【イシュティ公爵記】
【第2編、シェイドアルカンの星追い狼編】【第7章】
【王立士官学校の前夜1】
「シェイドアルカン魔法刀剣大会」
ヒサイエが倒せるものはやってこい!
不満があるヤツは実力を見せてみろ!
とあおって見せた結果。各地の領主軍。国中の警備隊や騎士団が参加を表明した。
シェイドでは流れの傭兵や実力を見せ付けたいてあいが参加することになった。
国内向けだったので公示から1ヶ月で開催となったが間に合う諸国で参加する騎士達もいた。
シェイドアルカン城門前は広い石畳の広場となっている。刀剣大会を行なう習慣がなかったので臨時の会場となった。
「これより、個人戦!個人戦を開始する!!我と思わんものは名乗りでよ!」
触れが走り回り登録を呼びかける。
わあわあ、と歓声が上がりとうとう大会が始まった。
「初戦!ジルマン重装騎士団騎士ハイデン!対!宮廷魔術師団ソリ師!!
なお、騎士ハイデンは魔法攻撃でヒザを付けば負け、ソリ師は純粋な魔法使いとのこと武器が届く範囲に近づかれたら負けとする。また、魔法を場外に飛ばさないように!
では、はじめ!!」
おお!!観客の興奮が声に出る。
魔法弾の火玉が騎士を襲う、一般人がめったに見る事のない魔法だ。
騎士はそれに耐えて突入する。装備に耐火魔法をかけているのか。
次に魔法使いが光る矢を表すと、は!っとばかり気合を込めて打ち出した。
狙いは正確に騎士に当たり、騎士はヒザをついた。
「勝者!宮廷魔術師団ソリ師!」
腕に赤十字のしるしを巻いたハーシェ達看護班が駆けつけ騎士に処置を施す、ヒーリングが必要なら行なうが習った王宮措置で十分なら其処で止めておく。
その手際を負傷者の同僚や本人がみて感嘆する。手際もさることながらその美しさに・・・。
手当てされたものは相手に好意を持ってしまうものだが誰もが会場をかける看護者達の美しさに心奪われ、手際に感嘆した。
何組か試合が進み、驚愕の参加者が登場する。
「次ぎ!エリスリエイドの魔法剣士リューマ!対!護衛メイドのチカ!!
なお、チカは服に武器が触ったら負けとする。」
「はーい!」
「ちょちょっとまてよ!!」
リューマは遊蕩の騎士であったがこんな存在を知らない。シェイドの住人もチカを見知っているものがいても剣の腕を見た事がなかった。紺色メイド服、黒いつり形ロングソックスは同じだが。編み上げブーツをはいていることがちょっと違うくらいだ。
「やらんのか?」
「遊びでやってるんじゃねぇ。」
「見かけでしか相手の実力を測らんヤツにわかるわけないか。服にちょっとあたればいいんだ。先に進めばもっと強そうなヤツにあたるぞ。」
ヒサイエのとりなしにやっと剣を構える。
チカは宮廷風の女性礼をする。
「始め!!」
カンカンカン・・・・・。
リョーマの手から剣が叩き落とされていた。
「勝者!護衛メイドのチカ!!」
うそだろ、それ。リョーマってちょっとなが知れてたんじゃないか?偽者か?
「おい、次ぎがあるんだ。どいてくれないか?」
ヒサイエが声を掛けても呆然としている。
近くの兵にどけさせてどんどん先に進めていった。
「次ぎ!ダイソン公爵騎士団・・!対!護衛メイドのアニス!」
・ ・・・カンカン・・・。
「次ぎ!王城衛兵隊・・・!対!護衛メイドのリリア!」
・ ・・・・カンカン・・・。
相手が護衛メイドの場合、打ち合うことなく終わる。元から尚武の国とは言いがたかったが状況を信じることができなかった。
途中、チカがリリアにわざと負けたが決勝はリリアとアニスだった。リリアの早い剣とアニスの重い剣が交わるが短期の一対一はリリアに軍配があがった。
うおおおおおおおおおおおお!
個人戦は類のない結果になった。見ていた王宮の人間も信じられない様子だ。観客の中の婦女子が凛とした強さにため息がでたようだ。
「護衛メイドと手合わせしたいものは名乗りでよ!!
