The Adventure of Van Rood Quester

ファン・ルード・クエスターの冒険

その11−森エルフの篭絡(2)

幻想的なほど美しい女エルフは、濃緑色の髪を汗で額に張りつかせ、まるで精巧な人形のよう整った美貌を力なく俯かせ、長い睫が半ば閉ざしていた。
そのスレンダーなスタイルは、快感の余韻に浸るように、ときおりヒクッヒクッと小さく痙攣を繰り返していた。
そんな森エルフの乱れた姿は、見る者を虜にする可憐さと優雅な高潔さが同居する、圧倒的な美に満ち溢れていた。
遥か昔、七女神が来訪する以前、古代神達と肩を並べるほどの力を誇った失われた古代上位種族の一つ、ハイエルフ。
そのハイエルフの末裔を自称する森エルフだが、その傲慢なプライドの塊のような性根を除けば、その見目麗しい姿形だけは古代ハイエルフ完璧な造形を保っていると言えるだろう。
そんな森エルフの麗人の身体は、俺の支配の力の奔流に飲み込まれ侵食されていた。
そう、俺は、森エルフのフィーセリナの蜜壷の中に、ペンス・ドーンから計らずも継承した支配の力を完全に注ぎ終えていたのだ。
これでもう、この森エルフの美女は、俺の虜のはずだ。多分。
きっと目を開けるやいなや「あ〜ん、ファン様、ひどく言ってごめんなさい、今後は、ニンゲンだって馬鹿にしません」と謝ってくるに違いない。と思う。
間違っても俺を「バカニンゲン」とは呼ばないだろう。そう信じたい。
また人の心を捻じ曲げてしまう魔神の邪悪な力を行使してしまったわけだが、今回は緊急回避的な処置であり仕方のない場合だったと言う事で、見逃して欲しい。まあなんだ、あのままだったらフィーセリナを説得できなくて、さらにややこしく大変な事態になっていたかもしれないわけだ。
うん、これは冒険者として全力を使い、最大限の努力をし、最良の選択肢を選んだ結果だ。
そう思おう、いや、思いたい。
しかし、このまま欲望に負けてずるずると支配の力を使い続けていたら、「悪徳騎士の再来」とか「悪徳騎士の従者」なんて「通り名」で呼ばれかねないのは間違いないだろう。
それだけは、それだけは絶対に避けなくてはいけない、英雄譚に語られる冒険者となる俺の夢とは真逆の未来だ。
俺がそんな決意を固めていると、フィーセリナが恍惚状態から徐々に目覚めだす。
「…………うぅっ……わ、私は……」
よし、きた!
さあ謝ってもらおう、もうペコペコとな!
フィーセリアは、自分が何処にいるのか判らない様子で、しばらくぼんやりとしていた。
やがて大股開きの脚の間にいる俺に目線を落とす。
そして、森エルフの美女は、その薄い桃色の唇を微かに震わせ……
「っっ………バカニンゲン!……いっ、いつまで吸いついてる、とっととはなれろ」
今まで通りの悪態と命令を吐いていた。
ん?悪態?
謝罪じゃなくて?命令?
俺は眉を顰め、エルフの華奢な容貌をマジマジと観察する。
サラサラの濃緑色の前髪に隠れ感情豊かなグリーンの瞳は見えないため、喜んでいるのか、怒っているのかわからないが、支配の力でその態度が豹変している様子はない。
もっとも俺にとって唯一の前例である「赤牙」のセスティアは、支配直前は魔神の影響でバーサークし理性を喪失していたため、その態度がどう変化したか正確に不明だ。
だが現在のセスティアは、幼い雛に親鳥を刷り込むかのように、なんの違和感も無く俺に都合よく懐いている。
それに比べて目の前のフィーセリナには、劇的な変化は何も無いようだった。
う〜ん、支配の力、効いていないのか?
俺は彼女の整った美貌をまじまじと観察しながら、支配の力行使前と行使後の違いを見極めようとする。。
「な、な、何だ、こっちをじっと見て……そ、そんなに見つめるなバカ、はっ、恥ずかしいだろ」
森エルフの美女は、ぶっきらぼうな口調でそう言うと、ぷいっと横に視線をそらす。
サラリと髪がゆれ、乱れた前髪から覗くアーモンド形の瞳は、横の石壁に注がれている。
ん? 恥ずかしい?
今までのフィーセリナの口から、到底出なかった台詞だ。
よく見れば、横を向いた可憐な白い頬は、今までの怒りや羞恥とは異なる感情が浮かび、ほんのりと恥じ入るように桜色に染まっているような気もする。
さらに、森エルフ特有の長く尖った大きな耳が、何かを期待しているようにピクピクとせわしなく動き、俺の反応を待っているようだった。
そしてなにより、そっぽを向いているはずの緑色の瞳が、ちらっちらっと此方を伺うように動いている。
しかもその緑の瞳は、高まる感情を押さえきれないのか、うるうると激しく潤んでいるのだ!
まさに、まったくバレバレの照れ隠し状態だった。
これは、支配の力が効いている……と結論付けていいのか?はなはだ微妙で予想と全然違うが、まあ、一応効いてはいるのだろうか。
「何だ、何か言いたい事があるなら言え、バカニンゲン」
フィーセリナは、俺が黙りこんで何もしてこない事に気分を害したのか、また此方を潤んだ瞳でちらっと見ると、淡い桃色の唇の先を尖らせ、そう命令してくる。
だがその口調は、今までのニンゲンへの激しい嫌悪を滲ませたモノとは異なり、ちょっと、いや、かなかり甘えた懇願の響きを含むものだった。でも、やっぱり気の強い命令口調は変わっていない。
忠実なペットのようになった女戦士セスティアと違い、同じ力の影響を受けたはずのフィーセリナは反応が全然違う。
「おっ、お前が、どっ、どうしてもって言うなら、多少なら話を聞いてやってもいいぞ……ニンゲンだけど……お前は……その、特別だ、喜べ」
フィーセリナは、俺が様子を見るために黙っていると、何故だか最後の方は聞こえるか聞こえないかの小さな声でそう呟く。
ニンゲンを心底嫌う姿勢や、傲慢で高飛車な態度はそのままだが、どうやら、俺個人への敵意や不信が消え去ったていると判断していいだろう。
しかし、セスティアとの違いはどうしてなのだろう。
うーん、これは支配の力を下半身から注ぎ込んだため、効果が変わってしまったのだろうか?
