ドレアム戦記

第二編 朱青風雲編 第3話

「ちっくしょ〜。何で入れないんだぁ!」
 シャオンは壁を蹴飛ばした。壁が乾いた音を立てる。そして、壁から離れて近くの倒木に腰を降ろし、両手で顎を包み込むように支える。その表情は冴えない。
「んとにもぅ・・・」
 迷いの森から脱出したシャオンは、たまたま火の神殿が近くにあると知り、神殿の宝物を狙って神殿に忍び込もうと考えた。過去に神殿の街には何度か入ったこともあったが、街から忍び込む方法は考えられるものを頭でシミュレーションしてことごとく玉砕、それ以上はちょっと考えられなかったため、街とは関係の無い森に面した東側ならと、別のアプローチを試みることにしたのだった。
 しかし、シャオンの予想に反して、神殿には全く忍び込めるような手掛かり一つなかった。盗賊として培った技術と勘を用い、何とか出入口らしき場所までは見つけたのだが、その扉は内側からしか開かないらしく、外からいろいろと試みても全く鳴かず飛ばすという有様である。
 そんなわけで、ちょっと拗ねながら神殿の外壁を眺めているというのが今のシャオンの状態だった。
「まったく。外から入れなかったらいったいどうやって入るのよー!」
 目の前に広がる神殿の壁を見ていると、何故か閉じ込められているような錯覚を起こし、シャオンはその度に頭を振ってぶつぶつと呟いていた。
「親父が手を出すなって言った意味がわかったよ・・・。狙った獲物を前にして、建物の中にさえ入れないなんて、盗賊のプライドずたずたになっちゃう。う〜・・・」
 何度目かのため息をつくが、中に入るための知恵は浮かんでこなかった。というか、思いついたことはもうやり尽した感がある。
 そんなシャオンが愚痴を聞いて欲しくてフレイアを召喚したのは単なる気まぐれだった。
「シャオン。用も無いのに呼び出すのは・・・」
「ねえ〜、聞いてよ〜、フレイア〜!」
 結局迷惑そうな顔をしつつもシャオンの愚痴に付き合わされるフレイアだった。しかし、シャオンのこの行為が瓢箪から駒を得ることになるのである。
 ひととおりぶちまけて落ち着いたのか、シャオンは再び神殿の壁とにらめっこを始めた。そのとき、フレイアがちょっと見てくると告げて神殿の壁伝いにその身を躍らせた。暫くは壁の中ほどを調べていたようだが、何かを見つけたらしく停止し、次の瞬間には壁に吸い込まれるように消えていった。
「フレイア!」
 シャオンは急にいなくなったフレイアを案じていた。召喚術が消えたわけではない。シャオンの目の前から消えたのである。倒木から立ち上がり、神殿の壁に近づく。ちょうどフレイアの消えた場所が見える場所で、目を皿のようにして壁を見つめる。フレイアがどこに消えたのかを探し出さなければならないと心に決めていた。
 その瞬間、神殿の壁にぽっかりと穴が開いた。シャオンがどうやっても開ける方法を見出せなかった出入口の扉が。
「シャオン。中に入れますよ・・・」
 フレイアが手招きしていた。

「中からしか開かないの?」
 シャオンは扉をどうやって開けたのかフレイアに聞いていた。壁に開けられていた小さな通気孔から中に入ったフレイアが扉に触れたら簡単に開いたのだと言う。
「ええ。そのようです。私が通った通気孔は虫くらいの生物しか通れないでしょうから、私のような精霊を使わないと中には入れないのでしょうね」
「そっか。でも御手柄♪、フレイア。ありがとう」
 フレイアは少しだけ嬉しそうな顔をすると、この先を偵察してくると言って廊下を先に進んでいった。
 初めて入った神殿の中は、思ったよりも古臭くなく、掃除も綺麗に行き届いているようだった。廊下の床は溶岩から作られたらしい艶のある漆黒で、壁の薄茶色と相まって荘厳な趣を醸し出していた。途中開いている部屋があったので入ってみたが、部屋の内装は壁が薄桃色、天井は乳白色という明るめの色調で統一されているようだ。
 シャオンは各部屋を巡りながら盗賊の視点で部屋を見回し、レアアイテムや特別高価なものがないか探し回っていた。折角神殿に忍び込んだのだ。月並みな物ではなく、秘宝クラスのものと心に決めていた。
 そうして探し回るうちに、少し大きめの部屋に入り込んだ。その部屋の中央には女神の像らしきものが祭壇の奥に安置され、高級そうな緋色の絨毯がその前に敷かれていた。シャオンは知らなかったが、この部屋が洗礼の間なのである。
「お、お宝はっけ〜ん!」
 思わず声に出してしまった。それほどまでに嬉しいお宝が目の前の祭壇の中央に飾られていたのである。それは、真紅に輝く宝玉、大きさから言うと、シャオンの左手の台座の中央にぴったりと収まりそうである。
<やった!これ、もしかして炎の宝玉じゃないかな♪>
 予想はしていたが、実際に目の当たりにすると喜びは倍増した。6つの火の珠が収まった台座の核になる炎の宝玉、それはシャオンを魅了して余りある輝きを放っていた。
 シャオンは慎重に行動しながら宝玉の周りにトラップがあるかどうかを確認した。音を立てないように祭壇に近づき、祭壇の周囲や壇上を調べる。だが、思っていたようなトラップは配置されていないようだった。
<なんか、拍子抜けね・・・、まぁ、神殿に入ること自体が出来ないからかもね・・・>
 そう考えながら、左手の台座をさすった。フレイアは今その中に戻っている。シャオンは生唾を飲み込むと、宝玉に手を伸ばし、掴もうとした。しかし、手は宝玉を掴めずに、通り抜けた。