ヒサイエは言い放つと信じることができないものが名乗り出る。
・ ・・・カンカン・・・・
・ ・・・カンカン・・・・
・ ・・・カンカン・・・・
武器が落ちる音が響いた。数合競えるものも居たが必ず勝者は護衛メイドだった。アニスはともかくリリアは成人してから1年がたったぐらいで魔法がかったように感じた。
魔法装備もありなのだから別に違反ではないが護衛メイドと呼ばれた者達の強さは身にしみさせてしまった。
超絶の強さだ。おそらく剣聖や剣豪といった称号を持つ同様の人間でないと対抗不可能だ。
もちろんまだ、小娘に負けたことを信じようとしないものもいたが今は面と向かってそんなことを口にできるものはいなかった。。
「個人戦は終わる!!明日は団体戦を行なう!!皆、鋭気を養え!」
最後に国王が宣言した。納得はいかないが口はつぐむ、戦った者達はそうだった。素直に強かったと言える人間は少なかった。
一方、護衛メイドとハーシェ達看護隊は貴族の子女や街の女の子に囲まれていた。
集団として、清く正しく美しい。何より例のエンブレムのメイド服が制服でどうやったらそれを着れるか、なれるのか最大の関心となっていた。
ヒサイエ将軍の女官服と皆が知るまで時間はかからなかった。
街の有力者や貴族から譲ってくれ。または新たに女官に推薦してくる人間があとをたたなくなってしまった。
【王立士官学校の前夜2】
「これより集団戦を開始する。双方1個分隊6人一組とする。
武器は好きなものを選べ!ただし先や刃を潰した武器に限る!戦術はそのつもりで選択せよ!長い武器で先に叩いても勝敗は決まらない!
尻を付いたもの、転んだものは戦死と判断する。組討を認める。
最後の兵が倒されたら終わりとする。会場の関係で弓は認めない!
誰もが転んだと見られるものが速やかに離脱せず戦闘に参加すればその組は敗北とみなす。
小隊兵員の交換は認めるが小隊長の交代は認めない。試合開始には小隊長がいることが条件だ。
国王陛下が勝敗を見てくださる!各自よろしいか!!」
おおおおおおお!!これが本番とばかりに国内の兵団が騒ぎ出す。あちこちでエイエイと統制が取れた掛け声が行なわれた。騎馬戦、弓戦以外は何でも行なわれることになった。
初戦が開始されると重装備の騎士団は面目躍如といった調子でハデな勝ち方をする。
「次ぎ!フロストブンカー傭兵団アニス隊!対!ジルマン重装騎士団パウルス隊!」
おお!!
注目の一戦だった。さすがにアニスはズボンで騎士服だ。
フロストブンカー傭兵団は昆を持っていた。重装騎士より軽い装備だ。騎士団の方は重く長い槍を主装備に乱戦になれば剣を抜くようだった。
「はじめ!!」
先端が開かれる。重装備の騎士は集団の槍襖を形成する。フロストブンカーが逃げる。また向けると繰り返し。フロストブンカーが二つに分かれ3対3になった。槍衾が横より縦の方が長くなった。フロストブンカー兵が飛び出して槍を打ち相手の一人を吹き飛ばす。槍衾形成できない不利を悟った小隊長が槍を捨て剣に持ち変えたがもはやバランスは一気に崩れて一人一人と昆に打ち飛ばされた。
「勝者!フロストブンカー傭兵団、アニス隊!」
おお!!!
昨日と違い今度は一般募集したはずの兵の質を見れた。
槍と剣の部隊にも昆、組討で迎え撃ち、フロストブンカーは模擬戦慣れしていたのだ。
演習でやっていない範囲での敵は現れなかった。
「国王陛下!以上でございます。」
勝ち抜き戦行なうには数がいたので明らかに戦技が劣る部隊はどんどんハネた。王の近くで多くの将軍や騎士団長などが評価したのだ。
1位を決めず。数組に栄誉を与えることになっていた。
フロストブンカーはもちろんそのなかに入る事になった。一人が強いではなく集団が強いという評価が必要なのだ。5組の分隊が国王陛下に栄誉をたたえられ、大いなる腕試しは終わったのだった。
「めぼしい人間はいたか?」
アニスやハーシェ達は参加者で士官学校教官候補を探していた。いない場合はすべてフロストブンカーで行なうつもりだった。
「代替の利かない人材はいなかったです。ウチの兵を昇進させたほうがよい気がします。」
リリアが言った。
「重装備の騎士団とたまに互い戦をやる必要があるかもしれません。ウチにはまだアレはありませんから。」
アニスがいう。特殊な奴らは特殊な勢いがあるんだろう。ヒサイエは了解した。
確かに騎士の家の出も多くいる。教本は作って彼らで実地にやっているからそうすることになった。
王立士官学校はヒサイエの指導で始められることとなった。不満勢力も様子を見る事になったようだ。
数日後、登城したヒサイエに国王から王立士官学校を正式に始めるように命が下された。
そしていささか考えが及ばなかったが、彼はもう一つ別の学校運営を望まれることになってしまったのだった。
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