“嬲る”とは…ただ相手を辱めるだけのものではない。

 喜悦を…絶頂を与える事でも、まだ足りぬ。

 その根底・最奥には相手の意志を抜きにしては為せぬ厳然とした“何か”が存在する。

 その“何か”を得た者だけが『嬲道』を極めた真の“嬲師”と言えるのだ。

 (嬲道 嬲天穴流八代目宗家 大猿娑婆丸著 『嬲師伝』より抜粋)



 『御使の手』



 ある日、福狸電鉄快速電車に修道女が一人…

 彼女は狭い車内にあって一際人の目を引く存在だった。

 車内は通勤・通学の時間帯と言う事もあり、混雑しているが、それでもなお人の目を引き付けたのは、その場違いな尼衣が奇異に映る所為ばかりではない。

 日本人離れした容姿の見目麗しい女性だった。

 翡翠色の瞳、鼻梁は高く、頭巾から僅かに覗く前髪は金色に輝いている。

 猫背気味に背を落としている為、長身でありながら体の大きい印象は受けない。

 細くたおやかなスリム・ボディ。

 そして…

(おい…あのガイジンのシスター見ろよ。胸、デカくねぇっ?)

(ああ。スゲェ爆乳…)

 小声で噂する若者達…

 彼らばかりではない。

 衆人…特に男性の嘗め回すような視線が彼女の豊かな胸乳に突き刺さる。

 若干胸板を引き気味にしているにも拘らず、尼衣を突き破らんばかりに実ったたわわな乳房が圧倒的な量感を持って周囲にその存在を誇示していた。

 その清廉を旨とする修道女にして不必要なまでに女性をアピールする肢体に邪な欲望を抱かない者は少ないだろう。

「…嫌だなぁ」

 その美貌の巨乳尼…St.アンナ・タカスギは恥し気にその身を竦め、俯きがちに独言散た。

 先ほどの若者達の会話も彼女は聞こえていた。

 今も好奇の視線を痛いほど感じる。

 それが酷く煩わしい。

 彼女自身、自分の発育過多な乳房が男性の性欲を強く刺激する物だと言う事は十分理解している。

 “仕方ない事”…赦そうとする気持ちもあるのだが、修道院で純粋培養された心根は男達の無遠慮な視線に嫌悪感を抱かずにいられなかった。

 普段なら集団で行動し、他のシスターが気を効かせて周囲から守ってくれるのだが、今日は人手と役割分担の関係で彼女一人他県の教会に出向しなければならないのだ。

 自動車免許がないから電車で…ということなのだが、私服の許可を得るべきであったと今更ながらに思う。なるほど…ちょっとうっかりだ。

(“ガイジン”のシスターかぁ…)

 若者達が囁き合った何気ない言葉が胸に残っていた。

 確かに彼女は仏系クォーターで、見た目は外国人かも知れないが、生まれも育ちも国籍も日本だ。

 英語も仏語も日常会話ぐらいはこなせるものの、海外に出たことは一度も無かった。

 少しでも話した人はすぐに彼女の人為り(まんま日本人だから…)を知り、打ち解けてくれるのだが、知らない者から見れば、彼女は所詮“余所者”でしかないのだ。

 外見による偏見と奇異の目は何時まで経っても慣れる事は無い。

(ちょっと…寂しい)

 最近、こんな些細な事でも物悲しくなる。
 
「早く着かないかなぁ…」 

 車窓から覗き見る景色は寒々しく、心を晴らすことはない。

 目的の駅はまだ大分先だ。

 彼女は憂鬱な気分のまま電車に揺られている。
 
 この時、彼女は自身がどれほど無防備な状態で居るのか、また彼女の身にどれほどの危険が迫っているのか知る由も無かった。



 無垢な彼女に迫る“魔の手”を持つ者達…

 それは…

(へへ…可愛くて罪深い子羊ちゃん、はっけ〜ん!?)

(おぉっ…凄ぇ上玉だな?おい、重さんに言って数集めて貰え。久々に集団で犯るぞ!)

 情報は全車に居る仲間達に可及的速やかに伝えられる。

 一見、通勤・通学中のサラリーマン・学生である彼らは、プロの“嬲師”達である。

 “嬲”という字は字面からして複数の男が女性を苛む姿に似て、彼らの本質を如実に現す。

 嬲師とは、痴漢に限らず、SM、果ては集団レイプ等々異性、時には同性を舐り尽くし、篭絡する事で日々の糧を得る。しかし、単なる“痴漢”や“ヒモ”と言い切れない系統立てた熟達の業、それに伴う自尊心が彼らにはあった。

 知ってか知らずか麗しのシスターは、沿線で有名な最悪の痴漢列車に乗り合わせてしまったのだ。

(次の駅までに全員がこの車両に乗リ移る。嫌がらせ、恫喝…何でもいい。因縁付けて堅気衆を全て追い出せ!一車両全部“身内”で固めるんだ!?)

(((オゥッ!!)))

 リーダー格の浮浪者…もとい自由人の“重さん”が指示を出すと、嬲師達の動きはごく自然に…且つ整然として見えて、水面渡る水鳥の如く、水面下で慌しい動きを見せた。

 混雑しているにも拘らず、床に腰を下ろしてだべる男子高校生を対象の気付かれぬ車窓から一人投げ、二人投げ…計十八人。

 面白半分で痴漢冤罪吹っかけそうなだらけた女子校生も嬲り尽くしてお嫁に行けない体にした後、同様に車外へ廃棄。

 ヤクザ風のチンピラは取り囲み、タコ殴りにして沈黙させた後、これまた車窓から外に投げ捨てた。

 若干呆け気味のおばあちゃんには、煎餅…は歯に悪いので、苺大福で釣って別の車両に移ってもらう。

 ○学生の一部美少年達は女嬲師らの巧みな誘導でぬっぽん!筆下しを終え、そっちの好事家の元へ送られる。

 他のぱんぴ〜な乗客は重さんら自由人の芳しい体臭(鍛錬により臭う場所を限定出来る)に卒倒し、心良く別の車両に移ってくれた。

 こうしてこの車両には対象…St.アンナ以外の全てが凄腕の嬲師達によって占められる事となったのである。

「あれ?」

 しかし、この急激な乗客の入れ替わりには、さしものおっとりボンヤリなSt.アンナも異変に気が付いた。

 次の駅に着いた訳でもないのに、両隣に居た客や座席に着いた客までも入れ替わっている。

(切り離すのかな?)

 St.アンナが周りをキョロキョロ見回すのを見て、嬲師達の内心に緊張が走った。

 重さんの合図で彼女への“交渉”が解禁される。

 嬲師の数、約40名…これだけの人数に嬲り尽されれば、このシスターは正気では居られないだろう。

 その光景を思い、皆股間を膨らまして(あるいは濡らして)いるというのに、その合図は未だ無い。

 このままでは折角の獲物を獲り逃がす事にもなりかねないというのに…

(まだかよ…)

(まだか…)

(重さん、何やってるんだ?クソっ!もう我慢できねぇっ!?)

