冥皇計画


第2話「宿屋夜話」



 三人は馬上で夕食を摂り、5時間ほど東に向かって黙々と夜の街道を進んだ、人通りはなく、退屈でリシュアが眠くなってきた頃、ニウスという町に着いた。

ニウスは石造りの外壁を備えた、シェレイド教団領の小さな城塞都市で、夜半近い時間だったが、門衛の神官戦士達はあっさり中にいれてくれた。どうやら門衛達は、エメリアを知っているようだった。
 エメリアは門衛達に丁寧な礼を言い深々と頭をさげた、リシュア達も頭をさげた。5人の神官戦士達は恐縮して武器を後ろ手に隠すように持ち替え、片膝をついてエメリアに騎士の礼をした。エメリアは微笑みを浮かべながら、優雅な仕草でひとりひとりの手をとって、立たせ、言葉をかけていた。リシュアの目にも神官戦士達が感激に身を震わせているているのが解った。彼らも自分と同じようにエメリアを心の底から尊敬し、崇拝しているようだ。そのうち隊長らしい大柄な女性が小走りでやって来た。

 金襴の鎧といっていいような、黄金色に輝く豪華な騎士鎧を身につけた隊長らしい女性は、エメリアの前にくると、神官戦士達と同じように片膝をついて騎士の礼をした。
エメリアはやはり同じように黄金色の騎士を立たせると、親しげに言葉をかけている。
その女騎士はリリアと言う名前らしかった。
年齢はエメリアと師匠の間くらいに見え、輝くようなショートヘアの金髪の持ち主で、整いすぎた気品のある美貌と、鷹のような鋭い眼光のせいか、冷たい印象をうける。
 しかしエメリアを見る時の目は、なにか執拗で熱を帯びていて、単なる友情や敬慕とは違っているように見えた。
彼女達の話が魔法使いの師弟に及ぶと、リリアは退屈そうに煙管をふかしているリディアに深々と一礼し、それからリシュアを睨み付けると

「おまえがリシュアか?エメリア様が私淑する人物と訊いていたが、わたしにはお前がタダの駆け出し魔法使いにしかみえぬ、ただの軽輩者ではないのか?。」

リリアは頭ふたつほど背の低いリシュアを、見下ろして嘲笑した。
リシュアは何故この女騎士が自分に悪意を向けるのかよくわからず、ポカンとしていると、リディアとエメリアの表情が厳しくなり、やおらエメリアがリリアの前に進み出ると

「私の身も心捧げた大切なお方に、無礼ではありませんか?リリア!」

エメリアはリシュアが今まで見たこともないような、怒りの形相でリリアを睨み付けながら叫んだ。しかしリリアは嘲笑をやめなかった、激怒したエメリアは腰に帯びた長剣の柄に手をかけ、

「リシュア様を侮辱し続けるのなら、私が相手になります!さぁリープシュタイナー卿!その腰の大剣は飾りですか?お抜きなさい!!」

そう言い放ったエメリア見て、リリアは悲しみと自嘲の入り交じった笑みを漏らし、腰の大剣を抜いた、するとエメリアも抜剣し、目にも留まらぬスピードで間合いを詰めると、リリアの大剣をその手から叩き落とし、その剣の切っ先を首に突きつけた。リリアは驚愕に目を大きく見開いていたが、やがてあきらめたようなため息をついて目を瞑った。そしてエメリアはリリアの首を斬ろうと、剣を一度引いた。リシュアは思わず。

「やめて!エメリア!」

と叫けび、二人の間に割って入ろうとした。それを見たエメリアは、ハッと我に返り、その場にへなへなと座りこんで、

「申し訳ありません・・・貴男を侮辱されてついカッとなってしまいました・・・。」

エメリアは何度もリシュアに謝り、呆然自失状態のリリアは3人の神官戦士達が引きずるようにして、その場から連れ出されていった。残った二人の神官戦士は自分達の隊長が敗れたのにも拘わらず、エメリアを賞賛し隊長の非礼を丁寧に詫びてくれた。