それとも獣人と森エルフの種族的な違いが原因か?
いや、「俺に支配される」という意味の認識の違いからくる個人的な差異なのかもしれない。
何にしろ支配の力の、<異性支配>と言う効果は、俺が想像したような都合の良いモノではなさそうだ。
石畳に突き刺さって半気絶状態のペンス・ドーンに、後でちゃんと確かめておく必要があるだろう。
そして確かめると言えば、まずは「魔弾」のフィーセリナの方だ。
俺の予想とは大きく違う形で支配の力が働いてはいるが、どの程度まで俺の言う事を聞くか、確かめておかないといけない。
突然、背後から例の爆発したり腐敗したりする緑色の種を飛ばされては堪らない
「ごほん……あー、フィーセリナ、まずはこっちを向け」
俺は咳払いを一つすると、とりあえず、ぷいっと横を向きたまに視線だけ此方に送るフィーセリナを呼び捨てにして命令してみる。
「ふん、命令するな、何で私がお前を見ないといけないんだ、私は話を聞くと言っただけだ、勘違いするな」
えー、確認終了。
どうやら、命令には従ってくれないみたいです。
ただ、あいからず、フィーセリナのエルフ耳は過剰にピクピク先端が動き、ほのかに色づいていた頬は、バラ色に染まっている。
俺に話しかけられるのは嫌じゃないらしい、むしろ嬉しそうだと分析。
「えーと、それじゃ次は……そうだな、無理にでもこっちを向いてもらう事にしよう」
俺はそう言うと、指先をエルフの細く小さな顎に添え、ぐいっと強引に此方を向かせる。
「……さ、触るな、バカ」
プライドの高い森エルフの娘の口からでたのは、拒絶の言葉だったが、それは甘い響きをたっぷり含んでいた。
しかも、口では嫌がりながらも、まったく抵抗する事無く、俺の指に導かれるままに此方に顔を向け、エメルドグリーンの瞳で上目使いに見つめてくる。
その瞳には、敵意の欠片もなく、むしろ何かを期待するかの様に、潤んでいる。
俺はその整った顔立ちに映える綺麗なその緑の瞳に魅入られ、思わずゴクリと生唾を飲む。
うん、どうやら、これは上手くいっているみたいだ。
今度は顎先に添えた指を、そっとエルフの薄い桜色をした唇に近づける。
その指先は、先程たっぷりこの美女の蜜壷を捏ね回したために、当然の事ながら愛液に濡れていた。
「ん?な、何だ」
フィーセリナは戸惑いなからも、俺の指先が彼女の唇を撫で、愛液を塗り込めるのから逃げはしない。
俺は無言で、愛液が絡む指を動かし、エルフの薄い唇の間にそっと差し込み、目線でその先を促してみる。
「……な、舐めるのか?指を?……しっ、仕方の無い奴だ、特別だからな……んっ」
バラ色に頬を染めた可憐なフィーセリナは、しぶしぶ言った感じでそう呟くと、気恥ずかしそうに俺から視線をそらし、愛液に塗れた指にゆっくりと舌を這わせだした。
 ぴちゃ ぴちゃ ぴちゃ
半開きの薄い唇からフィーセリナのピンク色の舌がチラリとのぞき、俺の指に絡んだ愛液を舐め取り出す。
あの、フィーセリナが!高飛車で傲慢でプライドの塊だったような森エルフの美女が!
俺の、そう、ニンゲンの俺の指を舐めているのだ!
しかも、少し指を引いてやると、ちらりと視線を此方に向けて「意地悪しないで」っと言わんばかりに上目使いで睨みつけ、それでも舌を突き出し舐めるのをやめない。
 ぴちゃ ぴちゃ ちゃぷっ くちゅっ
「んっ…んんっ…れろっ…れろれろっ……んっ」
命令もしていないのに、ピンク色の舌の動きは、徐々に大胆になっていた。
最後には、柔らかくしっとりした唇で吸いつき、口腔内に指を咥え込み舐め回しだす。
「あふぅ……れろっ……んんっ…ちゅっ……んんっ」
コケティシュな森エルフの娘は、その体がツタで固定され動かせないため、首を突き出し、熱心に舌を這わす。
エルフの口腔内はしっとりと暖かく、俺の指の間まで掃くように舐めまわすぎこちない舌の感触が、何とも心地いい。
いつの間にか、指に絡んでいた愛液は全てなくなり、かわりにフィーセリナの唾液が広がっていた。
俺は、そのフェラチオを連想させる艶かしく色っぽいおしゃぶりの様子を、股間をドクドク言わせて眺めていた。
どうやら、フィーセリナは自分から自発的にやる分には、抵抗はないらしい。
よし、それでは、次のステップに進んでみよう。
そう、あくまでこれは支配の力がどれだけ効力を発揮しているかの確認だ。
エルフ族は非常に長命ゆえにあまり子供を作る事に積極的でなく、また孤独を好む傾向にあるものが多いため、他エルフとの肉体な交わりを嫌悪する風潮があるらしいのは有名だ。
そこで性に関しては禁欲的なことで有名なエルフ族相手に、生理的に受け入れないニンゲンに対し、何処まで従順になれるかを見極める事で、支配の力の効果を計る事が可能という寸法だ。
別に、チラチラと俺を意識して見てくる瞳が可愛いからとか、我慢できない様子でモジモジしてるスレンダーな肢体が色っぽいから、っと言うのが理由ではない。
