店も賑わいを見せる頃、見馴れない一人の女の子が店に入ってきた。メープルはいかにも追われている、そういう感じだった・・・。この女の子が話すことといえばいつも男性の事だ。
| 無職 メープル
「古今著聞集 中納言顕基卿は、後一条院ときめかし給ひて、若くより官位につけて恨みなかりけり。帝おろして奉りにければ、「忠臣は二君の仕へず」とて、天台楞厳院ののぼりて、頭おろしてけり。帝かくれ給へりける夜、火を灯さざりければ、「いかに」と尋ぬるに、主殿司、新主の御事えお務むとて、参らぬよし申しけるに、出家の心強くなりにけるとかや。 あなたこなたにて行はれけるが、大原に住みける頃、宇治殿、かの庵室のむかひ給ひて、夜もすがら御物語あるけり。宇治殿、「後世は必ず導かせ給へ」など示し給ひて暁帰りなむとし給ひける時、「俊実は、不覚と者にてふ」と申されけり。その時は、何とも思い分かせ給はで、帰りて後、静かに案じ給ふに、させるついでもなきに、子息の事、よもあしきさまには言はれじ。見放つまじきよしなりけり。思ひ取りて世を遁といへども、恩愛はなほすてがたき事なれば、思ひあまりて言ひ出でられけりと、あはれに思して、事にふれて芳志を致されければ、大納言までなられにけり。 訳して下さい。よろしくお願いします」
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女の子のこの言葉がのちのち何人もの人々を苦しめることになろうとは、本人でさえも気づいていなかったのだろう。
私は「あちらのお客様からです」と嘘を付いてカクテルを出した。
| マスター おじさん
2006年06月07日水曜日 18時25分
「ようこそのお越しを。
訳すにあたって、以下の箇所について写し間違いがないか確認させてください。
・帝おろして奉りにければ ・忠臣は二君の仕へず(「に」ですね?) ・天台楞厳院ののぼりて(「に」ですね?) ・新主の御事えお務むとて ・かの庵室のむかひ給ひて(「に」ですね?) ・俊実は、不覚と者にてふ
このままだとちょっと意味がとれない箇所が多いので、首尾一貫した訳になる自信がありません。 是非ともご確認ください。」
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私は相手を怒らせないように冷静に対処した。
| マスター おじさん
2006年06月07日水曜日 20時53分
「本日はこれから出かけます。(実家で明日農業をしなければならんのです) 現時点までにお返事がなかった以上、訳せません。 帰りは明晩遅くになります。 それでもよいとおっしゃるのならその時に訳しますので、本文を確認して(間違ってるはずです)訂正しておいてください。 できるだけ何らかの反応をしていただくことを希望します。 丸投げ・無反応はマナー違反ですよ。」
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メープルはここで話題を変えた。
| 無職 メープル 2006年06月08日木曜日 21時51分
「本当にごめんなさい。パソコンの調子が悪くて返信できませんでした。すみません。 本文についてですがワークをそのまま写したのであっています。確認しました。全部じゃなくていいので訳して下さい。お願いします。」
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とにかくここは一旦相手を落ち着かせなければならない。
| マスター おじさん
2006年06月09日金曜日 00時26分
「戻って参りました。 本文につきましては了解しました。 そんなこともあろうかと、実家で古今著聞集調べてきました。 すると、本文は以下の通りあるべきであることが判明しました。
中納言顕基卿は、後一條院ときめかし給て、わかくよりつかさくらゐにつけて恨みなかりけり。御門にをくれたてまつりにければ、忠臣は二君につかへずとて、天台楞嚴院にのぼりて、かしらおろしてけり。御門かくれ給へりける夜、火をともさざりければ、「いかに」とたづぬるに、主殿司、新主の御事をつとむとて、まいらぬよし申しけるに、出家の心つよく成にけるとかや。あなたこなたにておこなはれけるが、大原に住けるころ、宇治殿、かの庵室にむかひ給て、終夜御物語ありけり。宇治殿、「後世はかならずみちびかせ給へ」など示給て、暁帰りなんとし給ひけるとき、「俊実は不覚のものにて候ふ」と申されけり。そのときは何とも思ひわかせ給はで、帰りて後しづかに案じ給ふに、させるつゐでもなきに、子息の事よもあしきさまにはいはれじ、見はなつまじきよしなりけり、おもひとりて世をのがるといへども、恩愛は猶すてがたき事なれば、思あまりていひ出られけりと、あはれにおぼして、事にふれて芳志を至されければ、大納言までなられにけり。
どうやらワーク自体が相当間違っておるようですね。 正しい本文に基づいて訳すことに致しますので、その旨ご了承下さい。
中納言顕基卿は、後一条院がかわいがられて、若いときから(相応の)官位につけて(顕基には境遇に)不満がなかった。(顕基は)帝に死に後れてしまったので、「忠臣は二人の主君に仕えたりしないものだ」と言って天台楞厳院にのぼって、剃髪して出家してしまった。(その前の)帝が亡くなられた夜、(宮中で)火を灯していなかったので(顕基が)「これはどうしたことですか」と尋ねると、主殿司が新しい帝のお役目をするというので参内していないということを(その場の者が返答として顕基に)言ったので、(顕基は人の世のはかなさを感じて)出家しようという気持ちが強くなったのだということだ。 (顕基は)あちらこちらで仏道修行をなさったが、大原に住んでいた頃、宇治殿(=藤原頼通)がその(=顕基の)庵室に出向かれて、一晩中よもやま話をなさった。宇治殿(がおっしゃるには)、「(あなたが導師となってわたしの)来世(での極楽浄土への往生)をかならずお導き下さい」などとおっしゃって、夜明け方にお帰りになろうとなさったとき、(顕基が)「(息子の)俊実は分別をわきまえない者でございます」と(宇治殿に対して)申し上げなさった。(宇治殿は)その時はどういうことであるのかおわかりにならず、帰った後にゆっくりとお考えになると、「これといったきっかけもないのに、自分の息子のことをまさか悪いようには言われないだろう。(私に俊実を)見放さないでください、ということだったのだな。かたく決心して遁世しているといっても、親子の情愛はやはりあきらめきれないものであるので思い余って口に出されたのだなあ」と気の毒に思われて、何かのことにつけて行為を示されたので、(俊実は)大納言にまでなられた。
「帝おろして奉りにければ」なら、「帝を退位させ申し上げたので」という、まったくわからん訳にしかなりませんし、「俊実は、不覚と者にてふ」はそもそも仮に訳すこともできません。 主殿司は宮中の灯りなどをつかさどる女官のこと。 俊実はほんとは顕基の息子ではないようです。」
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