔方陣も描いてある。
「ご主人さまぁ〜。ここに『朱雀』って書いてありますよぉ〜」
レイリアが発見した文字の書いてある壁、丁度その反対側の壁を調べていたシャオンが壁に触れた瞬間。
「きゃあ!」
ジローは慌てて声のした方を振り向く。すると、今まであった筈の壁が消えうせ、廊下にはバランスを崩して転んだシャオンがいた。
「あいたぁ〜」
シャオンは腰を撫でながら立ち上がり、同時に周りをきょろきょろと見回す。
「ジロー、抜け道発見」
「あ、うん、よくやったな、シャオン」
褒めて褒めてオーラを出しているシャオンとレイリアを交互に褒めたジローはルナと共に廊下に出た。
「ジロー様、ここは・・・」
ルナは見覚えのある廊下とその先の扉を見ていた。
「ああ・・・」
ジローは扉を開ける。そこには、魔方陣の描かれた部屋があった。半年前にジロー達がノルバへと旅立った場所である。
「玄武の神殿です・・・」
ルナは懐かしさを感じながら嬉しげに呟く。銀色の瞳には涙が浮かんでいた。