そう、そんな欲望に身をまかせた「悪徳の騎士」ペンス・ドーンのような恥しらずな行為、一流冒険者を目指す者にあるまじき行動ではないのだ、断じて違う、違うのだ。
理論武装、もとい自己分析による意識統一を終えた俺は、ズボンの中ですっかり元気になって痛いほど張り詰める股間の為、前かがみなりながら、まずはフィーセリアの口の中で舐めしゃぶられている指を引きぬく。
「んっ、ちゅぷっ…………あっ」
粘着質な音をたて俺の指先が森エルフの唇の間から抜かれると、その間を、つーっとと唾液が糸を引く。
「んっ……勝手な奴だ、まったく……人にヘンな事を強要しておいて、途中でやめさせるとは……まあ、そんな指など、どうでもいいんだがな」
フィーセリナそう言いながらも、まるで大事な玩具を不意に奪われた子供ように唇を尖らせ、とっても名残惜しそうな瞳で、口から引き抜かれた俺の指を見つめている。
「よくできたな、えー、それじゃあ、次はご褒美をあげよう、フィーセリナ」
「え?ご褒美?」
何を期待したのか、その綺麗な顔は普段浮かべる冷笑をすっかり忘れて、うっとりとしている。俺の指を舐めただけで、フィーセリナはすっかりできあがっているようだった。
「それじゃ、まずは、キスからだな」
俺はそんなフィーセリナへの支配の力の効果を試す為、次なる確認事項を伝える事にする。
何度も言うが、これはあくまで支配の力の確認だと言っておこう。
別に、瑞々しいピンク色の唇の感触を指先だけじゃなくて口でも味わいたい、と言う俺の欲求を満たす為のモノでは無い事を補足しておく。
だが、そんな理論武装を固める俺よりも、フィーセリナの方が過剰な反応を示していた。
「きっ、きききっキスって! あっ、ああ、あの口と口をつけるっ、せっせせっ接吻の事か!あっあんな破廉恥な事をっ、だ、駄目だ、できるわけないっっ!!」
大層驚いているフィーセリナ。
いやもう、さっき俺に膣の奥まで舐められクリトリスを弄られて潮を吹いてるんだから、いまさらキスぐらいでそんなに取り乱されたら、逆にこっちが驚く。
「え?何で?」
「な、何でって、当然だろ、あれは契りの儀式の時にするものだ、「森の掟」でそう決まってる……そっ、それに掟では異種族とそういった………こっ、こっ、子作りをする事は禁止されているんだ」
頬を染めたフィーセリナは、真剣な顔でそう言うと「だから駄目なんだ」と再度強調し、きゅっと唇を噛む。
エルフは禁欲的らしいが、キスさえも駄目なのか。
しかも、キス=子作りと言う発想なのか。
ちなみに、「森の掟」は、俺が知る限りでは、グローランサ半島に広がる大森林地帯に住む全てのエルフ族が守る厳しい規律、というよりエルフの社会常識のようなものだ。
なにせ「森の掟」の一つ、異種族との交配禁止を破った為に生まれたハーフエルフという種族が幼い頃に身近にいたから馴染みがある。
ハーフエルフは、エルフ族特有の不思議な色合いの髪と長い耳を持っておらず、少しばかり耳の先が尖がったニンゲンという姿をもつ種族だ。
大抵、「森の掟」を破った故の忌み子としてエルフ族から迫害というか相手にはされず、森に住む事は許されていない。
ある意味ニンゲンと同じこの半島ではマイノリティーであり、ハーフエルフはその生まれゆえか、ニンゲンに対して反応が良いため、多少の交流がある事が多い。
もっとも、ハーフエルフ族は、エルフの長寿と森への親和性を失っただけで、能力的にはニンゲンよりも遥かに高く優秀な種族であり、また混沌半島ローランサの大半の種族は混血を気にしない気質なため、脆弱なニンゲン程扱いは酷くない。
話が多少それたが、俺が知っている「森の掟」は、その異種族との交配禁止と、後は種族的敵対関係のトレント族と戦うため全員兵士として軍隊に所属する義務があると言う事ぐらいだ。
そして、フィーセリナの話しからすると、「森の掟」には、キス=子作りと言う、契りの儀式なんて決まり事があるみたいだ。多分、俺が知っている異種族との交配禁止は、この契りの儀式を異種族と行う事を禁じる掟なのだろう。
何とも偏った考えと言うか、他者との接触を極力さけるエルフらしい掟だとも言える。
しかし、フィーセリナも今更そんな事を言いだすなんて……
「でも、もう掟はさんざん破っているよな、ほら、さっきも」
俺は、フィーセリナに思い出させてやるように、大股開きの脚の間、スパッツの丸い穴から覗く、愛液塗れの蜜口をちょんちょんと突っつく。
そこは指舐めをしていた間もトロトロと蕩けていたのか、もう石畳の床にまで愛液を滴らせていたようで、ちょっと触っただけで敏感に反応していた。
「あひいっ……やっやめろっ……そっそこ触られるとまたおかしくなるっ…んきゅぅうっ」
フィーセリナは、それだけで過敏に背筋を反らし、切なそうに眉を寄せて喘ぎだす。
こんな敏感な身体を持っているのに、交わりを嫌い「森の掟」まで作って拒絶していているなんて……実は、エルフは相当なオナニー好きなんだろうか?