 焦れた数人が禁を破って近付こうとしたその時…

(待てっ!待機だ。待機命令が出た!?)

(((何っ!?)))

(『宗家』がいらっしゃる!!)

 ざわっ!?

 突然の理不尽な待機命令に車内の嬲師達が騒然とする。

「あの…これ新福狸駅行き…ですよね?」

 ざわめきに満ちた車内に不安になったシスターは、隣にいる小柄な少年に問い掛ける。

「ええ…そうですよ」

 問い掛けられた少年は俯いていた顔を上げ、ニッコリ!と彼女に微笑んだ。

「ハァ〜…」

 その天使のような笑みにSt.アンナは暫し見惚れて溜息を吐く。

(わぁ…綺麗な子)

 タンパ・ベイのベースボール・キャップを目深に被っていた所為で気付かなかったが、自身と同じ金髪碧眼の目の覚める様な美少年だった。

 彼女の豊満な胸ぐらいまでしかない小柄でたおやかな肢体。

 一見すると女の子に間違えてしまいそうなかわいらしい顔立ち。

(天使のよう…)

 それは彼女が小さい頃夢見た御使いの姿そのものだった。

「新福狸駅だとシスターは福狸聖教会へ行かれるんですか?」

「はっ、はい!あの…貴方はクリスチャンでいらっしゃるの?」

 『福狸聖教会』と聞いてSt.アンナは目を輝かせる。

 彼女はこの電車が間違っていないか?今日中に辿り着けるのか?…不安だったのだ。

 それは彼女の生来の空間認識能力の低さから来る一種の障害の為だった。

 つまり…

「いいえ…でも、僕の家の近くなので、良かったら御案内しましょうか?」

「お、お願いします。私、“方向音痴”なんです。この電車に乗るのに四本も逆方向に間違えて…」

 渡りに船…St.アンナは涙を浮かべて歓喜し、そして、心から安堵した。

 握り締めた地図は方向を間違える度、焦りからか手に汗が滴り、インクが滲んで読めなくなっていたのだ…

「おぉ、神よ!感謝致します!!」 

 車中にも拘らず彼女は腰を落とし、神に感謝を捧げる。しかし、祈りの最中に彼女の脳裏に僅かな疑問が翳めた。

(だけど…こんな綺麗な子、隣に居たかしら…)

 シスターは首を傾げるものの、それ以上気に留める事は無い。

 それが神が残した最後の警告だったとも知らずに…

 ………

 ……

 …

「ウフフ…ウフフフ…」

 道中、少年との会話は幼くとも普段異性に触れることの少ない彼女にとって楽しいものであった。

 そう…何故か非常に楽しいものに思えたのだ。

(あれが…あのガキが、嬲天穴流九代目宗家“向原のるん”?)

(ああ…確かまだ(ピィーッ!)歳だ。しかし、こりゃあ、いい機会だぜ。嬲天穴は御留流一子相伝…滅多に御目に掛かれねぇっ!)

 シスターの身柄は焦らずとも宗家によって嬲り尽された後、“御下げ渡し”となる。

 初物は逃すが、得こそあれ損をする事はまず無い。

 幻の伝統芸能『嬲道嬲天穴流』の技に触れる事が出来るのは、凡百の嬲師たちにとって大変な僥倖であった。

 嬲天穴流は禁手・隠手ばかりで秘事が多く、世にその凄まじさは伝え聞くものの、既に失われたと言われて久しい。

 裏社会の人間国宝…先代宗家・大猿娑婆丸(オオマシラノシャバマル)は、彼らにとって憧れを通り越し、神仙の類として崇められていた。

(警戒心が薄いとはいえ、あんなに直ぐに心を開くものなのか?)

(お前、聞こえないのか?“音”だ…)
 
 ぴぃぃぃぃぃぃん…

 耳を澄ませば、針を弾いた様な微妙な空気の揺れが確かにシスターに向けて発せられている。しかし、それは並みの嬲師達にはどの様な効果があるのか理解出来るものではなかった。

 手を叩けば消えてしまいそうな空気に生まれた僅かな揺らぎに合わせてシスターの体が傍から見てもゆらりゆらりと大きく揺り動き、目元がトロンと緩んできている。

 並の嬲師ならば、既に接触しているであろう。

 それほどシスターは夢見心地の半覚醒状態に陥り、頃合に見えた。しかし…少年は動かない。ただシスターとごく普通に会話を続けている。

「義姉ちゃん達三人が学校の合間に何かと事務所を助けてくれているんですけど、やっぱり兄ちゃんは新米所長で、頼りなくて…」

 シュッ…ン。

「…ヒッ!」

 少年の腕が一瞬、消えた…ように見えた。

 シスターの体がピクッ!ピクッ!と数回震える。

「はぁ…ン」

 シスターが熱く短い吐息を一つ吐く。

 何時の間にか彼女の首筋と背中の中央、腰部に長さ1cmくらいの極小の針が刺さっていた。

「あ、あれ…あ…ン」

(熱い…何でこんなに…)

 シスターは既に言葉を発することが出来なくなっていた。

 総身が何故か異常に火照る。

 しかし、それは一瞬でかっと熱くなるのではなく、徐々にポカポカと体を温め、次第に耐え難い熱さにまで体感温度が高まっていく。

(熱い…熱くて…私…駄目っ!駄目よ!駄目っ!?)

 今にも修道衣を脱ぎ捨て、裸になりたいという強い欲求を抑えながら首を振り自制を促すシスター。しかし、時間が経つにつれ自制心が薄れていく…

(だ、だめ…だめなの…に)

 体の火照りは全身に広がり、特に下半身はまるで火の塊を内包しているように耐え難いものになっている。

 シスターはその熱い疼きを逃す為、無意識に腰を妖しく蠢かせ始めた。

 それはまるでストリッパーが舞台で衣服を脱ぎだす前の観客をじらす動きに見える。

 パッ!

(((おおぉっ…)))

 嬲師達の間で感嘆の溜息が漏れる。

 シスターの周囲が不意に霞掛かっていく。

「あぁん!」
 
 フワリとかすかな風が彼女の体を凪いだ。

 何気ない空気の流れなのに心地良い。

 思わず身を任せてしまうような甘美な…

「あ…」

 脱力したシスターの体がカクンと膝から崩れ落ちる。

 ただの風になぜこんなにまで感じさせられてしまうのか?

 腰が砕け、薄れていく意識の中、St.アンナは見た。

 風の中に微小な綿帽子の様な植物の胞子が舞って行く様を…

「あっ!シスター、大丈夫ですか?」

 だきっ!