<へ?!>
 シャオンはもう一度手を伸ばす。しかし、意に反して宝玉はシャオンの指を通り抜けてしまう。どうやら宝玉と見えたそれは、精巧に造られた3次元立体画像のようだった。
「くうぅ・・・」
 シャオンは悔しさに思わず唸った。だが、少し冷静になって考えると、どこかにきっと本体があると思い直し、もう一度周りを調べ始めた。
<そうだ、フレイアにも手伝ってもらおう!>
 シャオンは直ぐにフレイアを召喚する術を行なう。その瞬間、シャオンの周囲が真っ赤に染まった。
<え、な、何!?・・・>
 シャオンが辺りを見回すと、今までいたはずの祭壇のある部屋ではなく、何も無い、ただ赤い世界が彼女を覆いつくしていた。
「フレイア!」
 シャオンの全身の感覚が危険を警告していた。周囲を見回して呼び出した筈のフレイアを探す。その姿を見つけたシャオンは安堵のため息をついたが、当のフレイアは何も言わずにシャオンの横で沈黙して立っているだけ。それどころか、何かを察知して片膝をついて頭を下げたのである。
「フレイア、どうしたのよ・・・」
 思わぬフレイアの行動にシャオンはフレイアが頭を下げた方角を見つめた。そこには、炎の中に佇む女性精霊の姿があった。
「フレイアじゃない、久っしぶりねぇ。元気だった?」
「はい、イフリータ様」
 イフリータと呼ばれた精霊は、フレイアに対して少しだけ微笑むと今度はシャオンを見た。その表情はうって変わって鋭かった。
「ふ〜ん、貴女がフレイアの契約主なのね。私はイフリータ・・・。フレイアと同じ火の精霊よ。貴女が触ろうとした炎の宝玉に封印されているってわけ・・・」
「シャオン。イフリータ様は私の上位に当たる方です。くれぐれも失礼のないようにしてください」
 フレイアに言われるまでも無く、シャオンは緊張してイフリータに対峙していた。どうやってここから逃れるのかを全身全霊を持って探しているのだ。
「でもね、フレイアの契約主。あの場所で火の精霊を呼び出すなんて、どうするつもりだったの?貴女だって、同じ素質の精霊は2つ同時には契約できないなんてこと、知っているわよね。なのに、あたしを呼び出すなんて・・・、あっ、もしかしてフレイアを捨ててあたしに乗り換えたいの?」
 シャオンはぶんぶんと頭を振った。実際、そんなことは知らなかったし。
「ふ〜ん。じゃあ、理由はもう1つしかないじゃない。そう、召喚魔法の使い手としてあたし呼び出したのは、あたしを倒して能力を奪うためなのね。そう、だったら手加減なしでいっちゃうよ!」
「いえ、それも違うって・・・」
 イフリータの周りの炎が強く燃え上がり、渦を巻きながら高く舞い上がった。その炎は1匹の火竜となってシャオンとフレイアに襲い掛かる。
「何で、こうなるのよ〜」

 火の神殿の試練が始まろうとしていた。
 快適な朝を迎えたジロー達は、午前中をゆっくりと過ごしながら試練の対策、誰が誰を相手にするかなどを話し合った。
そして予定の時間となり、ジロー達は試練の間に案内された。部屋に入る前に、全員着替えさせられている。来ているのは白い襦袢のような着物で、他には装飾品以外何も身につけることは許されなかった。
 『試練の間』に入ると、そこには6人の緋色の襦袢を着た美女達が正座し三つ指をついて丁寧に頭を下げた。ジロー達も思わず挨拶する。
「ようこそいらっしゃいました。これから皆様には試練を受けていただきます。まずは自己紹介を。一番左からマシュウ、スウ、ラステル、私アスビー、右にいるのが娘のサーラとサーシャです」
 ジロー達も同様に紹介をすませると、アスビーから試練の簡単な説明があった。まず、セックスの有り様は単交、複交、乱交なんでもありだが、神殿側の女性がきている襦袢を脱がしてはいけないとのことだった。襦袢には魔法が掛けられていて、彼女達が十分イクとその色が緋色から白に転じるのだそうだ。そして、全員の襦袢の色が白くなったら試練に合格したことになるらしい。
「じゃあ、早速、始めちゃお!」
 アイラの合図でジローと12人の美女は思い思いにグループを形成する。作戦通りにアイラがスウ、ミスズがラステル、ルナとレイリアがアスビー、ユキナとイェスイはサーラとサーシャに取り付いた。そしてジローはマシュウと対戦する。マシュウも最初からジローに狙いを定めていたらしい。
 緋色の襦袢の下には鍛え抜かれた筋肉と牝の柔らかさを兼ね備えた美体があった。腹筋も割れていてこれで子供がいるとは思えない。そして、マシュウの方が年上でジローをリードして優位に立とうという気持ちがありありと表情にでていた。
「ふふ、お姉さんに全て任せていいのよ・・・」
 余裕の表情はしかし、ジローと目を合わせた瞬間から崩れ始める。ジローは『淫惑』を発動していたのだ。マシュウの瞳が淫らに潤み、襦袢の下の両足の付け根からじわっと滴が湧き始めた。
<え、何!?・・・何で濡れるの?>
 マシュウの感情の乱れを『心触』感じとったジローはすかさずマシュウの唇を奪う。
「うむうぅぅぅぅ」
 ジローの舌がマシュウの口内を蹂躙し、マシュウの舌を吸い、唾液を啜りあう。その間にマシュウの股間からはとめどなく愛液が溢れ出し、ジローの手が筋肉質の乳房を揉みしだきながら頂上の乳首を指で捏ねられると、それだけでマシュウは軽くイってしまう。