なんて、くだらない事を考えながら、俺はエルフの肉ヒダを引っ張り、蜜口を指先で捏ねまわし、その小さな穴がちゃんとほぐれてきている事を確認し、指をはなす。
「んあっ…………はぁはぁはぁ……わっ私のソコは、お前の玩具じゃない、も、もっと丁寧に優しく扱え」
拘束された姿勢で、ぎりっと俺を睨みつけるエメラルドグリーンの幻想的な瞳。
丁寧に扱えって事は、今後は丁寧だったら触ってもいいと言う事なのだろうか。
うーむ、エルフのスキンシップの線引きが判らない。
キスは駄目で、指で膣内をほじるのは大丈夫……異種族間での交流の難しさをこんな所でも垣間見た気分だ。大げさだけど。
まあ、ここは本人に聞くのが一番手っ取り早いだろう。
「フィーセリナ、今のは「森の掟」では禁止されていないのか?」
「え?あ、ああっ、多分大丈夫だと…思う……その……こっ、ココは……別に、手で触ったり……その、舐めたりはしてはいけないって決まりは無い……だから大丈夫」
フィーセリナはもう火を噴出しそうに真っ赤になりながら、そう口にする。
いや、多分駄目なんじゃないかっと突っ込みそうになるけど、ここはあえてぐっと我慢だ。
「でっでも、こんな所、触ったり、舐めたりするのは……変態だと思うぞ、私は」
フィーセリナは、俺が触りたがっているから、しょうがなく相手してやっていると言うスタンスらしい。
どうやら「森の掟」を都合のいいように解釈して破っていない事にしているみたいだ。
「森の掟」の契りの儀式の規則をつくったエルフが誰だか知らないけど、おそらく性器を触れたり舐められたりする事なんて知らなかったのだろう。もしかしたら性的接触を嫌うエルフの事だから、一度もそういった経験がない奴が、想像だけでルールを作ってしまったかもしれない。
何だか、すごくありえそうだ。だとしたら穴だらけのルールなんじゃないだろうか。
「フィーセリナ、契りの儀式でする行為について聞きたいんだが」
「え?もう触らないのか?」
きょとんと此方を見上げるフィーセリナは、次の瞬間自分で言った言葉に驚いて、あわわわっと口を戦慄かせている。
エルフらしい整った完璧な美貌や長い耳どころか、華奢な首筋まで真っ赤に染まっていた。
きっと手足のツタがなければ、小さく丸まって顔を隠していただろう。
残念ながら両手は頭の上に組まれて動かせないフィーセリナは、お決まりのぷいっと顔をそらせる方法で俺の目線から逃れると、照れ隠しの為か慌てた口調で話し始める。
「ちっ、契りの儀式は、生涯のパートナーであるエルフの間だけで許さている儀式だ。勿論めったな事では行われないが……その内容をバカなお前でも判るように簡単に教えてやる……その、まずはお互いが向かい合って、それで……その……その…せ、接吻をする、それ、その後に、その……女の方が……男の人のその……なっ何だ……その男の人の……あ――、もう、言わなくてもわかるだろ……ど、ど、どうしても、言わないとダメか?」
「ダメ」
俺はにっこり笑って先を促す。
「バカ、ほんと変態だな……うぅぅ……その……せっ、接吻の後に、その女の方が…男の…あぅ…その、あの、うぅ……そう!アレだ!アレ!……変態 のお前が大好きな……その…あの…えっと…その、アレに……その女の方が上になって…その…アレをナニに…いっ入れると……その…アレが…その…ああなって…そうなって……まあ、それで、子を成す儀式だと教えられた」
「それだけ?」
「それだけ」
何故だか説明し終えたフィーセリナは、満足げだ。
どうだと言わんばかりに俺を見つめて、ふんっと鼻を鳴らしている。
どうやら俺がフィーセリナに卑猥な言葉を言わせたがって、契りの儀式についてしゃべらせたと思ってるみたいだ。それを本人的には大変上手く切り抜けられたと考えているのだろう。
実際は、アレ、ナニと言っていて良くわからなかったけど……
問題の契りの儀式は、どうやら向かい合ってのキスとそれに続く女性主導の挿入らしい。
女性主導に関しては、エルフは元来種族的に女性が圧倒的に多く、七女神の影響を受ける前から女性優位の種族だったのが原因だろう。
フィーセリナの契りの儀式で決められた行為以外なら異種族としても許される、って拡大解釈が可能だとすると……。
支配の力の効力を確認する方針は決まったも同然だ。
「それじゃ「森の掟」を守りながら……まずは、ここからっと」
俺はそう言いながら、フィーセリナの胸に装着された若草色のレザー・アーマーに手をかけ、装備をはずしだす。
「何をしてる?バカニンゲン、何で今更鎧を脱がす?わけのわからない事をするな、いったい次は何をたくらんでいる」
相変わらずの酷い口調で俺を糾弾する森エルフは、M字開脚状態の拘束姿勢のまま、できる限り抵抗しようと暴れだす。
だけど、俺が「ちょっと、横を向いてね」とか「ほら、暴れないで」と頼む度に、フィーセリナは、口ではやめろと叫んだり、威嚇するように唸ったりしながらも、素直に体を捻り、暴れるのを一時的にやめたりと、割と素直に言う事を聞いてくれるのだった。


数分後、苦労の末に俺は、女レンジャー「魔弾」のフィーセリナ・エルダールの胸を覆っていた若草色の鞣革の胸当てをはずしていた。
時間がかかったのは、フィーセリナの両手が頭上で拘束された姿勢のため、うまく脱がす事ができず、最後は仕方なく脇腹やら肩にあった鎧の留め金をダガーで壊したからだ。
残念だけど鎧は、もう修理なしでは使えないだろう。
フィーセリナも、俺があまりにも、もたつくのに焦れたのか……
「もうっ、バカだな、お前は……ほら、そこを壊すなよ、脱げてしまうからな、そこだ、ああっ右側の、そう、その結び目をはずすと解けるから、絶対はずすなよ……よし、それじゃ次は、この脇腹の止め具は触ってはダメだ、いいか絶対触っちゃ駄目だぞ」
と、非常にわかりやすい罵り方で脱ぐのを誘導してくれていた。