 少年は崩れ落ちる大柄なシスターの胴回りに手を回し抱き留めた。

 豊満な乳房が少年の額に当たる格好だ。  

「す、すみみゃへん…アぁんッ!」

 ぐりぐり…

 少年の頬が衣服の上から勃起した乳首に擦り付けられた。

「あっ、あっ…ヒッ!…うぅ」

「ふふ…」

そして、彼の手が彼女の尻の割れ目に沿ってきゅっと差し込まれた。

「あぁ…」

 驚愕の目を向ける美貌のシスターに少年はまるで天使のような無邪気な顔で微笑み掛ける。

 無遠慮な手が乳房に回され、揉み上げられた瞬間…

「あンッ!」

 シスターの体に電流が走った。

 快感は意識を鈍らせ、正直な体を透過して骨の髄までその存在を刻み付ける。

 体中を這い回る手は少年の両の手だけの筈だが、それが千の腕に増えたように感じられた。

 幾本もの手、また手…

 嬲り尽くし、意識にまで侵食する邪悪な悦楽。

 ぷちっ…

「あっ…」

 少年の指がゆったりした僧衣の上からブラのフロント・ホックの位置を的確に捉える。

 乳房を捏ね回され、勃起した乳首をコリコリと嬲られるともはやシスターに抵抗する意志も力も失われた。

「アッ、アンッ、アンッ!…あっ…あっ…あっ…アアッ、あはぁ…はぁ、はぁぁ…アアアァァァァァァッ!?」

 人目を憚らず喜悦の絶叫を上げるSt.アンナ。
 
 嬲点穴流前一之太刀『千手縛』…

 彼女の意識は其処で一度途絶えた。

 ………

 ……

 …

「ふぁっ、ふあっ、ふぁうっ!」

 美貌のシスターは座席にへたり込み悶え狂う。

 降りるべき駅はとうに過ぎてしまっている。

 悪戯をしている者は…見えない。

 何時の間にかベルトを外し、大胆にも冠頭衣の中に潜り込んだ痴漢は、もぞもぞと公然猥褻に勤しんでいるのだ。

 豊かな乳房はもとよりショーツの中にまで指を忍ばせ舐り回す。

 気の弱いSt.アンナは助けを呼ぶ事が出来ず、周囲の目からその小柄な膨らみを隠すように抱え込んでいた。

 車両の縦に伸びる長座椅子は座っていた者達全員立ち上がり、見物に徹して総空きの状態。

 St.アンナに抵抗する意志は無く、其処に寝かされて痴漢され放題の状態であった。

「ふぁあっ!(ビクビクッ!!)」

 彼女の傍らには脱がされた靴が並べられ、下着まで折り目正しく(まるでアイロンを掛けたように皺一つなく)きちんと畳まれていた。

 しゅぱっ!しゅぱっ!

 ストッキング、色気の無い下着(ズロース?)と…まるで神業のように次々剥ぎ取られ、積まれていく。

 これを見る限り、シスターは既に頭のフード、冠頭衣以外の着衣を着ていないことが推察できる。 

(糞っ、中で何やってんのかさっぱり分からねぇ…)

(さっきの技も早過ぎてどんなことしたんだか…)

(さすがは御留流…そうあっさりと奥義を見せてくれないかぁ…)

 周囲の嬲師たちは焦れていた。

 長衣の中ではどのような淫らが行われているのか、全く窺えないのだ。

 年若い宗家が垣間見せた嬲技は技術が高度過ぎて到底盗む事など適わない。

 高等痴漢技に無垢な肉体を嬲られ続けるシスターの潤んだ瞳は既に空ろで光を失っていた。

「あ…あ…」

 涙が伝う。唇からは涎が垂れ、あまりの快楽に自我を失い、法悦に身をガクガクと震わせていた。

 もう彼女の体は性感に蕩け出来上がってしまっている。

 その哀れな風情は嬲師たちの強姦意欲をじわじわと刺激するのだ。

 御業も見れず、久しく見ない極上の獲物を前に指を咥えて見ているしかない状態は苦痛以外の何物でもない。

 “御下げ渡し”を待つしかないのだが、その内とんでもない事が起こった。

 ビリリリィィィッ!

(((何ぃいぃっ!?)))

 周囲の目が驚愕に見開かれる。

 衣服を表立って破る(周囲に気付かれぬよう下着を毟り取るのは可)…これは嬲師としては最低の行為。

 何ら衣服を傷付ける事無く、異常を感じさせず、お持ち帰り以外のお客様には気持ち良く帰って頂くのが嬲師の矜持であり、腕の見せ所なのだ。

 シスターの豊満な裸身が衆人の前に晒される。

 それは周囲が想像していた以上に艶かしい肉体であった。
 
 美の女神もかくやと思わせるほど色白で艶やかな肌はほんのり桜色に染まり、花の香りのする体臭が仄かに漂う。

 その若さからくる張りにより重たげな乳房はその重みに耐えかねて垂れそうで垂れない微妙な均衡を保っていた。

 紡錘状の乳房の先は硬く尖り、快楽に蕩けた体が幾度も痙攣が走る度に淫らで蠱惑的な揺れを見せる。

 丸出しの股間にはうっすらと黄金色の柔らかな繊毛が彩り、中央にある秘密の泉の周辺は溢れた愛液によりぐっしょりと水気を含んでいた。

「フーッ!フーッ!」

 鼻から荒い息を吹く痴漢少年…“のるん”はあまりの興奮に理性を保てなくなっていた。

 女を抱くのは初めてではない。

 美貌の人妻からその年端もいかぬ娘までと言った風に親子丼も含め何十人も雌に堕としているし、同じ年頃の○学生美少女達を全裸で侍らすのも一度や二度ではなかった。

 ○学校でも同じクラスの生徒ばかりか女教師まで裸にして授業を受け、その場でセックス・パーティーに興じたこともある。

 女体に慣れ親しむこと数多、先代より秘儀を授かり齢(ピィーッ!)才にして嬲師1万人の頂点に立つ。

 我を忘れて襲い掛かることなど有り得ない筈だった。

 厳しい修行を経て女体を蕩かし、衆人の前で獲物に自ら服を脱がさせ、性交を強請らせることすら容易い。しかし…今、彼は理性を失い衣服を引き千切り、力ずくで女体を征服しようとしている。
 
 無様と心の片隅で過る思いもあるが、ただ今は全てを投げ打ってでも己が獣性を解放したい。

 彼はその己が内にある獣に操られるようにしととに濡れそぼるシスターのヴァギナへとその年相応の勃起してなお半ば包皮の被る幼いペニスを押し当て一気に挿入した。

「フハァッ!」

 にゅぶっ…

「ヒッ、ヒイィィィッ!?」

 その小さなモノは異性との交わりから隔絶された空間で守られてきた純潔をいともあっさりと破り捨てた。

 洗う事以外手も触れることも稀な薄桃色の花園は数々の超絶痴漢技によりその固く閉ざされた門扉を開放しただけでなく、荒々しい暴漢の手により散らされてしまったのだ。

 鮮血が流れ伝う。しかし、蕩けきった肉体の感覚は鈍り、その痛みを正常に伝えなかった。

 ただ彼女の意識へとこの無理矢理な破瓜の悲劇を無情にも脳裏に刷り込んでいく。

「あ…あ…」

(私、犯され…ちゃった)