 ジローが唇を離すと、マシュウの表情は打って変わって欲情した牝そのものに変わっていた。ジローはマシュウを床−全体的にマットが引いてあって柔らかだった−に横たえると、今度は乳首に吸い付き、秘部を指で攻めた。2本を膣に侵入させ、親指でクリトリスを擦る。
「うあぁぁぁぁぁ・・・、あぁぁぁあんぅぅ・・・、あっ、あっ、あぁぁぁぁ・・・」
 嬌声がこだまする試練の間の中でひと際高く、大きな声がマシュウの口から漏れる。
「あっ、あっ、あっ、い、い、いくぅ、いく、いく、いくぅぅぅぅぅ・・・」
 マシュウが身体をそらして痙攣した。だがジローは、そのままマシュウに覆い被さって自分の固くなった肉棒を股間に擦り付けた。
「欲しいか?」
 マシュウの耳元で囁く。マシュウは自分の膣口に当たるジローの分身を、そして膣口がジローを欲して口を開いて待ち望んでいることを感じ取っていた。抱かれてこれほど気持ちよかった経験は今までなかった。もう、ジローが自分の中に入ってこないと気が狂いそうだった。
「ほ、欲しい・・・」
「よし」
 ジローはぐぐっとマシュウの中に沈み込んだ。マシュウの膣壁は肉棒を引っ張るように中に中にと吸い付いてくる。
「う、うぅぅ、あ、あぁぁぁぁぁぁんぅ・・・」
 入っただけでマシュウはイく。そして、本格的にジローが動き始めてからはもう何度イったのかは覚えていなかった。ただ、最後に子宮口を精液が直撃した幸福感と共に、真っ白な世界に沈み込んでいった。
 同時にマシュウの襦袢の緋色が溶けるように薄まり、一点曇りの無い白襦袢になった。

 ジローの次の相手はマシュウの副官のスウだった。スウは爆乳といえる巨乳の持ち主だったが、既にアイラによってとろとろのほかほか状態になっていた。ジローはアイラに導かれるままスウの巨乳にしゃぶりつく。巨大なマシュマロを連想させる柔らかな乳は、ジローの手によって自在に形を変えた。そして、そうされることが快感に結びつくのか、スウは息も絶え絶えに喘ぐ。
「はあぅん、はぁ、はぁ、はぁ、あぁぁぅぅん・・・」
 ジローはそんなスウの顔を見る。瞳を見つめると、酔ったような瞳に淫らな影がさした。
「スウ。これから入れるぞ」
「ぁぁぁあ、い、入れて、くださぁぁあいぃ・・・」
 ジローは挿入した。その瞬間、スウの全身に引きつったような力が入り、スウはのけぞったまま失神した。だが、ジローはそのままスウの膣を味わい、巨乳に吸い付く。失神から強制的に戻されたスウの意識が更なる快感で咽び泣く。
 ジローが射精した時には、既にスウの意識は完全に飛んでしまっていた。
 6人の内2人を攻略したジローは周りを見回すと2つのグループが構成されていた。アスビー母娘とルナ、ユキナ、イェスイのグループとラステルのグループである。驚いたことにラステルは性豪だったようで、最初にラステルに挑んだミスズが逆にイカされている。どうやらそれを見たレイリアがアスビーをルナ達に任せて後を引き継いだらしい。その後スウを担当していたアイラも加わっていった。
 ジローは暫しの思案をしたが、先にアスビー母娘を選択した。ジローがアスビーの許に寄った時には、アスビーはルナとシックスナインの体制で互いに快感を啜りあっていた。
「ルナ、待たせたな」
「あぁぁぁぁ、ジローさまぁぁ・・・」
 ルナは、アスビーの愛液で濡れた顔でジローを招き入れた。待ち望んでいた物を得た満足感が溢れている。
 ジローはルナに合図してアスビーの上からどいてもらい、アスビーの上に覆いかぶさった。そのままアスビーと眼を合わせる。
「アスビー、いいか」
「はい。娘共々お願いします」
 アスビーは意外と冷静に答えた。
「ジローさま・・・。わ、私は貴方を信じ、ま、す。私の『浄眼』が、あ、貴方を信じることが、た、正しいと・・・」
「ああ、わかってる・・・」
 ジローはそのままアスビーにキスした。アスビーも応じる。2人の舌が軟体動物のように絡まりあった。
 ジローはアスビーの身体に手を這わした。子供がいるとは思えないほどの均整の取れた身体と肌理の細かい手触りが心地よい感覚をフィードバックしてくる。
「あぁぁぁ・・・」
 アスビーが艶のある声を上げる。その声を聞いて両脇に居る2人の娘が母親を心配するような表情を見せたが、すぐに快感の波に呑まれてしまった。
「アスビー。入れるぞ」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・、ジ、ロー、さま・・・、お願い・・・、娘達も一緒、に・・・」
 ジローは両脇で淫声を上げているサーラとサーシャを見た。ユキナとイェスイに責められて感じまくっている。いつもは責められる方であるユキナとイェスイは責めに廻って乗りまくっているようだ。
「わかった。サーラ、サーシャ、こっちに来てアスビーの両横に並ぶんだ。ユキナとイェスイは2人を支えてくれ」
 2人の少女は快感で痺れた身体をのろのろと動かしながら母親の元に這って来た。アスビーの両隣にサーラとサーシャが四つんばいの格好で並ぶ。ユキナとイェスイは横から支えるように、2人の薄い胸と小さな蕾のような乳首を愛撫する。ジローは可愛い尻を視姦した。尻の割れ目の中で可愛いアヌスがちょこんと自己主張している。その先にある女の部分はビラビラも小さく薄いピンク、ビラビラに囲まれた陰部は愛液でコーティングされたように輝いていた。そして、まだ産毛のような陰毛が奥に見える。