3人はやっとニウス唯一の宿屋にたどり着くことができた、
普通は夜中にいけば当然いれてもらえないはずだったが、エメリアを宿屋の主人が知っており、快く入れてくれた。
宿屋の主人は、エメリアのことを聖女様と呼び、いささかオーバーな恐縮ぶりで一部屋しか空いてないことを告げたが、2人の女性があっさり承知したので、リシュアは異論を挟む余地もなく、同じ部屋に泊まることになってしまった。
 リシュアの頭の中では先刻のエメリアの発言、「身も心も捧げた」がぐるぐると回っており、発言どころではなかったのだが。


リシュア達が案内された2Fの部屋は、テーブルが一つと椅子が二脚にベットが二つだけの質素な部屋だった。
明かりも精霊光のランプが枕側の壁に一つあるだけで薄暗い。
三人は旅装を解いて、寝間着に着替えた。彼女達はリシュアが目の前にいるのにもかまわずに着替え出したので、リシュアは慌てて廊下にでて着替えた。恐る恐る部屋にもどるとふたりはそれぞれのベットに座っていて、彼がどうしたものかと躊躇していると、リディアが手招きし、彼女のとなりに座らされた。

「これからちょっと長い話をするけど、リシュアは眠くないかな?」

師匠は体が触れ合いそうなくらい近づいてきて、小首をかしげながら訊いてくる、薄暗い部屋の中で、いつもの師匠とは違う妖艶な美しさに、見とれてしまった。
彼女は薄手の貫頭衣のような水色の寝間着で、乳首と黒い下着が透けていて、毎日のように裸を見ていたはずなのに、リシュアの胸が高鳴ってしまう。
彼が動揺をかくしつつ小さく頷くと、エメリアが

「これからの私達の旅に、とても重要なお話ですので、最後まで聞いてくださいね。」

彼女はそう言うと立ち上がり、リシュアの足下の床に正座した。エメリアはノースリーブで、丈が太股の半ばまでしかない前あわせの白い寝間着を着ていて、むっちりとした白くやわらかそうな太股と、想像よりずっと豊かだった胸の谷間がのぞいている。
15歳の少年は二人の艶姿に、股間があつくなったが、二人の真剣な様子に居住まいを正して、それを見られまいとした、幸い気づかれていないようだ。

「どこから話せばいいかな〜。」

う〜んとうなりながら、リディアは腕をくんだ。彼女大きな胸がたゆんと揺れた。

「じゃあ、この本読んだことありますか?」

エメリアは寝間着の裾を押さえて立ち上がると、自分の荷物の中から一冊の本を取りだし、リシュアに手渡すと、さっきと同じように座った。
彼が本の題名をみると「12英雄記」と書いてあった。

「300年位前の3皇子の戦乱を書いた本だよね?子供の頃よく読んだから内容はよくしってるけど、もしかして去年現れた魔皇ラグナと、この旅がなんか関係あるの?」

もしかして、魔皇と戦いにいくなんて言い出すんじゃないかと、内心冷や汗をかきながらリシュアは二人の言葉を待った。

「では、冥皇リシアについてはご存知ですか?」

エメリアはなにか興奮気味で、身をのりだして尋ねてくる。
「えと、自分と名前が似てて、ラグナの弟で、たしか英雄達と和解しようとして、妃のエキナって人を使者に立てたけど、妃がディー・アメット王国だったかの国王を殺そうとして逆に殺されてしまって、復讐の鬼になってしまった人でしたっけ?」

エメリアが正解とばかりに笑顔でコクコク頷いて、さらに彼女が

「そのあとどうなったか、覚えていらっしゃいますか?」

リディアも体をくっけるように身をのりだして、リシュアの言葉を待っている。

「たしか〜ラグナが死闘のあと、バトラ王子に倒されて、妹の死界の魔女もバトラ王子の妹に倒されて〜最後に冥皇が自分の城で英雄を迎え撃ったんだけど、バトラ王子に一騎打ちで敗れて死んじゃうんだっけ?けっこう簡単にあっさり負けるんだよね?たしか。」