 公衆の場で公然と行われる公開レイプ…悲惨な処女喪失。

 St.アンナは肉体と同様に鈍った思考の中で深い悲しみにあった。

 こんな幼い…○学生と思しき少年に蹂躙される。

 何人もの異性の目に晒された大切な破瓜の行為。

 注がれる好奇の視線、また、視線…

 彼女の頬に一筋…悲しみの涙が伝う。

「いやぁ…いやぁっ…ヒック、ヒッ…」

「ハァ、ハァハァ…」

 じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ…

 処女懐妊に幻想があった訳ではない。いつかは逞しい壮年の男に抱かれる事を夢見ていた。

 子を育み、幸せな家庭を持つ夢…しかし、現実は自分よりも遥に年下の少年に肉体を穢され、その夢すらも踏み躙られたのだ。

 彼女の母はシングル・マザーだった。

 個人ではどうしようもない揉め事に巻き込まれて、ある男に問題解決の代償として一晩限りの行為に身を任せたことで身篭った。

 その誰とも分からぬ男はSt.アンナが生まれた後も現れることは無かったが、未だに母は彼を忘れる事が出来ずにいる。

 彼女が夢見たのは触れる事も適わなかった父親の温もりを持つ男と得る事の出来なかった一家の団欒だったのだ。

 St.アンナはセックスが子作りの為の行為であることを知識として知っており、純粋な精神と一足飛びな性格が相俟ってこの行為が母親の例から即妊娠に繋がるものと考えてしまっていた。

(こんな…こんな小さい子の子供を身篭るなんて…酷い。酷過ぎます…神よ…ああ…神様ぁ…)

 神が救いの手を差し伸べる事は無い。

 St.アンナは滂沱の涙を流し、悲しみに耐え切れずに嗚咽を洩らした。

「ヒッ、ヒグッ、ヒン、グシュ…ヒィッ、うう…いやぁ…」

「ハァ、ハァ、ハァッ、ハァッ!ハァッ!?」

 少年は涙に暮れるシスターの肉体を貪るように息荒く荒々しい挿入を繰り返す。

「うっ!…うあぁ…ぁ」

「は…ひっ…はぁぁ…」

 ぶぴゅぶぴゅぴゅ…びゅびゅっ…

 何時までも終わる事の無いように思われた悪夢のような行為。しかし、終点間近…少年は漸く射精し、シスターの膣内は彼の大量の精液で満たされた。

『次は終点〜福狸ぃ〜福狸ぃ〜…』

 ゲーム・オーバー。 

 下の嬲師達に下げ渡す時間は既に無く、その後も行われる事は無い。

 この出来事は嬲師たちに少なからず不満の芽を残す事となった…  

 ………

 ……

 …

 激しい行為の中で気を失ってしまったらしい。

 St.アンナは微睡の中、激しい叱責の声を聞いた。

「向原さん…私ゃあ、正直アンタには失望したよ!」

「………」

 億劫がる意識を奮い起こして目をやると『重さん』と呼ばれた嬲師と項垂れる少年の姿が見える。

「ただ我を忘れて犯るだけなら猿の交尾と一緒です。嬲師の仕事じゃねぇですよ!久々の“嬲り合わせ”で集まった連中も納得しやせん。御下げ渡しも行わず、獲物に触れさせもしない。連中は不満たらたら…場は大いに白けました!」

「…すみません」

 謝罪する少年の声は弱々しい…

 St.アンナはその少年の姿をみて胸が締め付けられるような思いに捉われた。

「あの尼さんが、アンタの雌犬に堕ちているっていうならともかく…向原さん、事によると責任取って宗家を返上して頂くことになるかもしれません。顛末は私から先代にお伝えして…おや?」

「ああ…目が覚めたみたいだ」

 近付く二人を見て身を固くするSt.アンナ。

 彼女の尼衣は少年により引き裂かれてしまい、誰の物とも知れぬ色褪せたコートを掛けてもらっていたが、その下は下着だけの姿だ。

 重さんは彼女に警戒心を抱かせないよう距離を取り、腰を落として目線を合わせると、ひどく優しい声で声を掛ける。

「お嬢さん、済まない事をしたねぇ…如何するね?この子を警察(サツ)に突き出すかね?私は止めんよ…」

 重さんは失態を犯した宗家を庇う事無く逮捕を勧める物言いをした。

 自由人・重さんは最大派閥『好事流』の長であり、一時期先代宗家から師事を受け、その後継候補にも上がった実力者だ。

 裕福なパトロンを抱える嬲師らの資金収集能力は高く、上納金の管理・運用だけでも旨みがある。

 実は彼はぽっと出の…そして、膨大な資金を一挙に管理している少年宗家に嫉妬と敵愾心を胸に秘め、日々彼を追い落とそうと策を巡らせていたのだ。

「あ…あの…わたしは…」

 本当ならば警察に捕まえてもらうのが良いのだろう。

 衆人の前で彼女はレイプされ、処女まで奪われた。

 憎むべき“犯罪者”…しかし、彼女の未だに内にある抗えない“何か”が彼女にその行動を思い留まらせた。

「私は彼を…赦します」

「なっ…?」

 シスターの言葉に唖然とする重さん。

 これでは…追い落とす事はもとより、責を問う事すら出来ない。

「しかしだね…お嬢さん?」

「私は彼を赦します!」

 コートの前身ごろを固く握り締め、もう一度自分自身をも諭すように宣言する。それは決意を感じさせた。

(ならば…)

 …と、重さんがシスターに手を伸ばしたその時、彼は少年を宗家に頂いてからおそらく初めてであろう感情の篭った声を聞いた。

「彼女に手を出すな、重三ぉっ!」

 スタタッ!

「クゥッ!」

 少年の怒声が響いた瞬間、重さんの伸ばした手の五指全てに極小の針が刺さる。

 節の部分を外す事無く、曲げる事すら適わない。

(小癪な…)

 少年宗家の実力には舌を巻く。まるで“嬲り”をするに為に生まれてきたような天賦の才…

「宗家、彼女を我が一門に下げ渡して頂きたい。彼女はまだ貴方の雌犬には堕ちてはいない!」

 重さんも引かない。
 
 嬲師の所有物となった獲物を彼らは『犬』と呼ぶ。

 所有物とするには公然とある儀式を行わなければならないのだ。

 奴隷のようになった者達は躊躇無くそれを行うが、この清純そうなシスターには出来まいと彼は高を括った。

「シスターっ!?」

 少年のまるで下僕に命じるような呼び声にSt.アンナは逆らわず重い下半身を引き摺り彼の前に歩み寄った。

 彼女が前に立つと少年は静かに命じる。

「僕の前に跪け…シスター」

「は…い」

 言われるまま跪くと少年は徐にジーンズのジッパーを引き下ろし、彼女の目の前にペニスを露出させた。

「ヒッ…」 

 何とか悲鳴を堪えるSt.アンナ…見るも初めてな男性器は幼くとも恐怖を与える物だった。

 それだけでも身の竦む思いがするのに少年は彼女に向けてなおも辱めるような命令を告げる。

「舐めろ!」

「(嫌っ)!」

 後ろで事の成り行きを見守る男に悟られてはならない。

 嫌悪感から顔が歪み、その男性器から漂う青臭い性臭に吐気を覚える。 

(これを舐めるなんて出来ない。けれど…舐めないと…)