「やっぱ双子だな。あそこの形がそっくりだ」
 ジローの呟きが聞こえたのか、二つの尻が恥ずかしげに揺れる。ジローはその二つの尻の間に左右の手を差し伸べ、薄桃色のスリット伝いに指を滑らせた。
「あうぅ・・・」
「はうぅ・・・」
 嬌声が同時に発せられた。その声を聞くだけで、ジローの股間は更に血が集中し、堅く滾ってくる。
 ジローは暫く性器の滑る感覚を楽しんでいたが、もう十分濡れていると判断して、中指を双子の膣口から侵入させた。何とも言えない暖かさと滑った締め付け感が中指を包み込み、指が奥まで入り込むと、全体を律動するように膣壁が動く。だが、ジローはふとした疑問をもってアスビーを見た。
「アスビー?」
「はい、この子達はし、処女ではありません。私がち、散らせました。し、しかし、男の人を相手にするの、は、初めてです」
 ジローは納得した。火の神殿の風習か何かだろうと。そして、双子の膣に侵入する指を2本にして、軽くピストンを始めながら、いよいよアスビーに取り掛かった。
「待たせたな・・・」
「ああ、ジロー様。ア、アスビーのどろどろのおまんこに、大きなおちんちんをください。そ、そして、私の中で、お、思う、存分、出してくださいませ・・・」
 ジローは軽く頷くとルナに手伝ってもらい、アスビーの膣口に肉棒の先端をあてがうと、ゆっくりと亀頭を潜り込ませた。そして位置を安定させて一気に肉棒を打ち込んだ。
「あぁぁぁぁぁぁ・・・。い、いぃぃぃ、あっ、あっ、あぁぁぁぁ・・・」
 愛撫を一旦中断されたことで、じらし効果が発揮され快感の階段を一足飛びに昇り詰めながらアスビーは、それでも震えた手で娘達の手を握りしめていた。
「サーラ、サーシャ。アスビーの乳首を吸うんだ」
 双子は下半身からとめどなく押し寄せてくる快感に焦がれながら、ジローの言うとおりにアスビーの両の乳房にかぶりつき、その先端を昔を思い出した様に幼子が母乳を啜るように吸った。
 アスビーは我が子から乳を吸われる感覚を思い出し、更にジローの肉棒が生み出す快感と相まって、幸福感に満ちた高みへ昇り詰めた。
<ああ、子供が欲しい・・・>
 17才でサーラとサーシャを産んで以来、何度か試練の儀式は行ってきたが、ここまで露骨に子供が欲しいと思ったことはなかった。身体と精神の両方がジローの濃い精液で妊娠するのを望んでいる。そして、待ちに待ったジローの射精を子宮口に受け取った時、幸福感のまま、アスビーの意識は真っ白になったのである。
 ジローはアスビーに射精した後、ルナとイェスイに『神精回復』をかけてもらい、リフレッシュした肉棒をもってサーラとサーシャを重ねて次々と貫いた。男を知らない膣壁はきつかったが、双子の膣を2度3度往復していく間に、新たな愛液が湧き出してきて、段々と肉棒の動きがスムーズになってくる。
「あ、あ、あぅぅぅぅぅ・・・」
 肉棒が入っているサーラの声は、既に半分意識が飛んでしまっていた。ジローは何度がピストンするとサーシャに挿入する。
「は、はぁぅぅぅぅ・・・」
 サーシャはサーラよりも積極的にジローを受け入れていた。上に居るサーラと乳首を密着させながら抱き合いつつ、ジローの肉棒を膣壁で締めてこようとしていた。
「サーシャ、お前からいくぞ」
「はぁぁぁ・・・、う、うれ、しい・・・」
 ジローは復活した精嚢が作り出した特濃の精液をサーシャの中に放出した。狭い膣内に入りきらない精液が逆流する。サーシャの意識があったのはそこまでだった。
 ジローは射精の収まりきらない肉棒を今度はサーラに挿入した。半ば意識が混濁しているサーラは、それだけで身体をびくんと撥ねらせる。
 そのまま、ジローはフィニッシュへとピストンを開始した。
「あぅ、あぅ、あぁぅ・・・」
 うめき声に近い嬌声がサーラの口から漏れる。脱力し、弛緩したサーラの身体の中で唯一力が入っているのは、膣壁だけという状態であった。その膣壁をジローの肉棒が抉るように擦っていく。
「あうぅ、あぁ、あぅぁ・・・」
 息も絶え絶えのサーラ。彼女の襦袢の色はもう殆ど白くなりかけていた。
「いくぞ、サーラ」
 同時にジローは大量の精液をサーラの体内に放出した。サーラは眠るようにサーシャの上に崩れる。そのまま意識の無い双子は幸せそうな顔をして抱き合っていた。

「よし、後一人」
 ジローは最後の一人、ラステルの方を向いた。ラステルにはミスズが挑んだが敢え無く敗れたのでレイリアとアイラという愛嬢の中でも双璧の2人が掛かっていた。あの2人に掛かれば、まず堕ちてしまうのは間違いない。そう思って見た姿は、2人の攻撃に一歩も引かずに互角に性技を闘わせているラステルの姿だった。
「はぅぅぅぅ・・・、あぁん、気持ちいいぃ・・・でも、負けませんよ」
 ラステルはレイリアの指技で膣内を舐られながら自分の指をアイラの膣内に這わせていた。自分の乳首はアイラに噛まれ、痛痒い微妙な刺激が下半身から上ってくる快楽とコラボレーションして、脳内を痺れさせようと攻め立てている。しかし、ラステルはぎりぎりのところで踏みとどまり、アイラを集中的に攻めて胸の刺激から開放されようとする。
「くぅわぁあぁぁぁぁ・・・、はぁあん」
 アイラの口から声が漏れ、胸の刺激が遠のく。だが、アイラも負けずにまたラステルの乳房に被りついていた。
「ラステルさん。ご主人様が来ましたですぅ・・・」