ふたりは何故か妙に熱くなっていて、エメリアが異常な迫力で尋ねてくる。

「冥王の最期を詳しくはなせますか!?」

リシュアは二人の迫力に、少しづつベットの隅に追いやられながらも、記憶の糸をたぐっりだした。あやふやながらも物語の内容を思い出す。

「えと、冥王には正妃のエキナ以外に12人の絶世の美女の愛妾がいて、みんな元お姫様とかすごい女の人で、たしかリシアを守るために、次々と死んじゃうんだよね?そのあと冥王もバトラ王子に負けて、首斬られちゃうんだよね?たしか。」

「・・・愛・・妾・・・・・・」

エメリアは何故か赤面すると、なんだか落ち着かない様子で、胸の前で手をあわせながら

「その・・愛妾ではありません!部下ですね・・・ハイ!。それと冥皇が倒された時点では5人生きていましたね・・。最終的に全滅もしてないですし・・・。」

リディアがあきれ顔でリシュアから本をひったくると、パラパラとめくって、本を開いたまま、無言でリシュアの胸元におしつけた。師匠はなんだか目がすわってて怖い。

「ここから、読んで。」

リディアはそれだけ言うと、イライラしてるみたいで、煙管をふかしだした。リシュアは急いで本を読み進める。エメリアもそわそわしながら、リシュアが本を読み進むのを待っている。
10分程かかって、なんとか最期まで読み終えた。

「なんか、可哀想な話だね・・・。冥皇は本当は戦いたくなかったんじゃないかな?きっと愛・・じゃなくって、部下の女の人達だけでも助けたかったんだね。多分、女の人達も一緒に逃げてほしかったみたいだし・・・・。」
「では、リシュア様ならどうしました?。」

エメリアとリディアが同時に身をのりだして聞いてくる。何故か師匠まで様付けだ。

「ボクなら、きっと・・・冥皇を同じことしたと思う・・。だって自分はもう逃げられないのは解っているから・・。自分を単なる主君以上に愛してくれている、この女の人達がせめて生き残ってくれたらって思う・・。自分ではもう不幸しか与えられないけど、生きてさえいれば彼女達にも、これから幸せな人生があるかもしれないし・・・。」
「そうだったんですか・・・・・。」

エメリアの美しい瞳から涙がこぼれる、彼女はそれを指でぬぐうと

「本当に嬉しいです・・・でもあの時、私は貴男を守る為なら、死んでしまってもいいと思っていました。一生分の幸せを頂いていましたから・・・未練はなかったんです。」
「わたしもあの時は同じだったわ、貴男に見放されたと思って呆然としたけど、貴男が討ち取られた瞬間に、ああ、私はこんなにも貴男を愛してたんだって思ったわ・・・その瞬間に怒りと悲しみで何もわからなくなったの・・・。」

リディアはそう言うとリシュアを抱きしめた、思いがけない師匠の涙がリシュアの首筋を濡らす。
彼女達の突然の奇妙な愛の告白に、リシュアは混乱していた。物語の感想を話していただけなのに、彼女達は自分たちのことのように話し、涙まで流している。

「二人ともどうしちゃったの???」

今日の二人はとても不可解だった、リディアの自分に対する熱っぽい視線、エメリアの身も心も発言や普段あんなに温厚だった彼女の突然の怒りと、リリアという友人らしい女騎士を躊躇なく殺そうとしたこと。そしてこの話・・・・。
リシュアはただ狼狽するしかなかった。彼女達の説明を待つしかなかったからだ。
いつのまにか、エメリアまでリシュアの隣に座っていて、腕をからめてきた。彼女のやわらかな双丘がリシュアの右腕に押しつけられてくる 。
リシュアを抱きしめていたリヴィアが顔をあげると、真摯な眼差しで告げる。