 重三と呼ばれた男が自分の身に良からぬことをしようとしているのは会話で察せられる。

 彼女は挫けそうなる意識を奮い起こしながら少年に顔を向けた。  

 其処には涙で潤んだ碧眼の瞳が気遣わし気に彼女を見詰めていた。

(我慢して舐めてくれ、シスター…じゃないと…じゃないと貴女は…)

 嬲師たちに下げ渡すことは彼女が襤褸屑のようになるまで嬲り尽され、アンダー・グラウンドのそのまた底辺を彷徨うことを意味する。

 それだけはさせたくない少年であったが、先に失態を犯した今の彼に庇い立てする手は最早これ以外無い。後は彼女の意思に任せるだけだ…

(なんで…なんでそんなに悲しい目をするの…) 

 躊躇している暇は無かった。自身の身を…そして、少年を守る為に彼女は意を決してその包皮に包まれ項垂れる幼い男性器を口に啜り込んだ。

「ん…んぶぅっ…うぇ…うっ…」

 息を止め、しゃぶるというよりも開いた口腔に填めているだけという状態だが、それは彼の所有となる儀式の成就を見せ付けるには十分だった。

「重三さん…彼女は僕の物だ」

 今にも一物を吐き出して嘔吐しそうなシスターを己が股間からゆっくり引き離し、言い放つ少年宗家。
  
「チィッ…」

 重さんは微かに舌打ちする。

 これ以上異論の声を上げれば反逆の意志ありと取られかねない。
 
 好事流は最大派閥と言っても数が居るだけで本当の実力者は他流派と比べるとあまりに少なかった。

 宗家の直参には凄腕の嬲師たちも居る。これを敵に回せば、非常に不味い。

 共食いになると門下の嬲師達…その大半が嬲り堕とされる可能性すらあるのだ。

 他流派の顔色を見、若輩の小僧一人手を出せない現状に彼は忌々しい思いを募らせるが、こと此処に至ってはもうどうしようもない。

「コートは借りていくよ」

「御苦労様でした…宗家」

 足早に立ち去ろうとする少年に向け重さんは歯を噛み締め苦渋に満ちた表情を浮べて深く頭を垂れた。

「頑張ったね。もう…大丈夫だ」

「あの…嗽をさせて下さい。気持ち悪い…」

 少年は嘔吐感で口元を押さえ、足元の覚束ないシスターを気遣い、手を貸している。

 その背を見送る重さんの脳裏には一つの疑問が過っていた。

 彼にとって今回の少年の失態は絶好の機会であった筈だ。

 嬲り仕事に失敗し、強姦に走る大失態。だが…あのシスターはレイプした少年を明らかに庇った。

 何故だか分からない。あの様子では絶対に“雌犬”に堕ちていなかった筈なのに…

「何故だ?」

 重さんは車内に戻る事無く、ホームに留まり長くその理由を考えていたが、答えは見付からなかった…

(助かった…けれど…)

 重三の疑問…それは少年の疑問でもあった。

 彼はレイプしたことに罪悪感を感じながらも彼女にその疑問を投げ掛けた。

「何で…僕を助けたの?」

「貴方…困っているみたいだったから…」

 嗽を済ませ、幾分落ち着いたシスターは恥しそうに顔を俯かせてそう言ったきり黙ってしまう。彼女自身分からなかったのかも知れない。

 気にしてない風を装っているが、依然顔色は悪く、心身ともに疲労で倒れそうに見える。

 それでも彼女は健気にも不安そうな少年を力付けるように…また、不安に飲み込まれそうな自分を奮い起こすように彼の手をしっかりと握り締めた。

 全てを赦すように…

「…ありがとう」

 少年は彼女の手を握り返し、漸く安堵の笑みを浮かべる。

「教会へ案内するよ」

 のるん少年は彼女の手を引き、目的の地へと導いていく。

 その間、彼は握ったSt.アンナの手をずっと離さなかった…



 少年は道すがら謝罪と共に嬲師のこと、彼がその嬲師達の頂点に立つ宗家である事など話して聞かせる。

 それは微笑を浮かべ、年相応の子供が自慢話をするかのような語り口だった。

「爺ちゃんが海外に痴漢旅行に行った時、不感症の婦警さんに捕まっちゃったんだって。どんな痴漢技を使っても全然駄目で『もう御手上げ!』って時に助けに入ったのが僕の義父さん。凄かったらしいよ。神職に就いているだけに正に神業!駅に降りる頃にはその婦警さんメロメロで爺ちゃん無力感に打ちのめされたって言ってた。その後、近くのホテルで二人して婦警さんをめちゃくちゃに…あっ」

「は、破廉恥です!」

 自分が何故『嬲道』を学ぶことになったか…その前振りを話すとシスターは羞恥で顔を真っ赤にして、さも汚らわしいと言った様子で涙をうるうる浮べている。

 彼女にこの手の話は御法度だ。失言に気付いた少年はばつが悪そうな顔をしながらも話を続けた。

「うっ…まあそんな感じで意気投合してさ。酔っ払って嬲り談義している内に僕を入門させるって話に纏まっちゃったらしいんだ」

「な、何て…」

(何て父親なの???自分の子を悪の道に走らせるなんて…)

 進んで子供を痴漢修行に出すなどなんて非道い父親だろう…

 彼女は少年への哀れみ、彼の父親に対して怒りを感じると共に自分に与えられた使命をも感じていた。

(主よ…貴方はこの哀れな境遇に置かれた少年を正しい人の道に戻す為に私を遣わされたのですね?)

 彼女は意外にもそうポジティヴに考え、胸の前で軽く十字を切った。

「最初は修行が厳しくて嫌だったけど…だけど、面白いんだよ!みんな、僕の思うままになるんだ!?同級生の女の子なんかまだ初潮も来てないくせにセックスしてくれって強請るんだよ!?大人の女の人だって僕が行くとみんなどんな場所でも服を脱いで股を開くし、お金だっていっぱい…」

「やめて!」

「え?」

 興奮した様子で自慢げに話を続ける少年に対してシスターは堪らず制止の声を上げた。

 人をまるで玩具のように考え、まだ幼い内から大金を与えるなどこれでは少年が駄目になってしまう。シスターは耐え切れず耳を塞いでポロポロと涙を零した。

「もう…止めて下さい。そんなことをしては…駄目です」

「で、でも…」 

「駄目…」

 哀れむようなそれでいて懇願するような瞳に少年は胸締め付けられて反論する事が出来なかった。俯く少年の頭をそっとシスターは胸に抱き寄せる。

「お願い…します。もしその邪悪な意識が貴方をそそのかす時があるのなら、私が…貴方をお慰めします。どんないやらしいことをされても私が貴方の心を…お救いしますから…」