 レイリアがラステルの耳元で囁いた。指は相変わらず膣内を擦っている。
 ジローはアイラの背中を軽く叩いた。アイラもジローに気付き、ラステルの乳房の上からどく。ジローはラステルに被さるようにして膣口に肉棒を合わせる。レイリアによって解され続けたそこは、熟したざくろのようにとろとろになって肉棒を待ち受けているようだった。
 ジローはその姿を見てもう我慢できなかった。肉棒を挿入すると、温かな肉に包まれた膣内が蕩けるような刺激を肉棒に与え、奥に奥にと引き込まれるように飲み込まれていく。
「おぉ・・・」
 思わず声を上げたのはジローだった。入れただけでイキそうになる。それを何とか堪えて、ラステルの上に重なり、目と目を合わせると『淫惑』が発動する。
 途端にラステルの快感が倍増したらしく、身体が妖しく動き、膣壁が全体的に蠢きながら肉棒を締め付ける。
「あぁぁぁぁ・・・、な、何ですか、これぇ・・・」
 ラステルは身体中を駆け巡る快感の渦に翻弄されながら、それでも僅かに保った意思で自分に起きた事を分析した。
「あぁ、そ、そっか・・・、こ、これが・・・、あん、ジロー、さまの、あ、あぁ・・・、ち、から、な、んだぁ・・・、あ、い・・・、あぅん、で、でも・・・、うぅあぁぁ・・・、ず、るい・・・で、すぅ・・・、あ、あぁぁぁ、も、もう・・・、うわぁあん・・・、だ、だめぇぇぇ・・・、い、いぃぃぃ・・・、くうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・」
 絶叫とともにラステルの中から潮が溢れ出し、今まで以上の締め付けがジローの肉棒を包んだ。ジローもこれには耐えられず、限界まで膨らんだ亀頭の先端部から精液を暴発させながら頭の中が真っ白に染まっていく。
 気がつくとジローの腕の中でラステルは気を失っていた。純白の襦袢に包まれて。

 ジロー達が火の神殿の試練を無事終え、神殿に入る資格を得た頃、世界の状況は大きく変わろうとしていた。
 ノルバの戦いから半年、その僅かな間にドレアム全土を取り巻く情勢は様々な局面を迎えていた。
 まず、ノルバの戦い後に内戦状態となった玄武地方は、王都ウンディーネとノルバ間の対立の緊張度が増していた。ノースフロウ王テセウスは、この半年で王都での絶対的な支配権を確立し、独裁的な権力支配を強固にしていた。不思議なのは、この独裁的な方向に進む統治に対して、バスク公ボルトンを始めとした大臣諸侯達は一切反対せず、逆にテセウス王を主と崇めて忠誠を誓ったことである。
 ただ、ウンディーネ一帯には黒い噂が広がっていたのも事実。それは、魔物に関するものであり、都市の外だけではなく、ウンディーネの中でも、そして夜には王城の敷地内でも魔物と思われる姿が目撃され、朝になると決まって市民や兵士達の中で冷たい骸で発見される不審死が相次いでいた。
 この噂を否定も肯定もしなかった王家だったが、それらの時期に前後してウンディーネでは城門を封鎖し王国の認めた者しか出入できないようにする布告がなされた。都市の外で起きる不審な事件から市民を守るという理由だが、逆から言えばウンディーネの市民は都市から出ることを禁じられたということでもある。こうして、ウンディーネの情報は外に漏れにくくなっていった。それは即ち、王国にとって都合の悪いものは排除し、都合の良い情報のみが伝わることを意味している。
 ノルバ公国が王国との袂を分かったことをきっかけとして、玄武地方はノルバ側と王国側に分かれつつあった。元々ノルバ単独だったのだが、玄武地方の信仰の母体である月の神殿がノルバを非難せずに、逆に王国側に非があるかのような態度を示した。それはまるで月の神殿がノルバ支持に廻ったとも受け取られ、これをきっかけとして、西側の諸侯がぽつぽつとノルバ支持を表明し始めた。こうして徐々に、王国としても一公国の反乱で片付けられる問題ではなくなっていく。
一方、王国側はというと、バスク公国が最初から明確な指示を表明し、ウンディーネから東の諸侯は皆バスク公国に倣った。その他にセロの町を所有する青龍地方のジャムカ・イーストウッド第3公子が率いる最強の騎馬隊がその傘下にあった。
しかし、両者の戦力は互いに城攻めを行うには戦力不足という状況で、緊張はあるものの共に戦端を開くまでには至っていなかった。
そして、両者のキャスティングボードを握っているのは、南のリガネス公国の動向である。リガネス公アルタイア公爵はセントアース帝国に不穏な動きがあることを理由にして王国の呼出を丁重に断りつつ、水面下ではノルバと密接な情報交換を行っていた。
ウンディーネからの情報は王国に有利なものしか流されていないことは、リガネスの白陽宮の商務長官マクウェルが情報戦の指揮を取ったことにより、幹部たちには周知のこととなっていた。特に、ウンディーネの黒い噂と魔界の者共の侵攻については、王国側からは全く漏れ聞こえない状態だったが、この頃はリガネス周辺でも妖しい事件や目撃者が出ており、ノルバ情報の信憑性を疑うものはいなかった。
しかし、リガネス公国がノルバ側を表明する機会は無かった。なぜなら、突如、中原からセントアース帝国が侵攻してきたためである。このためリガネスでは、城塞を盾に帝国との戦いが始まろうとしていた。