「信じて頂けるかどうか解りませんが、リシュア様は冥皇様の生まれ変わりなのです。わたしやエメリアもそうですが、リシュア様は冥皇の宝杖というアーティファクトの力で転生されたのです。」

あまりに荒唐無稽な話に現実味が感じられず驚きもなかったが、にわかには信じられない話だった、彼女達が嘘をつくはずがないという確信もあったのだが。

「信じてくださいますか?私たちはあの本のお話に出てくる、最期にのこった4人のうちの二人なんです・・・。」

エメリアが後を続ける。

「ただ、宝杖は王子との戦いで先端の宝珠が破損しまいました。そのせいで私たちもバラバラに転生してしまいました。それに転生したリシュア様をみつけるのに、5年もかかってしまったのです。記憶がお戻りになられないのも、そのせいではないかと思います。わたしもリディアを見つけるのでさえ、100年近くかかっているのです。」

いくつかの疑問が沸いたので、エメリア達に訊いてみる。

「その転生した人たちってどのくらいいるの?どうしてボクが生まれ変わりだと解ったの?その杖はいまどこにあるの?。」

リディアがその質問に答えてくれた。

「最低で3人です。何故正確な数が解らないのかと言いますと、冥皇様しか、杖の能力を知らなかったのと、部下の誰と誰に転生の術を施したのか、私たちが知らないからなんです。それに何故冥皇様だとわかったか、という質問なんですが、まず見た目がそっくりだったというのと、その・・紋章が疼いたんです。」

リディアは何故か赤面して目をそらした。

「紋章?」

リディアは背を向けると腰まである灰色の髪をかき上げ、うなじのあたりを見せた。そこには意匠化された黒い三日月と白い十字の入れ墨があった。

「これが冥皇様の紋章です。杖の力で転生した者にはすべてこれがあるんです。他の皇子様達の武器にも同じ力があって、魔皇様は黒い三日月黒い太陽、姉君は赤い三日月に黒い十字です。ちなみにエメリアは右胸に紋章があります。それと杖の在処の質問でしたね、それは今、私たちの仲間に預けてありますよ。」
「仲間?」
「実はまだ、転生した仲間は私たちを含めて3人しか見つかっていないんです。杖を預けている、もう一人の仲間の名前はアンジェラといいます。イズドマルクという街で私たちを待ってるはずなんです。」

リシュアはなんとなく不安と恐怖を感じた、そして告げる

「もしボクがその冥皇だとして、その杖を手に入れたらどうなっちゃうの?ボクがボクでなくなっちゃうの?」

それを聞いた二人はしばらく沈黙した。長い沈黙の後、エメリアが思い詰めたような表情で

「私たちにもわからないのです・・・ただ・・これだけは断言できます。今のリシュア様では簡単に殺されてしまいます・・・。兄君のラグナ様が姉君とリシュア様を抹殺するために、配下の闇エルフ達を使って探しています。リシュア様は下手な上級魔導師よりも力がありますが、討ち手の中に伝説の暗殺者レッドアイもいるのです・・。」
「どうして、ラグナはボクをねらうの?」
「それは・・・・」

エメリアが口ごもると、リディアが答えてくれた。

「300年前の戦いの時、姉君とリシュア様はラグナ様に敵対こそしなかったですが、積極的には協力しなかったからなんです、その理由はお二人はヒト族との平和と共存を望んでいましたけど、ラグナ様だけは祖国エルギシアを滅ぼした七王国への、完全な復讐を望んでいたからなんです。今回の復活で、魔皇は殲滅するはずのヒト族国家の一部と同盟まで結ぶという作戦に出ています、これはお二人の力をアテにしてないという証左です。つまり、七王国に対する復讐を邪魔する敵だと認識しているのです。」

リディアは小さなため息をひとつつくと

「残念ながら、私たち二人ではリシュア様をお守りする自信がないんです。杖を手に入れることによって、リシュア様がお力を取り戻してくだされば、刺客に簡単にやられることもないですし、多分、転生したお味方や、姉君の居場所もわかるかと思いますけど・・・・・。」
それを聞いたリシュアは、先刻からずっと思っていた疑問をとうとう口にした。