「シスター……」

 少年の心を安らぎが満たす。それはただ女を抱いただけでは満たされる事の無いある温もりを伴っていた。

(ああ…そうか…)

 St.アンナの胸に抱かれながら彼は何故彼女に対して我を忘れてしまったのか分かったような気がした。

 彼女は母親に似ているのだ。彼の母は以前彼女と同じように福狸聖教会に勤める修道女だった。

 嬲り修行に出されてから味わう事の無くなった母の温もりを感じたかったからなのかもしれない。

「だから…もう、しないで下さいね?」

「うん!分かったよ…シスター」

 少年は豊満なシスターの胸に抱かれ、そのまま身を委ねた。

(うわ…)

 St.アンナの豊乳は包容力に富み、何処までものめり込んでしまいそうな底の知れない柔らかさがあった。

 顔を何処までも沈めていくと、彼女の仄かな体臭が彼の鼻腔を擽り、股間の男の部分でもムクムクと堪えようの無い衝動が蠢き始める。

 舌の根も乾かぬ内に彼女の言う邪悪な意識が少年をそそのかす。

「い、今…慰めて欲しいな…」

「え?今から…ですか?」

「来て!」

 少年はシスターの胸から顔を上げると性交を強請られ戸惑う彼女の手を引き、走り出した。

「あ…あの、駄目です。此処は…」

 連れて来られた場所は…小ぢんまりした教会だった。

「大丈夫だよ。もう夕方には誰も来ないから…ようこそ、福狸聖教会へ!で、その裏手がぼくの家!」

 彼女が望み、漸く辿り着いた教会はのるん少年の家と妙に密着している。いや、これは…

「あ…あの、家がつ、繋がっているんですけど…まさか御義父様というのは?」

「うん!ここの神父やってる!」

 がーん!

(し、神父様?)
 
 外国で婦警さんをメロメロにした痴漢が…子供を痴漢修行に出した父親が…神父?St.アンナの頭の中が真っ白になった。

「だけど今、南米に薬(ヤク)のトラブルで出張しているから居ないよ。代わりに兄ちゃんが代理をしているんだけど段取り悪くてそっちに泣き付いたみたい。あっ、こっちだよ!」

(ヤク…って何?何なのっ!?)

 のるんはあまりのショックに自失するSt.アンナの手を引き、教会に入っていく。

「貴方…電車でクリスチャンじゃないって…」

「洗礼は受けていないし、僕も義父さんと一緒で神様信じていないから」

「神を…信じて…ない」

 神に疑いを持ちながら神職に就き、子供を痴漢に育てるわ、神域をラブ・ホテル代わりにしても咎めないわと…宗教界に腐敗がある事など一切受け入れる事が出来ない箱入り娘・St.アンナは魔界に足を踏み入れたような感覚を味わい、その事実に呆然となった。

「あ…けど、安心して。兄ちゃんは名前からしてちゃんと“くりす”ちゃんで洗礼も受けてるし、神様も信じてるよ。真面目で聖職者としては立派なんだけど何にせよ不器用な人だからちゃんと助けてあげてよね」

「はぁ…」

 少年は自失するSt.アンナと手狭な堂内の中で向き合うと、爪先立って彼女の頬に軽くキスをした。

 チュッ…

「あ…」

 突然のことに頬に手を当て顔を真っ赤にするシスター。

「さっきは乱暴してごめんね。今度はいっぱい気持ち良くするから…」

 バサァッ!

 そう言い終えた途端、少年の背後に羽毛の渦が舞い上がる。

 夕日に照らされたステンドグラスの下で七色に輝くその姿はさながら翼を広げた天使ようだった。

 その神々しい少年の姿にSt.アンナは陶然とする。

(綺麗…)

 彼女は…もう少年の言葉に逆らわなかった。

 何か彼女の力では抗う事の出来ない“何か”が背を押す。

 『恐れることはない…全てを忘れ身を任せばいい…』と、誘うのだ。

 St.アンナは信仰という自らを縛り付けていた柵から解放されていく。

 彼女はその甘美な誘いに身を任せた。

「はい…」

 熱に浮かされたように短く答えると彼女は頭に被ったフードを外し、羽織ったコートを床に落とす。

 下着姿になり興奮露わにブラを外すと、とてつもない量感を持った巨乳がまろび出る。

 今まで恥しいと思っていた豊かな乳房を見せ付けるように胸を張った。

 衣服を一枚脱ぐ毎に彼女の心は衣服の重みと共に気持ちまでもが軽くなっていく。

 きつく編み上げた髪を解き、ウェーブの掛かった髪が光を吸って艶かしい色合いを見せて凄まじい色気が発散される。

 疎ましいとすら思っていた淫らな肉体…それが今はとても誇らしい。

 St.アンナは今抑圧されたセックスへの欲求により神への信心という重たい殻を脱ぎ捨て、美しい蝶へと羽化を遂げたのだ。

「あぁ…」 

 今度は逆にのるんがSt.アンナの艶やかさに感嘆の声を上げる番だった。

 うっとりと彼が静かに右手を天空に翳すと天使の羽が舞い降り、生まれたままの姿の美女を包み込む。

「んぅ…んっ…あぁ…」

 安らぎ。それと共に電車内で使われた綿胞子とは比較にならない気が狂うほどの悦楽が彼女を襲う。体中が性器になったように過敏で羽毛が彼女の体を撫ぜる度に電流が流れるように慄いた。

 力が抜けていく…

「あっ…」

 快楽に慄くSt.アンナの目の前に少年の顔があった。

 何時の間にか、彼女は神に祈りを捧げるように少年の前で跪いていたのだ。

「のるん…さん。んぅ…」

 ちゅ…

 彼女は微笑む少年の頬に接吻する。唇に首筋に、彼の衣服を肌けながら鎖骨を通って少女のようにたおやかな肉体にキスを繰り返し、その豊満な肢体を擦り寄せる。

 少年の体に蛇の様に絡み付き、手ずから彼の衣服を剥いで行く。

「ハァ、ハァ…」

 息荒く、年端も行かない少年の衣服を脱がしていく大柄な金髪女性の姿は逆に子供に悪戯する痴女の様に見えて奇異に映る。

 ジーンズを抜き、ブリーフ・パンツを興奮露わに引き摺り下ろすと少年の未だに剥け切らぬ幼い突起が目の前に突きつけられた。

「あ…あ…」

 嫌悪感しかなかったその無毛の男性器は良く見れば、薄桃色で赤子のように無邪気に見え、包皮に包まれたそれはまるで蓑虫のように隠れているにも拘らずビクビクと駄々を捏ねるように跳ね上がる。

 もう汚らしいとは思わない。逆にそのやんちゃな物体を宥めたい…可愛がりたい気持ちが強かった。

 彼女は今度は躊躇いも無く彼の幼いペニスを啜り込んだ。

「んっ…」

 じゅる…じゅぽ…じゅぷ。

 初心だった彼女に口唇愛撫の技術など知りようが無い。だが、彼女は時折快楽に震える少年の反応を体感する事により、彼の性感帯を知る事が出来た。更に彼女には淫らな天賦の才があったようだ。