では何故そのようなことになったのか。その理由は、セントアース帝国に起きた急激な変化である。きっかけは、長期間皇位を不在にし、重篤説まで流れていた皇帝ゼノンの突如の復活だった。
皇位という表舞台に立ったゼノンは、民衆の前に立ち、以前の若々しさを取り戻したかのように、漲る情熱を奮い帝国民に語りかけた。このゼノンの演説は、短いがしっかりとした声で、『ドレアムの統一』を実行するという大方針を提示し、その熱弁を聞いた者は熱い心と帝国に対する、いや皇帝に対する忠誠心を沸騰させずにはいられなかった。
帝国の方向性が一気に戦争に傾いていった。予算の半分以上を軍備に廻し、軍隊の調練に熱がこもった。そして、僅か数ヶ月の内に帝国の軍容は充実していった。こうして整った軍備を手始めにと玄武地方へ向け、国境線を突破し南の城塞都市リガネスに攻め寄せたのである。
ゼノンは晩年、自分の娘達を各王家に嫁がせることで、各王家と政治的な友好関係を強固にして行こうという政略を進めてきていた。しかし、ドレアム統一という方向転換を図ったことにより、各王家に嫁いだ娘達の存在が強力な布石となって寄与し始めていた。実際、娘達の嫁ぎ先では帝国に忠誠を誓い、従うことを密約していた。
つまり、玄武地方への侵攻は、帝国の属国となる予定のノースフロウ王家が玄武地方を統一するための援軍という位置付けだった。
次に、西の白虎地方だが、ゼノン皇帝の四女マーサが嫁ぎ、既にウエストゴールド王家を手中に収めていた。女王レシュカはマーサによってもたらされた淫蕩な生活にすっかり嵌り、すでに王家を運営するという政治的な行為を全て放棄してしまっていた。
次の女王候補である長女のレナリアとマーサの夫であるラバルムの2人も含め、王宮金星宮の主な人々は淫蕩に耽るかマーサの操り人形として生きていくかという状態になっていた。
現状では、戦うことなくウエストゴールド王家は帝国の範疇となるのも時間の問題であった。
そして、南の朱雀地方は、セントアース皇太子ハデスが事実上の支配者となっていた。ハデスは、朱雀地方を武力にて統一したが、それは徹底的な信賞必罰の統治であった。たとえ12諸侯に名を連ねる有力な諸侯であっても、ハデスの統治に私利私欲から異を唱えれば直ちに粛清された。その上で反乱の芽は徹底的に潰しにかかった。こうして潰した諸侯の代わりの支配者には信頼できる部下を派遣し、自己の勢力安定に努めた。
しかし、この支配的な行動は、潰された諸侯の縁者や関係者という生き残った者達を地下深く潜らせてしまう結果を導いたのである。
最後に、青龍地方。3公子の内乱は、ゼノン皇帝の長女ヨウキを娶った第2公子グユクの一人勝ちになる勢いであった。グユクもまた帝国に忠誠を誓い、自分がイーストウッド王家を継ぐというよりは、帝国に青龍地方を捧げるために戦っていた。それに対抗する第3公子ジャムカは玄武地方に逃れ、第1公子トオリルは王都ドリアードと青龍の神殿近辺の一地方を治めるだけで、3つの勢力が拮抗していた頃に比べると、かなり勢力を縮退させられていた。
しかし、トオリルが拠点とするドリアードは、王都だけあって城塞の守りも堅固で糧食や金も豊富だった。勢力は衰えたが約1万の軍勢がドリアードを守っており、イーストウッド王国7龍将に名を連ねる3名の将軍がそれを率いていたため、まだまだ意気は盛んな状態であり、グユクも簡単には攻め切れないと考え今まで放置していた。
その状況下で、帝国はグユクの勝利を確実にするための策を講じた。グユクの妻ヨウキはこの状態を打破するために父であるゼノン皇帝に援軍を依頼し、ゼノンは朱雀地方を治めるハデスにそれを命じたのだ。ハデスはその命令に従い、自らが出馬して2万の大軍を率いて青龍地方になだれ込んだのである。
ハデスはグユクの要請により第3公子ジャムカの根拠地でもあった北部のラムゥを攻め、10日程度でこれを陥落させた。ドリアードを攻めた時に背後から攻められる可能性を潰すためだったが、当主であるジャムカが不在であるラムゥは、抵抗も少なく簡単に落ちてしまったのである。
その後ハデスは海沿いに南下、沿岸の諸都市は全て白旗を上げ、恭順の姿勢を示した。その間に、グユクもまた自分の根拠地であるガルバン要塞から2万、地方諸侯の軍勢4万の軍勢を集め、東進した。
こうして、約8万の大軍がドリアードを囲み、戦いが始まろうとしていた。

場面は再び朱雀地方に戻る。
廃市セプト。元々はサウスヒート王叔であり当時の最有力諸侯であったトレド大公が治めていた都市。しかし、ジュダム王によって大公が粛清され、敵を討ったフィール新王が暗殺されたことで統治者を失い、その後の相次ぐ戦乱により都市は荒廃し、ついには都市機能を維持できないと判断されて棄てられた地。
しかし、この都市の地下に巨大な回廊が眠っていることを知る者は少なかった。回廊の入口は壁際の古井戸と今は残骸の山となっているセプト大公の館、そしてセプトから1カーミル離れた潅木の草原。
一人の男が周囲を注意深く確認しながら古井戸に近寄った。そして、誰も見ていないことを確認すると井戸の中に入っていく。井戸の底に着くと、横穴に身体を潜らせ、手探りで仕掛けを探す。仕掛けを見つけ、それを稼動させると、横穴の壁が開きそこに空間が現れる。男は素早くその空間に身を躍らせた。背後では仕掛けが元に戻る音が聞こえた。
「お帰りなさいませ、将軍」
