カランコロン♪ カウベルの音とともに入ってきた桜蘭は、はっと息を呑み、それから嬉しそうにきゃあと叫んだ。 「マスター、新装開店したんですか?前よりも落ち着いた雰囲気になりましたねえ。この壁の絵もしっくりきていて、いい感じだし」 「ありがとうございます。頑張ってHTMLいじった甲斐がありましたよ」 那智は桜蘭にほめられたことは初めてではないだろうかと思った。 「それじゃあお祝いしなきゃですね。これをどうぞ」 手渡されたのは紙に包まれた軽くて四角い包み。めずらしいこともあるもんだと思いながら、那智はそれを開けた。 「何ですかこれ」 「何って巫女装束ですよ」 「なんでこんなものをわざわざ?」 「オーナーがお好きだろうと思って。前、『真夏の夜の夢』に出演されていたときも、欲しがっていらっしゃいましたから」 オーナーにこういう趣味があったのか。那智はオーナーが喜んでそれを着ている、あるいはそれを誰かに着せている場面を想像し、うっと口を押さえた。 「あら?マスター、大丈夫ですか?気分でも悪いのかしら」 その顔が心なしか嬉しそうなのは気のせいだろうか。 やっぱりこれは僕にとっての嫌がらせだ。やっぱりこの人は一筋縄ではいかない。さすが佐渡連盟の一員だ。こりゃオーナーでも叶わないんじゃないだろうか……。そんなことを思いながら、那智はカウンターの下にずるずるとしゃがみこむのだった。 |