 ペニスを手扱くスナップに微妙な強弱を加え、玉袋を柔々と擦り・揉み上げる動作は徐々に巧みな動きを得るに至り、包皮に舌を滑り込ませ、亀頭を舐め上げる熱い舌の動きはヌメヌメと吸い付くように縦横無人に這い回る。

「うっ…うぅっ…し、シスター!」

「はい?」

 切羽詰った少年の声にきょとんと小首を傾げるシスター。

 のるんは生徒に悪戯を施していた淫乱女教師や、セックスに慣れた熟女・水商売の女でもこれほど情感が高まる事は無かった。

 僅かに身動ぎしただけでぶるぶると重たげに揺れる巨大な乳房を見下ろすと知らず知らずの内、口中に唾液が湧き出してくる。少年は思わずそれを飲み下した。

 ゴクリッ!

「お願い…胸に挟んで擦って」

「…はい」

 St.アンナは少年の願いを聞き入れ、その豊満過ぎる乳房を両手で持ち上げる。その圧倒的な量感を持った母性の塊のような部位が本来の役割とは別の淫らな行為に使われようとしていた。

 むにゅん…

「あうっ!?」

 擦られた訳ではない。軽く包まれただけでのるんは切羽詰った声を上げてしまう。

 まるで電撃に打たれたように体を突っ張らせ、その耐え難い悦楽に髪を掻き毟った。

 木目の細かい餅肌に包まれる感覚は生暖かく、えもいわれぬ法悦を衝撃と共に彼に与える。

 少年のペニスから漏れた淫水を吸って肌が吸い付くようだ。

 のるんのペニスはまだ剥け切らない幼さから来る短小でその余りある肉量に難なく飲み込まれ、攪拌され、まるで波間に漂う小船のように翻弄される。

 性に目覚めた美貌のシスターは少年の可愛らしい風情に微笑を浮かべ、胸の谷間を更に狭めると彼の体の方へ押し出すように乳房を擦りつけた。

 むにゅにゅん!

「うわぁぁぁっ!?」

 これにはいかに女性経験の多いのるんでも悲鳴を上げた。

「や、やめへ…あんな…」

 快楽が克ち過ぎてのるんの呂律が怪しい。ペニスが乳房に擦られるたびに体の芯が恐怖にも似た悦楽に慄く。全てが搾り取られてしまうような恐れ。

 そう…それはのるんが初めて体感する性の恐怖だった。

「うふふ…うふふふ…」

 悲鳴を上げて懇願するのるんに対し、St.アンナうっすらと笑みを浮かべてパイズリを止めようとしない。

「うわぁっ!うひぃっ!うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 ぶびゅびゅびゅっびゅびゅびゅびゅびゅーーーーっ!

 のるんは耐え切れず、噴いた。

「ふふ…うふふふ…あはははははっ!」

 白目を剥いて精液を吹き出し続ける少年を嘲笑う。St.アンナの中で何かが変わろうとしていた。

 痴漢少年に射精を繰り返させることにより彼女を無理矢理自分の女にした彼に対して復讐をしているようだ。

 スペルマを顔に浴びながら胸に挟んだペニスを翻弄し続ける。

 更に強く揉み込めば、のるんは腰を浮かせて硬直したまま二度三度と精を噴き上げる。

 St.アンナの美貌は少年の濃厚な白濁に染まった。

「どうですか、のるんさん?」

「ヒッ…ヒッ…ゆるひて…あんな」

 だらしなく緩んだ口元からは唾液を拭き零し、眼はSt.アンナの媚態を追おうとするが、空ろに彷徨っている。

 何度も何度も半ば無理矢理に精液を抜き取られた所為か、肌は泡立ち、息遣いもしゃくるように体を揺する荒いものだった。

 もはや、超絶痴漢技を使う嬲道宗家もただの少年に戻ったかのように赦しを請い泣きじゃくるのみだ。

 それでも淫らな感情に支配されたSt.アンナは赦しはしない。

 少年の懇願も彼女の耳を擽る甘美な旋律でしかない。

 彼女は淫らに唇を歪めながらその豊満な胸に少年のペニスを挟み込み攪拌する。

「駄目です。のるんさん、貴方を邪悪な行いに誘う体内の毒液を全て抜き取るまでは、私…赦すことは出来ません。堪えて下さい。これは『神の試練』です!」

「そ、そんなぁ…うっ!」

 ぼびゅっ、ぶびゅぶびゅびゅびゅびゅびゅ…

「ひぃ…ひぃ…」

 ぶびゅびゅびゅびゅびゅびゅ…

「うわぁぁぁっ…」

 ぶびゅびゅびゅぅぅぅ…

 ………

 ……

 …

 数時間後、体内にこれほどの量があったのかという言うほど精を搾り取られたのるん少年は放心状態で自らが吐き出した精液に塗れた体を横たえていた。

「あ…あ…」

「うふふふ…」

 その少年の哀れを誘う姿にSt.アンナは普段見せる花のような微笑みではなく、淫蕩な娼婦の笑みを浮かべていた。

「毒は抜けまして?」

「はひ…はひ…」

「クスッ…そう…良かった」

 St.アンナはその生気までも抜かれた少年の様子に微かに鼻でせせら笑って満足そうに頷く。

 彼女は胸元に散った精液の残滓を修道衣のフードで無造作に拭った。それは今までの彼女では神に恐れを抱いてやらなかったであろう行為だ。

 彼女は少年に犯されたことにより体ばかりか心まで穢されてしまっていた。

「う、うう…くっそぉ…」

 彼を放って衣服を着け始めるSt.アンナを悔しげな瞳で見詰めるのるん。

 女にいいように弄ばれ搾り取られるなど童貞を奪われた時以来の屈辱だった。

 のるんは上着に忍ばせた小瓶を取り出す。

 正大製薬製『ぽりびたんでぇ』…それは何のことは無い。ただの栄養ドリンクだ。

 しかし、抜き取られた体内のチャクラを補充することは出来る。

 ゴキュッ、ゴキュン!