 蝋燭の明かりが灯されて辺りが見えるようになる。回廊の途中、哨戒所の役割をしている小部屋の中であった。蝋燭を点けたのは哨戒所の兵士だった。
 将軍と呼ばれた男は、兵士に軽く声を掛けると蝋燭を受け取って暗い回廊を進んでいった。暫く歩くと、次第に廊下が明るくなってきた。どうやら近くの部屋の明かりが漏れているようだ。
 男はその明かりの中に入っていった。中の人々の声が途切れ、入口にいる男の姿を注目する。
「ああ、クネス将軍、無事でなによりでした」
 歓迎と安堵の言葉が他の者達からも寄せられた。クネスはその中で最初に声を掛けた女性に声を掛けた。
「おおっ、イレーヌ殿。オクタスの賢臣と呼ばれる貴女が無事だったことは当に天の配剤です」
イレーヌはそのようなことはと、軽く返しながらセプトの2枚看板と言われた勇将をみつめた。
「しかし、オクタスは片目が治安部隊を率いてからかなり残党狩りが厳しくなっていたと聞いていましたが、よくぞご無事で」
 イレーヌはもう40の後半に差し掛かるはずだが、30前後と言っていい美貌で軽く微笑む。その笑みに妖艶さを感じて、クネスの股間が軽く反応してきた。
「オクタスが落ちた時、私は娼館に身を潜めたのです。そこは情報を集めるのには最適な場所でしたので・・・」
 クネスの頭の中で、娼婦となったイレーヌが媚を売る姿が浮かんできて、思わずどきんと心臓が高鳴った。妄想が目の前をちらちらしている。
「クネス将軍。そのようなところに立っていないで、こちらに座ってください」
 別の声が聞こえて、ようやく妄想を断ち切ったクネスは、進められるままに席に着いた。すると、隣の戦士風の男が挨拶してくる。
「クワトールのアルベールと言います。ランベールの息子です」
「智将ランベール殿のご子息か。お父上は残念だったな・・・」
 クワトールは最後までハデス軍に抵抗し、完膚なまでに破壊された廃市である。その指揮をとっていたのが義将と名高いランベール将軍であった。
 その他にも挨拶が続いた。主君が粛清されたデオの女将軍フランシア、ウヌスを脱出した時に片腕を失った副参謀のジュベール、廃市デュオの猛将ガスパル、同じく廃市ノベンの近衛将軍ダルタンと副将のスパークル、デゲムの裏組織を掌握するサンジベリーノ、ウンデキの貿易商人マルセーなどのそうそうたる面々が名を連ねた。
 そして、最後の一人はクネス自身が驚く人物、セクティの女太守クリスティーヌ侯爵が双子の妹ミレーユに太守を代行させて忍んで来ていたのである。
「クリスティーヌ殿、貴女は見張られているのでは?」
 クネスが疑心の眼で問いかけた。泳がされて、この場所を発見させて一網打尽となったら元も子も無い。
 しかし、クリスティーヌは説明しようとしたイレーヌを制し、多分数回目になる説明を流暢に語った。
「セクティからは、転送の魔方陣を使って移動してきました。同じ魔方陣がこの地下回廊の一室にありますので」
 クネスは得心して頷いた。セクティのクリスティーヌが神聖魔法の使い手であることは周知の事実で、そういった魔法があることは知ってはいたのである。
「さて、これで全員が揃ったようですね」
 イレーヌが語りかけると、皆が姿勢を正した。
「まずは、残念なことをお話しなければなりません。廃市デュオに組織されたレジスタンスが発見されて、壊滅したようです」
 ガスパルが悔しそうな顔で拳を握り締めた。彼はデュオのレジスタンス組織からの連絡役でここに来ていたのである。
「では、デュパル殿は・・・」
「はい。残念ながら、デュオの英雄デュパル殿はウヌスの門前に首を晒されているそうです。トレスのアメルータ様、ウヌスのラッテン殿も一緒に・・・」
「くそ!何てことしやがる!!」
 アルベールが怒りの言葉を吐く。ダルタンも目を見開いて怒りの表情を見せた。その荒れた空気を落ち着かせるように、ジュベールが言葉を続ける。
「イレーヌ殿、奴らはどのようにして見つけたのでしょう。私が知る限りラッテン将軍はとても慎重な方でしたから・・・」
「多分、デュパル殿の名前が有名過ぎたのだろう。それ故に、奴らは血眼になってデュパル殿を探した。奴らがその気になれば、食料や日用品の調達などいくらでも見つかる危険性はある」
「ええ、ですから我々は同じ轍を踏まないように慎重に事を運ばなくてはなりません。幸い、私の娼館経由で食料等は十分調達しましたし、他の物もクリスティーヌ様達が援助してくれます」
「裏組織では今、信用できるものしか採用しない。ここへの補給にしても悟られないように上手くやってくれているぜ」
サンジベリーノが自信たっぷりの表情で告げる。
「量物の調達は私にお任せください」
 横で禿頭の壮年の男が口髭をさわりつつ丁寧に語る。
「マルセー殿には、セクティにも支店を出していただいて、いろいろと重宝させていただいき、感謝していますわ」
 クリスティーヌがにこやかに告げた。物腰は柔らかいが、芯は相当肝がすわっているようだ。それに頭の切れもいい。セクティの太守として早々にハデスに降り、ハデスの配下として野心を全く見せずに、ただセクティを守っているだけに見せながら、裏ではレジスタンスに手を貸し、反撃のタイミングを計るという芸当をさりげなく行っている。
 話が移り、クネスが危険を冒して中原から青龍地方の動向を見て廻った話を皆に告げた。帝国が玄武地方への侵攻の準備を固めていること、グユクが援軍を依頼し、どうやらハデス皇太子自ら出馬することなどである。