「それで、バカニンゲン、お前は何がしたいんだ?」
やっと胸当てをはずし終えた俺を、やや半眼のじっとりとした目で見つめるフィーセリナ。
その端整な美貌にはありありと鎧なんて脱がせてないで、はやく指で触るアレをやってくれ、と言っているようだった。
「いいから、ほら、これも脱いで」
俺はそう言いなら、フィーセリナが胸当ての下に着込んでいた、不思議な色合いに輝くインナーの前閉じに手をかける。
「あれ? この服?」
俺の手中で、ただの服だと思っていたそのインナーが、しゃらんっと澄んだ音をたてる。
どうやら、フィーセリナは、胸当ての下に、金属製のチェィンシャツを着込んでいたみたいだ。
それも俺がよく目にする、重そうな金属の鉄輪を幾つも繋ぎ合わせた無骨な戦士御用達のものではない。
それは、どんな技術でなし得たのか判らないが、とても小さな輪が無数に密集していて、ぱっと見は唯の布に見える程の優れた工芸品といってもいい品だった。
しかも一番驚かされたのは、その小さなリングが全て繊細な銀色の輝きを放つ金属でできている事だ。
そう、リングは、「真の銀」「灰色の輝き」「ミスリル」と呼ばれる軽量で硬さも鋼鉄を遥かに凌ぐ優れたレア金属製だった。
これが自然の原石だったら鉱石妖精のリ・クリルがほっとかなかっただろう。
ちなみに、その我儘な鉱石妖精は、今はくるくる回る遊びで目を回したらしく、向こうの方で、げぇげぇ元気にやっている。
そして、非常に高価な「灰色の輝き」を惜しげもなく使ったチェインシャツは、更に幾重もの高度な魔法技術で加工されているようで、無数のリング一つ一つが角度を変えると、まるで銀色の輝く波のような光沢を放っていた。
これ一つで何十年遊んで暮らせるか判らないほどの超々高級品の魔法の鎧だ。
幾ら「通り名」持ちの有名な冒険者だからといって、ほいほい持っていていいモノではないし、裕福な家がお金を積んでも簡単に買えるものでもない。
「何だこのチェインシャツが見たかったのか?これは成人の儀式の時に、母上から譲られた先祖伝来の品、大森林地帯のエルフ族を統べるエルダール家の家宝の一つだ、綺麗だろ?」
自慢げにそう言って、俺に自然に微笑みかけるフィーセリナ。
うん、作った冷笑ではないフィーセリナのその笑みは、この魔法のチェインシャツの銀色の輝きよりも数段も綺麗だ。
って、いや、ちょっと待って、待って!
「あっ、あの、今、大森林地帯のエルフ族を統べるって……言った?」
「ん?そうだ、どうした今更、私の家系が何か? 最初に名乗っただろフィーセリナ・エルダールと、大森林地帯を統括するエルフ森林管理機構軍の元帥を代々務めるエルダール家ぐらい幾らバカニンゲンでも知っているだろ?」
いや、自己紹介したのはフィーセリナではなく、鬼族の更紗・カンザキが代わりに教えてくれた筈で、フィーセリナはその時、冷たい射殺すような瞳で俺を無言で睨んだけだ。
ってそうじゃない。
大森林地帯ってのは、海域を除けば半島全体のエルフのうちほぼ半数が暮らす広大な地域だ。
そこのエルフ族を統べる元帥、人の国家で言えば王族の家の出ってことは、フィーセリナは本物のエルフのお姫様じゃないか!
ただの森エルフにニンゲンが手をだすだけも、大問題だが、さらにそれがお姫様だなんて。
一介の冒険者である俺個人が原因でも、ニンゲンが高貴なエルフ族のそれもお姫様に手をだしたとなると、もう個人の責任問題じゃなくて、国家間クラスの大問題になってしまう。
いや、単純に俺個人がひっそり抹殺されるだけかもしれないけど。
エルフ族にはシャドウエルフって凄腕のアサシン専門の種族がいるらしいし……
何にしろ俺にとっては、大問題だ!
一方のフィーセリナは、何をいまさら驚いているのかわからないと言う顔をしている。
どうやらフィーセリナは、名前を名乗れば誰もが彼女の立場を知っていて当然だと思っているみたいだ。
ただでさえ、そう言った上流階級から程遠いニンゲンの俺がエルフ族の元帥の家名なんて知るわけがない!
でもそんな事はきっとエルフのフィーセリナには理解できないのだろう。
ああっ、もう、何でそんな大それた地位の人物が、冒険者なんてやって森の外をうろついてるんだよ。
俺の頭の中のまったく頼りならない打算演算器がフル回転を始める。
うううっ……どうする、素直に謝ってみるか?
いや、今までの流れだと、謝るとフィーセリナは絶対、必ず調子づく、それは間違いない。
ここは支配の力を信じるか?
幸いどこまで効いているか判らないが、フィーセリナは俺を敵視する事はもう無いだろう。
憎からずって感じだと思う。そう切に信じたい。
いまだに石畳に突っ立ってグラグラ揺れる魔剣ペンス・ドーンではないが、セスティアのように俺にメロメロにさせてしまうしかないのか?
いや、下手な事をせずに、このまま逃げるって手もあるな……
そうだ、いっそ魔神に生け贄さしだして証拠隠滅を……
俺は混乱し、英雄譚に歌われる一流冒険者を目指す者にあるまじき事まで思いながら、我が身の不幸を沸々と感じ苦悩し、何とか打開策を考えていた。
そしてフィーセリナは、そんな、うむむっと唸る俺を見ると、何か妙案でも閃いたのか興奮気味に話し出す。
「そうか! お前この品が欲しいんだな?本当に浅ましいなニンゲンは……まっ、まあ、本当は駄目だが、お前がどうしてもと言うなら、譲ってやらんでもない……その代わり、その先程の続きを……その……ほらっ……お前が……ゆっ指で…その………私の……」
人生の岐路に立たされ悩む俺。
何かごにょごにょ言っているフィーセリナお姫様。
その最後の「指で」って台詞が、俺の打算の演算を強制的に終了させていた。
そう、さっき、この高貴なエルフ姫様であらせられるフィーセリナ様の蜜壷に指を入れ、顔を押し付け舐めまくって、いかせまくっていたのは誰だ?