 その高い割りにしょぼいグローバル・スタンダードな内服液を一気に飲み干し、五行印を切る。

「淫法『丈夫倍加の術』!」

 瞬間、のるんの皮被りで薄桃色のペニスは一杯に勃起し、更に血管を脈打たせて赤黒く変色しながら膨張し出す。

 その年相応、短小とも言えた薄桃色の幼いペニスは倍どころか数倍にも膨らむ勢いで怒張していく。

 この技は体内をコントロールする8つの門の一つ『驚門』を開くことにより意識化で抑制された海綿体への血液注入量のリミッターを排除し、ペニスを拡大することにより女性に対して爆発的な破壊力を得る技である。

 江戸時代春画などに描かれた巨大なペニスを持つ歌麿たちはこの技の伝承者たちだったのだ。しかし、同じ古流性術とはいえこれは嬲技ではない。養父より教えられた技だった。

 この伝統の淫法に嬲技のアレンジを加えることで彼は何者にも屈せぬ不動の性闘士(ファイター)となるのだ。

 初戦は初心な相手を甘く見過ぎて惨敗したが、彼は物心付く前から大アムステルダム養成ギブスを着て厳しいスパルタ性教育を受け、(ピィーッ!)才で童貞を捨てたセクシャル・エリート。 

 彼は歌舞伎町、アムステルダムばかりか世界の歓楽街の“星”となるべく造られたのだ。

 それはただセックスの為の機械・人形ではない生ける芸術品にまで高められているのである。同じ相手に二度負けることは許されないのだ!

(とうちゃん!俺は犯るぜ!)

 彼の両目に全てを焼き尽くすような炎がメラメラと灯る。

 ゾクッ!

 その気迫を感じ取ったSt.アンナが振り返った時にはもう少年に背後から羽交い絞めにされていた。

「キャッ…ひ、ひどい。もう毒は抜けたって言ったのに…私を騙したんですね!」

「ひどいのはどっちだよ。やめてって言うのに何度も何度も搾り出して…今度は僕の番だよ」

 自信を取り戻した少年はそう言い、彼女に幾つかの点穴を打つ。

 トン、トンッ!

 それは突くというよりも叩く感じで何気なく行われたのだが、それだけでSt.アンナの体はカクンと糸の切れた人形のように脱力した。

「え?あ…」

 St.アンナは急に力が入らなくなり、自由の利かなくなった自分の体を信じられない様子で戸惑いを露にした。

 そんな彼女に対し、少年は古流淫法によって膨張したイチモツで一気にシスターの女陰を刺し貫く。 

 それはただ挿入するだけのものではない。のるんは養父に禁じられていた魔技を躊躇いも無く繰り出したのだ。

「喰らえ!大スパイラルボール1号!」

 ずぶぅぅぅん!

「あはぁぁぁん!」

 それは体が小さいことで突き込みが軽いと言う彼の弱点を補う為に作られた魔技…Gスポットをピンポイントで一気に貫く技だ!

 しかし、ただ突き込むだけの技ではない。亀頭部周辺に乱回転させたチャクラを圧縮し留めてそれを膣にぶつける。

 正確なペニス・コントロールが無ければペニスに裂傷を負ってしまう荒業であった。

 これにより女性はペニスへの攻撃をする暇もなく切り切り舞いで翻弄されてしまうのだ。

「あ…あ…」

 それは天然の漢殺しSt.アンナでさえも例外ではない。

 彼女は一突きで絶頂に達し、それが齎す法悦に表情を蕩けさせた。そして、この快楽は一度の絶頂では引かない。
 
「あんな…あんな…」

「あっ…あっ…」

 こうなれば、主導権はのるんのものだった。

 絶頂してなお襲い来る魔の快楽に意識を失うことも許されず、シスターは夢心地のまま幼い少年に犯され続ける。

「あっ…あはぁ…あっ、あっ、あっ、あっ、あああっ」

「あんな…あんなは…ぼくのこと…好き?」

「すきっ…好きぃ…私は貴方を愛して…ああっ」

 犯されながら、St.アンナは少年の望むまま受け答えをする。

 それは彼女の本当の気持ち…その筈だ。

 何かに誘われるかのように自分の気持ちを素直に口に出せる。だが、それは本当に彼女の気持ちなのだろうか?

 それすらも彼女には分からなくなってきている。彼女の思考はセックスの魔境に飲み込まれて消えた。

「良かった」

 乗るんはシスターの言葉を偽らざるものと感じて安堵の溜息を吐くと共に言い知れぬ幸福感に包まれていた。

 彼女を感じさせたい。彼女をもっと自分の手の中で身近に感じたいと思う。

 『自らの意思・相手の意思なくして、奥義なし…まず人を物と思わず惚れさせ、惚れてみる事だ』と師匠は言った。

 今その意味を実感出来る。

(爺ちゃん…)

 彼はSt.アンナという最高の女性に惚れ、惚れさせる事で(やめるとか言ってたくせに)真の嬲師となることが出来たのだ。

 感慨に耽ったその時…

「あれ?」

 シスターの首筋を撫でていたのるんの指に唐突に微かな違和感が感じられた。

 極小の針が…刺さっているのだ。

 これは嬲技『秘蕩穴』を打った際、その後のドタバタで取り忘れた針…

(この孔は…確か…)

 発情、淫蕩、従属…

 その効能を思い浮かべるが、麗しの美尼の秘肉に蕩けた頭では答えを導き出す事すら困難だ。その内…面倒になった。

(もうどうでもいいや…)

 少年は針を無造作に抜き去る。既にSt.アンナは体ばかりか脳髄までもが蕩け切り、それによって何らかの効果が齎されていたとしても同じことだった。

 ここに至っては少年の頭にあるのは己が快楽を消化することだけだ。彼は発情して雄犬のように激しく腰を振り、シスターの豊かな臀部に腰を叩き付けた。教会に淫らな水音と肉のぶつかり合う音が高く響き渡る。

 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱぁん!

「うあっ…あんな…あんなぁ…」  

「のるん…さん、のるんさぁん!わたし…わたしぃ…」

 快楽の虜になった彼女は今までの訳も分からず強要された絶頂ではない、初めての自らの意志で迎える絶頂に惑い、恐れを抱いて泣きじゃくっていた。

「イク時はハッキリ僕にイクって言うんだよ、アンナ…」

「“いく”?イクって…どこへ…」

 鈍る思考の中、少年の言葉だけがはっきりと理解出来る。

「天国さ…」

「ああ…天へ…ああぁ…イク…のるんさん、私と一緒にイッて…」

 彼女は絶頂の瞬間に天を仰いだ先には彼女が崇拝する十字架に打ちつけられた神の偶像があった。だが、それは彼女がいつも崇める像とは似て非なるものだ。

 別の何かを崇拝させようと姑息に偽装してある。

 額には特殊な塗料で塗られた五方星が鈍く光り、流れる蓬髪に逆らい、頭に巻かれた棘に隠されるように山羊の角が生えている。

 背には薄く蝙蝠の羽の彫刻が施されていて、布で覆われた股間の中にまで何故か精巧に作られており、其処には絡み合った二匹の蛇の男根が垂れ下がっていた。

「イクよ、アンナ!い、いくぅっ…」

 どぴゅ、どぷ、どぷ、とぷ、とぷ…

「アッ、アアアァァァッ………ン」

 St.アンナは異質な神像同様、御使いに似て非なる天才嬲師の少年の手により天上の頂に導かれた。



(終)

※北綾瀬さんに捧ぐ。大分時間が掛かりましたし、出来上がりがあまりにアレですが、『超絶痴漢技で年上の女性をメロメロにする少年(確かそうだったと…)』とのご要望にお応えしました。


投稿小説の目次へ