「どうして二人はそこまでしてくれるの?いくら生まれ変わったからと言っても、今のボクは冥皇とは全然別人なんだよ?杖を手に入れたからといって、記憶や力がもどるとは限らないし・・・。」

二人は同時になにか言おうとしたが、リディアがエメリアに先を譲った。
エメリアは先程までのかしこまったような口調ではなく、リシュアのよく知っている優しい女神官の言葉で語りだした。

「私たちがリシュアちゃんを探していた話は、さっきしましたよね?冥王様だと確認したのはリディアなんですけど、実際に連れてきたのは私だったんですよ。でも当時は、私は記憶がほとんどもどっていなくって・・今でも完全ではないですが。」

彼女はそこで一旦言葉を切ると、恍惚としたような表情をうかべながら呟いた。

「でも・・・初めて会った時の5歳のリシュアちゃん・・・ものすっごく可愛くてね・・・こんな可愛い男の子がこの世にいるのかと思ったわ・・今でもすっごく可愛いけど・・できればさらって逃げて、どこかの人里はなれた家に監禁して、自分だけ見てくれる男の子に育てて、独り占めしようかとおもっちゃたりして・・・・・♪。」

赤面し体をよじらせながらの聖女の不穏当な発言に、リシュアは驚きで目を丸くしていたが、師匠が渋い顔をしてボソリと

「とうとう本性を現したな、少年大好きエセ聖女め。見ろ、リシュアがあきれてるぞ、ついでに悪質な洗脳と監禁、誘拐未遂犯だったのか。」

エメリアはハッと我に返り、小さな咳払いをすると、俯き加減で頬を染め恥じらいながら

「でもね、同時にこうも思ったの。私、この子が大きくなったら・・・絶対お嫁さんになりたいなって・・・ね。・・ダメですか・・・・・?。」

憧れの女神官は哀願するような眼差しでリシュアを見た。リシュアは思わぬ逆プロポーズに嬉しすぎて、ニヤけそうになるのを必死でこらえながら、答えた

「すっごく・・・嬉しいです・・・雲の上のヒトだと思ってたから・・・エメリアがよければ、ボクのお嫁さんになってほしい・・・。」

悲鳴とも歓喜の声ともとれるような声をあげて、満面の笑みを浮かべたエメリアが抱きついてきた。胸元ははだけ、ピンク色の小振りな乳首まで見えている、すると憮然としたリディアが、エメリアをリシュアから引き剥がし、隣のベットに放り投げた。エメリアはベットの反対側に転がりおちて、頭をしたたかに打ったらしく頭をかかえて唸っている。
リディアは、唖然としている愛弟子の膝の上に座ると、体を密着させてきた、そして

「わたしもお嫁さんにして・・♪」

そう言い放つと、ついばむように何度もリシュアにキスをしてきた。
彼女は一旦、唇を離すと、やさしく耳元で囁いた

「私たちはね、冥皇の生まれ変わりだから、昔好きだった人だからって、それだけでリシュアが好きって訳ではないのよ?たしかに最初はそうだったかもしれない・・。でもね、今は絶対に違うって断言できるわ。リディアとエメリアというタダの二人の女がいて、ある時に二人の愛する人リシュアが、悲しすぎる運命と立ち向かわなければならないって知った。だから・・・私たちも一緒に戦うことにしたの、だから私も・・・・ね?。」

いつも気さくで大らかで、姉のように慕っていた尊敬すべき師匠であるリディアの本当の言葉を聞いて、リシュアはこの女魔導師を心の底から愛しいと思った。

「リディア・・・・」

リシュアは初めて、師匠を呼び捨てにした。

「ボクのお嫁さんになってくれる?」

リディアは目を潤ませながら微笑むと

「はい・・・。」

とだけ言った。



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