…………俺だ。
もう、後戻りも何もうできる状況じゃないのは明白だ、悩むだけ無駄、解決策は一つしかない。
「くうっ……こうなったら、やってやる」
毒くらわば皿まで! もう突き進むしか道は無い。
俺はもう、やけになってフィーセリナの先祖伝来のチェインシャツに手をかけると、乱暴に留め具をブチブチと剥がす。
しゃらんっと鈴が鳴るような音が響き、チェインシャツの前が全開になる。
そこには絹製の薄い肌着を、つんっと突き出す小振りだが形のいい胸のふくらみの先端が浮かんでいた。
「あっ、こらっ、そんなに乱暴に扱うな、まったく欲深いな……そんなに慌てなくてもこの品はお前にやると言って……え?何をするんだ?」
きょとんとするフィーセリナを無視して、俺は四肢を束縛された彼女の肌着をぐいっと引っ張り捲りあげていた。
「きゃっ……なっななな何をするっ!ひっひっ、ひひひ人の下着まで脱がして、あぁ、もう本当にお前は何がしたいのか、さっぱりわからん……こら、今度はどこをまた、まじまじと見ているっ、バカニンゲン、おい、聞いているのか?」
怒鳴りながら柳眉を逆立てるフィーセリナの胸では、外気にさらされた張りの豊かとは言い難い膨らみが、僅かにぷるっと揺れている。
その肌は、わずかに上気し薄紅色がかかった白磁のように清らかに透き通り、しっとりとした光沢をはなっている。
そして、たいへん形のいい小振りな乳房の頂点には、薄い珊瑚色をした小さな突起が控えめに、つんっと尖っていた。
まさに、妖精の美とはこの事を言うんだろう。
俺は、ゴクリと喉を鳴らすと、その桜色の頂に、まるで灯火に誘われる蛾のように、ゆっくりと顔を近づけていく。
「そこは、子供が吸うところだ、お前には関係ない場所だろ、な、何で顔を寄せる?……あ! まっまさかここも触るつもりなのか!……ま、ま、まさか、もしかして、な、舐めたりもするのか? そうだな、その気なんだな! へ、変態っ、お前は変態だ、変態!……なっ何でこんな奴の事を私は……ううぅ」
エルフ軍の元帥、由緒正しき家に生まれたフィーセリナが、形のいい眉をよせ、いやいやっとその緊縛された体をゆすり、小振りなバストが僅かに揺れる。
胸を弄るのは「森の掟」では禁じられていない為、フィーセリナは今度は接吻の時のように駄目だと言わない。
エルフにとって胸は、子供に授乳するための器官であって、こういう行為の対象に入るという意識すらないのだろう。
「その通りだ、ここも触らせてもらう」
目の前の白く美しい肌に誘惑された俺は、興奮でカラカラに乾いた喉でそう言うと、両手をそっと差し出し、その控えめなバストに伸ばす。
ふんわりと柔らかく、両手にすっぱりおさまる二つの半円。
弾けるような肌の張りと柔らかみ、そして手の平に吸い付くような予想以上のスベスベとした肌触りが、確かな存在感を伝えてくる。
「あんっ」
それだけで、エルフ特有の敏感さを持つフィーセリナは、電流を流されたかのように、ヒクッとのけぞり、喘ぎ声をだしていた。
「あふぅ、たっ他人に…むっ胸を触られてるぅ……あっ…こんな所触るだなんてヘンなのに……あんっ……おかしい、私おかしくなったんだ……全部お前のせいだ、バカニンゲン……あふぅ」
はじめて感じる胸への愛撫に、陶然となっていくフィーセリナ。
そんな期待に応える様に、俺はその至高の芸術品ともいえる白くきめ細かい肌の感触を堪能し、両手でわやわやと周りから揉みあげながら、その先端でつんっと尖った清楚な蕾へ、舌を伸ばしていた。
ちょうどその時だった。
背後から俺を呼ぶ声が聞こえてきたのは……

「ファンっ、ファンっ」
それは、悲壮と言っていいほどの叫び声だった。
何事かと思って振り返ると、獣人美女「赤牙」のセスティアが、絡みつくツタを力任せに引きちぎろうと悪戦苦闘しながら、捨てられた子犬のような潤んだ瞳でこちらを見ている。
あっ、そっそうだった!