「ハデスが不在の今が機会なのでは」
 アルベールの発言に、ジュベールが首を横に振った。
「いえ、ハデスが残していった太守、オクタスのキャンサ、デオのサガ、ウヌスのヤンクン、トレスのゴルビーが強力に守りを固めています。彼らは互いに連携し、ハデスの代行としてサラマンダーにいるベルイ男爵と共に朱雀地方に睨みを利かせています」
「ベルイか、ふん、裏切りものめ」
 ガスパルが吐き捨てた。元々はサラマンダーの一貴族だったが、早期にハデスに忠誠を誓って、きれい事ではないことも含めそれこそ何でもやってのし上がった男である。
 クネスはガスパルと同様に憤る人達をなだめながら、自分の考察を説明した。
「朱雀地方は北の守りは堅いが、南はキャンサただ一人が睨みを利かせているだけだ。逆に言えば、キャンサを何とかして、ハデスが帰ってくるまでに南側の地盤を固めることができれば、反撃の機会は得られると思う」
「そうなると、オクタスを拠点にすることになりますね」
 イレーヌの言葉にクネスは頷く。
「では、私の娼館情報網が役立ちますわ」
「はい、その時はお願いします」
「セクティはその場合沈黙を保ちます」
 クリスティーヌはしっかりとした口調で語った。オクタスを落としても、次のステップであるサラマンダー攻略の軍を仕立てるまではセクティは動かない方針だと。しかし、それはレジスタンスの彼らとしては、理解できることであった。中途半端な準備で一世一代の賭けには出られないのは当然と言えば当然である。
「その方針でいくとなると2つの準備が必要となると思います。キャンサを倒してオクタスを手に入れるための準備とオクタスを手に入れてから速戦で近隣を押さえるための準備、私の考えでは南よりもむしろ西に活路を見出す方が有利と思います。即ち、デケム、ウンデキ、そして火の神殿を味方に取り込むのです」
「さすがはウヌスの知恵袋といわれたジュベール殿、戦略眼はとてもかないません」
 クネスはそう言って他の面々を眺めた。
「デゲムは任せてくれ。太守はぼんくらだし、なんなら奪うこともできるぜ」
「私はウンデキの方々に根回ししておきましょう」
 サンジベリーノとマルセーが同意の意見を出した。すると、その横からダルタンが白髪交じりの口髯触りながら口を開く。
「オクタスの偵察はすんでおる。攻め込むのは歩哨が減る夜間がいいじゃろう。少数精鋭で一気に政庁に突入してキャンサを抑えるとうのはどうじゃな」
 スパークルが続ける。
「兵隊は、ノベンの近衛隊を中心に100名が何時でも動けるように準備できています。あとは、タイミングを計るだけです」
 頼もしい言葉に、全員の顔に気合が篭る。クネスもこれなら今まで耐えてきたかいがあったと感慨に浸っていた。
「では、イレーヌ殿・・・」
 クネスはイレーヌに向いて言葉を促した。彼が合流するまで、皆を纏め、周到な準備を推し進めてきた女丈夫を。しかし、イレーヌは軽く拒絶した。
「いえ、私が領袖ではこれから先は纏まらないでしょう。ここはやはりクネス将軍が頭になっていただいたほうがいいですわ」
「いや、私は単なる戦争屋です。軍の指揮はできますが、リーダーはとても務まりません」
 クネスは本心から遠慮したかったが、他の面々もリーダーはクネスしかいない−というか、自分では務まらないと皆が自覚していた−と説得し、最後は渋々、暫定的にという条件をつけてリーダーに納まることにした。

<我々に足りないものは、旗印。せめて、王家のどなたかが生存されていれば、我々が神輿を担げたものを・・・、今まで各陣営に分かれていた才媛達が一つに纏まったのだ。これだけのメンバーはそうは集まらん。なのに、神輿が不在なのだ・・・>
 クネスは地下回廊に誂えた自室のベッドに横になりながら思案していた。その時、ふと赤子の顔が思い浮かんだ。赤い髪に明るい緑の瞳がくりくりっとして、いつも笑っていた。
クネスが若い頃、近衛隊にいた時に、丁度生まれた赤子。トレド大公の子息フィール−後のフィール王−の娘である。左手の手の平に星型の痣が2つあったことから、星を掴むくらいの大物になるぞと、よくトレド大公の孫自慢を聞かされたものである。
しかし、1才の誕生日を過ぎて間もなく、母親と共に迷いの森に出かけ、それきり消息を絶ってしまった。セプトを上げて捜索したが、結局何の手掛かりも得られず、一緒に行った護衛の兵士も誰も二度と戻っては来なかった。
実は、その日クネスは護衛として同行する予定だったが、急病で行けなかったのである。クネスは悔やみ悲嘆に暮れた。もちろん、自責の念に駆られた彼は必死になって捜索を行った。だが、消息は全く掴めず、やがて、どうにもならないと捜索は打ち切られた。その後彼はエリートコースと言える近衛隊から志願して一般の軍隊に異動している。
<エイルアンジェ様・・・>
 結果とすれば、トレド大公の自慢話は当たっていたのだ。なにしろ父親のフィールは短期間とはいえ、サウスヒート王を継いだのであるから。クネスはそう想いながら、王女として成長した姿を見てみたかったと、感傷に耽っていた。
<神輿のことを考えていて、思い出してしまったか・・・、まあ、無いものを強請っても仕方あるまい。明日から忙しくなる。もう寝よう・・・>


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