すっかりフィーセリナに夢中で、セスの事を助けるのを忘れてた……
とほほほ……自分の軽薄さと誠実さの無さに、あきれ果ててしまう。
「ファン、ファンっ、あああっ、やっと気がついてくれた、ずっとずっとずっーと呼んでたんだよ、ツタを切ろうとしてて気がついたらファンたら、フィーにのしかかってるだから、何でそんな事になってるんだ?」
「あっ、いやこれは、その、あの……武装解除……してた筈なんだが……気がついたら」
そうだよ、俺はフィーセリナの武装解除をしてたはずのなに気がつけばこのありさまだ。
俺ってば何をしてるんだ。
理性のないケダモノ以下の存在、まるでペンス・ドーン卿のようじゃないか。
しかも、セスティアがずっと呼んでいたのに……俺のために縛り草に囚われたセスティアほうっておいて、このありさま。
いくら彼女が俺に盲従しているからと言って、これじゃあきれ果て見捨てられるか、アックスの餌食にされてもしかたないだろう。
ううぅ、胃がなんとも痛くなってくる……
「ファン!大丈夫?ああっ、あたしがちゃんと側にいてご奉仕してやれれば、ごめんね、ファン」
恐るべきは、支配の力というのだろうか、どう見ても俺が浮気をしているのに、セスティアは全て自分のせいだと認識しているみたいだった。
「ああもう、こんな蔦っ、ファン待ってろ、こうなったら……ぐるるるっ」
セスティアが、野生の精悍な魅力に溢れた美貌に力をこめだす。
すると、その瞳の瞳孔がぐっと狭まり、黄金色の輝きを放ち始め、ふさふさとした和毛の生えた耳と尻尾が逆立ちだす。
さらに、絡みつくツタの間から見え隠れするセスの女性らしくしなやかで、それでいて引き締まった筋力を併せ持つ四肢がビクビクと震えだし、二の腕や首筋に赤茶色の獣毛が現れ、指先から鋭い爪が伸び始める。
「ぐるるるるっ、ファン、すぐに、ファンの側に……ぐるるるるるるっっ」
唸り声をあげながら徐々に変貌していくその姿は、ペンス・ドーンを見つけた場所で俺に襲い掛かってきた時と同じ、極限までケダモノの血を高めた獣化状態の姿だ。
しかし、あの時とは異なり、セスティアの瞳は魔神の魔力によって正気を失いバーサークした赤い光は発していない。それでも十分理性を捨てた危険な野性味に溢れだしている。
これはまずい。獣人は獣化すると、ほとんどが野生化してケダモノの本能のままに行動する事が多いらしい。
それが本当ならバーサークと違い仲間を襲うことはないと思うが、その行動に人としての理性や禁忌は存在せず、周りの状況なんか気にしないだろう。
そして焦った俺の頭でも、今のセスが、おそらく、本能のままにやりたい欲求は唯一つだと容易に想像がつく。
自分で言うのもなんなだが、間違いなく俺との交わりだろう。
獣化したセスはケダモノの本能が満足するまで、つまりはその体力の続く限り、俺を押し倒し交尾し続けるはずだ。
無論、俺だって、類稀なワイルドな美貌とセクシーなスタイルを誇る、抱き心地抜群のセスティアを相手にしたくないわけがない。
だけど、今はまずい。
たださえ狩猟系獣人で戦士として鍛錬を積んだセスの体力は半端じゃないが、それが獣化して更にとんでもないタフネスぶりを発揮すれば……それはもう激しく、半日どころか一日中ヤリまくる事態になる事は予想できる。
そう、その間にたとえ魔神が復活したりしても、獣化して野生に返ったセスティアはそんな事はまったく気にせず、野性の本能の命じるままに俺との蜜月を楽しみ続けようとするのは間違いない。
セスだってそれが判っていたから、いままで獣化せずに蔦を解こうと時間をかけていたのだろう。
だが、俺の様子をみて、忠誠心が裏目にでたセスティアは正常な判断を失い、獣化をはじめている。
「待て、セス、セスっ、セスティア・ゼルフ!獣化するな、落ち着け!待てって!あーー、もう、おあずけ!」
俺は必死に怒鳴り、最後には飼い犬を躾けるように、完全獣化しようとしているセスティアに命令する。
「ぐるるるるるるっ……く〜ん、ファン、ファン」
ぴくっとセスのケダモノ耳が揺れると、驚いた事に俺の「あおずけ」の声に反応する。
主人である俺の命令に絶対服従のセスティアは、体中に張り詰めていた力を抜くと獣化を中止していた。
耳と尻尾がたれさがり、伸びだしていた獣毛や爪が元に戻り、最後に、なんとも情けなけ声をだして寂しそうに俺を呼ぶ。
「えっと、その……すまんセス、お前の事を忘れてて……」
俺は、もごもごと口ごもりながら、それでも正直に謝罪の言葉を口にし、こちらを寂しそうに見つめるセスティアの真摯な瞳から、気恥ずかしくて目線をそらす。
「く〜ん、ファンっ、ファンの性欲処理はあたしの仕事なのにぃ、う〜」
俺に、「おあずけ」と命じられ、未練たっぷりだが引き下がるセスティアは、喉を鳴らし、しょげかえっている。
「ファン、あたしのファン、く〜ん……うぅ、仕方ない、おーい、フィーセリナ」
そして俺への忠誠心に溢れかえっている獣人美女は、獣化による蔦の脱出を諦めると、今度はその蔦をだした原因である仲間の森エルフに視線を向ける。
「フィー、あたしのファンを誘惑してるだろ?」
あっ、なんか獣化よりも、会話が危険な方向にいってる気がするだが……
ううぅ、さっきよりさらに痛む俺の胃袋。
一方、他人に胸を弄られるというエルフにとって前代未聞の感触に翻弄され、ぼんやりとしていたフィーセリナが、その言葉に覚醒すると、耳まで真っ赤に染めてすぐさま反論する。
「なっ!……ゆっ、ゆゆゆ誘惑って、何を世迷言を! この私がニンゲンなんかを誘惑するわけがない! こ、これは、こっこの憐れなニンゲンがどうしてもと頼むから、しかたなくして相手してやっているだけであって……その……あの…」
慌ててどもりながら必死に否定するフィーセリナ。
その桜色の唇からは、俺の指をしゃぶっていた時に垂れ落ちた涎の跡が、細い顎まで一筋残っている。
さらに剥き出しの胸元では、淡雪のように白い乳房がほんのりと桜色に染まり、その頂で乳首が立ちヒクヒクと震えている。
そして何より、開脚した太股の間では、ズボンの穴から露出した女の園が、トロトロと甘い蜜を滲ませている始末だった。
「ぐるるるるっ、嘘っ、メスの匂いがプンプンしてるよ……ん〜、あたしにも判るよ、フィーもあたしと同じように、ファンの群れに入りたいんだろ? うんうん、ファンみたいな素敵なボスに気に入られて、群れに入りたいってのは本能だものね」
セスティアは、フィーセリナの気持ちはよくわかるよっと何度も勝手に頷いている。
そのケモノの瞳は、自分の信奉する群れのリーダーである俺に対して、フィーセリナが欲情するのは当然の事だと雄弁に物語っていた。
「なっ、獣人の本能と一緒にするな……わっ私はそんな野蛮な気持ちではなく……じゅっ純粋に……えっと…あぁもう、とにかく、違うんだからなっ」
フィーセリナは、獣人のとんでもない指摘に、今まで以上に反発し、墓穴を掘っている。
「フィー照れる必要ないって、あたしもファンに会うまでは思いもしなかったけど、今はファンの群れに入れて幸せ一杯だしさ♪ 本当のところフィーもファンの群れに加えてほしんだろ? 正直に言ったら?」
「ばっばばばバカを言わないで、そんなことはない、ないったら、ないっ、ハッ、こっこの私が、よりもよって変態のバカニンゲンなんか好きなわけない、違うからなっ、絶対に好きじゃないからなっっ」
セスティアの獣人の常識に則った問いかけに、フィーセリナはあわあわっと焦りながら、真っ赤に染まった可憐な容貌を左右にふり、否定の言葉を繰り返す。
「ふーん、じゃ、嫌いなんだ、ファンの事、こんな素敵なオスはそうそういないよ?」
セスティアは、ちらりと八重歯を見せ、少しばかり意地悪気味な笑みを浮かべると、必死に否定を続けるフィーセリナをじっと見つめる。
「えっ?……あっそれは、その好きじゃないだけで…あの、その……ほっほら、誰かが相手をしてやらないと、ニンゲンも可哀相だし……えっと、その……そっ、そういう訳」
どういう訳かさっぱりわからないが、フィーセリナ非常にぎこちない笑みを無理やり作り、そう言い切る。
「へー、素直じゃないんだからフィーは……それじゃあさ、フィー、あたしが自由になるまで、群れのボスの相手してあげれる? 群れに仕えるメンバーなら当然の行為だよね?」
それに答えるセスティアの返答はもう、俺の予想の斜め上をいっていた。
恐るべし支配の力。修羅場回避のアフターフォローもばっちりな洗脳具合だ。
「ちょっ、だから獣人といっしょにするな……でっでもまぁ……すっ少しだけなら……しっ仕方なくだぞ!セスが動けないのなら、その、誰かがセスの代わりに相手してあげないといけないわけだし……その、だから、いいな、仕方なく相手をしてやるだけだからな」
「フィー、ちゃんとファンに優しくしてあげてよ」
「やっ…優しくするのはバカニンゲンの方だ、こいつ、むちゃくちゃするんだぞ!さっきも指で…わっ私のアソコを……やめろって言っても…何度も何度も」
「ぐるるっ、羨ましいっ……あっ!フィー、ファンは、舌でペロペロしてあげると喜ぶから、それから、爪で胸を……」
「ああっもう、わかった、わかったから、セス、この私に任せておけ、ニンゲンぐらい何てことない」
などと、いつの間にやら、俺の関知しない所で、俺の利用権が移譲されている。
「あー、ちょっといいか、あの縛り草だっけ?あれを出したのフィーセリナなんだよな?だったらセスの草も自分で何とかできるんじゃ……」
俺はそんな二人の美女の会話に、恐る恐る参入すると、根本的な解決策を提示してみる。
「あれは<枯死>の魔法さえ唱えられれば一発だが、ニンゲン風情に無理だろうな……私はこんな風に手足を縛られていて唱えられない、まあしばらくすれば勝手に枯れるから……それまで私がセスのかわりに相手してやる……仕方なくだからな!」
「ファン、フィーに気持ちよくしてもらってね、効果時間がきれて蔦が解けたら、すぐにあたしも……」
なんだか自信満々に頬を染め顎をそらすフィーセリナと、そんな森エルフを羨ましそうに見るセスティア。
えーと、それは俺が今からまず物理的にフィーセリナかセスティアの手足に絡んでいる蔦を剣で切れば万事解決なんじゃ……と思わないでもないが、この美女達の中ではそんな選択肢はないようだった。
どうやら蔦を切っている暇があったら、俺はそれより先に性欲を処理しないといけないらしい。
どう考えても二人とも俺を基準とした優先順位が間違っていると思う。が、そこまで指摘する気がない俺もそうとう毒されているというか……
そんな事を考えながら冷や汗を流す俺の頬に、チリチリと凍傷をおこしそうなぐらい冷たく鋭い視線を感じる。
勿論、その視線の先は、上目使いでこちらを睨むフィーセリナ・エルダールの深いエメラルドグリーンの瞳だった。
「ニンゲン、だからって勘違いするなよ……こっ、これは全部、仕方なくなんだから、セスが頼むから仕方なくだぞ……別にお前の事が好きになったわけじゃない……ほっ、本当に、本当なんだからなっ」
「あっ…ああ、わかった、うん、俺のせいだよな」
ここは素直に折れたほうがいいんのは経験済みだ。
「ふん、わかればいい」
フィーセリナは小鼻を鳴らしてそう高飛車に言いきると、長い睫に彩られた瞳を閉じる。
そして、何食わぬ顔で、そのきめ細やかな白磁の肌をもつ、形のいい小振りな膨らみを、彼女の方から微かにそっと寄せてくる。
どうやら、エルフ姫君は続きをご所望のようだった。
なんだか、段々このエルフのお姫様の扱いが上手くなってきてるよ、俺。
ついに苦笑いがこぼれそうになるのを我慢しながら、俺はゆっくりとその極上の肌をもつ、素直じゃないエルフ美女のバストに顔を埋めていった。

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